Renesasの32ビットマイクロコントローラRAファミリを使用した開発の調査

Renesasは、2003年にHitachiおよびMitsubishiの合弁事業としてスタートし、2010年にはNEC Electronicsと合併したという、半導体製品における長い歴史を有しています。同社は、マイクロコントローラ(MCU)の強力な継承資産を有しており、RAシリーズは最新MCUファミリの1つです。

マイクロコントローラのRA(Renesas Advanced)ファミリ

RA(Renesas Advanced)ファミリのMCUシリーズは、32ビットのArm® Cortex®-Mコアをベースにしています。このMCUシリーズは、製品を機能互換かつピン互換に保つという共通のDNAに基づいて設計されてきました。このため、デバイスから他のデバイスへの容易な移行(スケーラビリティ)とコードの再利用が可能になります。

(画像提供:Renesas)

RA2、RA4、RA6の3ファミリは、さまざまな性能、周辺モジュール、電力、メモリを持つ製品を幅広く取り揃えています。代表的な用途は、ユーザーインターフェースからIoTエンドポイントにまで及びます。

Renesas RA6 MCU(DigiKeyの商品一覧)

Renesas RA4 MCU(DigiKeyの商品一覧)

Renesas A2 MCU(DigiKeyの商品一覧)

開発ツールとサポート

RAファミリ向け統合開発環境(IDE)の選択肢には、KeilのMDKとRenesas自らが提供するe² studioがあります。コンパイラは、GNUとArm Compilerバージョン6があります。エミュレータは、SEGGERJ-LinkとRenesasのE2およびE2 Liteがあります。フラッシュメモリ用プログラマとしては、RenesasのPG-FP6や多数のサードパーティ製品があります。

(画像提供:Renesas)

RAファミリに利用できるRenesasの開発ボードには、RA2A1グループ用のEK-RA2A1、RA4M1グループ用のEK-RA4M1、RA6M1グループ用のEK-RA6M1、RA6M2グループ用のEK-RA6M2、RA6M3グループ用のEK-RA6M3およびEK-RA6M3G(EK-RA6M3 + グラフィック拡張ボード)があります。

フレキシブルソフトウェアパッケージ(FSP)

Renesas RAファミリのフレキシブルソフトウェアパッケージ(FSP)は、ArmマイクロコントローラのRenesas RAファミリを使用してセキュアなコネクテッドIoTデバイスを開発するための手っとり早く融通性の高い手段です。

(画像提供:Renesas)

FSPは、FSPエコシステムを活用するためにすぐに実用できる、周辺モジュールドライバ、コネクティビティプロトコルスタック、Amazon FreeRTOS、ミドルウェアスタックを提供しています。

統合開発環境(IDE)e² studio

e² studioは、Eclipseをベースにした無償のRenesas MCU用統合開発環境(IDE)であり、サンプルコードのダウンロードからデバックまでの全開発過程をカバーしています。

(画像提供:Renesas)

e² studioは、オープンソースのEclipse統合環境フレームワーク、CDTプラグイン、Renesasおよびパートナーベンダーによる各種プラグインで構成されています。こうした構成により、コンパイラおよびプラグインの追加や更新が容易に行えるため、e² studioは高度に多機能で拡張可能なIDEとなっています。RAファミリは、フレキシブルソフトウェアパッケージ(FSP)で提供されるドライバおよびミドルウェアの設定、ピン割り当て、クロック/割り込みの構成を含むGUIにより、Renesasのマイクロコントローラですぐに使えるコードを生成できます。e² studioに関するその他の情報およびダウンロード用リンクは、Renesasサイトにあります。

評価キットEK-RA6M1

EK-RA6M1は、Renesasが提供するRA評価キットのよい例であり、高性能なRA6ファミリの入門レベルの部分を重視しています。本キットは、120MHzのArm® Cortex®-M4コア(浮動小数点ユニット(FPU)内蔵)、256KBのSRAM、512KBのコードフラッシュメモリ、8KBのデータフラッシュメモリを備えたR7FA6M1AD3CFPをベースにしています。

(画像提供:Renesas)

評価ボードの特長は、オンボードデバッグ(SEGGERのJ-Link®)、デバッグイン(SWDおよびJTAG)、2つのDigilent PmodTMインターフェース(SPIおよびUART)、ユーザーLED、メカニカルユーザーボタン、容量性タッチユーザーボタン、MCUブート構成ジャンパなどです。ネイティブピンアクセスは、4 x 40ピンのオスヘッダを介して行えます。RenesasのRA評価ボードはデバッグにSEGGERのJ-linkを採用しているため、非常に便利なツールであるRTT Viewerをサポートしています。RTT(Real Time Transfer)技術により、ターゲットのマイクロコントローラからの情報出力に加えて、ターゲットのリアルタイム動作に影響を与えることなく、入力をアプリケーションにきわめて高速に送ることが可能です。

評価キットEK-RA6M1とe² studio統合開発環境プロジェクト

このプロジェクトの範囲は、Renesasの開発環境e² studioと評価キットEK-RA6M1の実践的な評価を行うことでした。プロジェクトは、Windows 10搭載ラップトップにe² studioとSEGGERのRTT Viewerをインストールすることから始めます。次のステップで、評価ボードに用意されているクイックスタートプロジェクト(LEDを点滅させる)を試します。2番目のプロジェクトでは、I2Cインターフェースを使用して外部のセンサボードPMODACLを構成し、通信してセンサデータをRTT Viewerに送ります。

(画像提供:Scheme-it)

プロジェクト全体の詳細については、eeWikiプロジェクト「Working with the Renesas EK-RA6M1 Eval Kit and e² studio IDE(Renesasの評価キットEK-RA6M1と統合開発環境e² studioを使う)」を参照してください。総括すると、EKとe² studioを扱ったのは良い経験でした。ツール群をインストールし、その開発環境で評価ボードEK-RA6M1に接続することは容易でした。Eclipseベースのコードエディタとプロジェクトエクスプローラの使い方は単純明快です。

まとめ

RenesasのMCUであるRAファミリをe² studioと組み合わせると、実世界に適用する製品を開発する場合の完全なプラットフォームになります。RAファミリは、さまざまなアプリケーション要件に対してコスト効率のよいMCUの選択肢を幅広く取り揃えています。e² studioの有用で柔軟性のあるツール一式をRenesasのRA評価キットと組み合わせると、使いやすい完全な開発環境になります。

著者について

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Scott Raeker氏は、DigiKeyの主任アプリケーションエンジニアです。2006年以来、同社に在籍し、ワイヤレス分野でのお客様を支援を主な仕事としています。彼はエレクトロニクス業界で35年以上の経験を持ち、ミネソタ大学で電気工学の学位を取得しています。余暇には、歴史的な農家の修復を楽しんでいます。

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