絶縁型高電流(100A〜1000A)アプリケーション向けスマート電流センサ

高出力UPSシステム、車載充電器、トラクションインバータ、燃料電池、蓄電池システムなどをはじめとするアプリケーションでは、高いコモンモード電圧での正確な電流測定が求められます。従来、これらのシステムでは、50A未満の場合はシャントベースの電流測定ソリューション、そして50Aを超える場合はホール効果ベースのソリューションが用いられていました。

絶縁電流測定方法論

Texas Instrumentsが提供する記事「HEV/EVでのシャントベースとホールベースの絶縁電流検出ソリューションの比較」(Krunal Maniar氏筆)では、絶縁高電流測定技術を使用して電気自動車アプリケーションについて検討しています。使用される最も一般的な方法は、図1に示すように、絶縁型増幅器ないし絶縁型変調器を使用するシャントベースの測定システム、または開ループないし閉ループのホール効果センサを使用するホールベースの測定システムのいずれかです。

図1:絶縁電流測定方法(画像提供:Texas Instruments)

シャントベースのシステムは、ホールベースのものより直線性が高く、電流測定精度が高いため、一般的に実装が簡単です。表1では、いくつかの区分属性について両者の技術特性を比較しています。

表1:シャントベースとホールベースの方法比較(出典:Texas Instruments)

高電力アプリケーション、効率要件の向上、そして電流測定精度の向上を必要とする電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)のグローバル市場の拡大により、高電流絶縁型シャント測定ソリューションへの関心が高まっています。

RiedonのSSA絶縁スマート電流測定技術

RiedonSSAスマート電流センサは、高出力の低抵抗シャントと絶縁型高精度アンプを統合しています。電流測定範囲が100A~1000Aで利用できるモデルがあります。これらは主な機能として、1500VDC/1000VACRMS強化絶縁、±0.1%の初期精度、電流範囲全体で±0.1%の直線性、ユニポーラ電源、差動アナログ出力、300kHzの帯域幅を備えています。センサの機能図を図2に示します。

図2:スマート電流センサの機能図(画像提供:Riedon)

物理的構造は、図3のSSA-250に示すように、バーの中心の周囲に隔離されたセンサハウジングを備えた電源バスバーで構成されています。JSTJWPFシリーズの4ピンコネクタは、カプセル封止されたセンサに(1)電源、(2)グランド、(3)+Vin、(4)–Vinへのインターフェースを提供します。対応する嵌合コネクタは、JSTのタイプJ04R-JWPF-VSLE-S(ハウジング)とSWPR-001T-P025(コンタクト)です。

図3:SSA-250(画像提供:Riedon)

RiedonのSSAファミリは、100A、250A、500A、および1000Aの4つの電流定格で構成されています(注:1000Aバージョンは、4つの取り付け穴を持つより広いバスバーを使用します)。

オプションの固定具とケーブルアセンブリ

取り付けを簡単にするために、図4に示すように、モデルSSA-100からSSA-500にはオプションの取り付け固定具SSA-BASEを使用できます。これはUL 94-V0定格の材料で作られており、5/16-18ステンレス鋼固定具を使用しています。

図4:SSA-BASE(画像提供:Riedon)

また、オプションでコネクタケーブルアセンブリSSA-CABLE-1Mが利用できます(図5)。これはすべてのSSAモデルと互換性があり、標準のケーブル長は1メートルです。

図5:SSA-CABLE-1M(画像提供:Riedon)

ケーブルアセンブリには、SSA-xxxモデル用のJSTの嵌合コネクタと、色分けされた22ゲージワイヤの2本のツイストペアを使用します。一方のツイストペア(赤/黒)はセンサの電源とグランド接続用で、もう一方(黄/白)は差動(+)および(-)アンプの出力信号です。

100A Bluetoothワイヤレス電流センサの概念実証プロジェクト

プロジェクトのスコープは、RiedonのSSA-100センサと市販のハードウェアを使用して、概念実証用の100A Bluetoothワイヤレス電流センサを開発することでした。メインコントローラとBluetooth接続には、AdafruitnRF52840 Feather Expressボードを使用しました。Bluetoothが組み込まれており、CircuitPythonプログラミングをサポートしているので、私はこのボードを選択しました。まず、マイクロコントローラーベースのプロジェクトでCircuitPythonを使いました。というのもこれは、非常に機能的で使いやすく、複数のプラットフォームで使用できる上に、Adafruitによる広範なライブラリ/サンプルのサポートがあるからです。SSA-100センサの電流信号は12mV/Aの差動アナログ電圧で表されるため、AdafruitのADS1115 ADCブレイクアウトボードを追加しました。このADCは、4チャンネル、16ビット精度、プログラム可能なゲイン、I2Cインターフェース、および差動入力機能を提供します。図6は、ハードウェアとRiedonの電流センサ間の配線図を示しています。

図6:Bluetooth電流センサScheme-it回路図(画像提供:Digi-Key)

完全なBOM(部品表)は、以下のDigi-Key Scheme-it®プロジェクトに含まれています。

nRF52840 Feather ExpressのCircuitPythonコードは、Bluetooth接続のセットアップを行い、SSA-100センサからの電流の読み取り値をAndroidスマホに送信します。プロジェクトの詳細、CircuitPythonコード例、および参照リンクは、eeWikiプロジェクトBluetooth Wireless 100 Amp Current Sensorにあります。

テストのセットアップと結果

テストのために、図7に示すように、HondaのATV(全地形対応車、バギー)に12Vバッテリと直列に電流センサを取り付けました。ATV車の電動ウインチを使用すると、電流センサが測定する電流負荷が供給されます。

図7:Honda ATVのテスト用セットアップ(画像提供:Digi-Key Electronics)

AdafruitのBlueFruit LE ConnectモバイルアプリがGoogle Pixelスマートフォンにインストールされ、nRF52840 Feather Expressから送信された電流の測定値を表示しました。アプリの「プロッター」モードを使用して、ATVのウインチがオンのときに、SSA-100からの電流の測定値を表示しました。図8は、ウインチがリバースモードとプルモードになっているときのATVからの電流の読み取り値を示しています。

図2:BlueFruit LE Connectのプロッターグラフ(画像提供:Digi-Key Electronics)

結論

RiedonのSSA電流センサは、正確で用途が広く、使いやすい製品です。ACとDCの両方のアプリケーションで、ハイサイドまたはローサイドのどちらでも使用できます。直線性が高いため、センサは高電力回路に簡単に組み込むことができ、正確な絶縁電流測定機能を追加することができます。

著者について

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Scott Raeker氏は、DigiKeyの主任アプリケーションエンジニアです。2006年以来、同社に在籍し、ワイヤレス分野でのお客様を支援を主な仕事としています。彼はエレクトロニクス業界で35年以上の経験を持ち、ミネソタ大学で電気工学の学位を取得しています。余暇には、歴史的な農家の修復を楽しんでいます。

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