オールシーズンで使えるDIY電源ユニット

友達がいるんです(笑うのはやめてください。本当なんです!)。彼をジョーと呼ぶことにします(それが彼の名前だからです)。どうやって知り合ったのかまでは、正直なところ、もう忘れました。インターネットを通じてだったことだけは確かです。そのことについて、さきほどまでジョーとメールで話していたところです。ジョーによると、私とやり取りしたメールが2006年4月からあるそうですが、それらの内容には私たちが進めていた議論が既に反映されていたため、知り合った日を2005年4月1日とすることにしました。つまり、あと3年で私たちは20年の付き合いになるのです(実にめでたいです!)。このことは何よりも、「私が今、親しい友人としている人たちの多くが、インターネットを通じて出会った人たちである」ことに気づかせてくれたので、考えさせてくれるものがあります。

ところで、Queen Latifah(クイーン・ラティファ)がRobyn McCall(ロビン・マッコール)役を演じたテレビシリーズ「イコライザー」はご覧になりましたか?彼女の友人の一人が、Adam Goldberg(アダム・ゴールドバーグ)扮するHarry Keshegian(ハリー・ケシェギャン)です。ハリーはハッキングの達人で、地下の使われていない地下鉄の駅に住んでいるのですが、私は『バットマン & ロビン』を見て育ったので、そこは彼にとっての「バットケイブ」だといつも思っています。なぜハリーを思い出したかというと、ジョーがハリーの英語名だからです。彼はケンブリッジ郊外の牧歌的な田舎町に住み、ロンドン救急車サービスでソフトウェアとハードウェアの上級エンジニアとしてフルタイム(日中)で在宅勤務していますが、日光を浴びることは滅多にありません。夕方(しばしば夜通し)、ジョーは誰も見たこともないような素晴らしいあれ(名前を思い出せません!)を創作するのです。

なぜここでバットマンに関するとりとめのない話を続けるかと言いますと、困ったとき、ロビンがハリーを呼ぶのと同じように、私もジョーを呼ぶからです。たとえば、2週間ほど前、私のデスクに面白いプロジェクトが舞い込んできました。それは、Microchip TechnologyPIC16F18346-I/Pのような、昔ながらの8ビットPICマイクロコントローラを使用したものです。

PICを使った冒険談は今後のブログで紹介しますので、お楽しみに。しかし、差し当たっては、私たちには他にやるべきことがあります。問題は、この小さな悪党にプログラミングだけでなく、一連のテストも行う必要があることです。そのためには、3M222-3343-00-0602Jのような20ピンのゼロ挿入力(ZIF)DILソケットを中心に、部品としてDIPスイッチ、1P12Tロータリスイッチ、オシロスコープ用のプローブ端子など...数え切れないほどの部品を使用したカスタム基板を作成しなければなりません(今後のブログでこの基板を取り上げるかもしれません)。

ジョーはその数ある才能の中でもとりわけPICの達人(PIC技術の黒帯を持っているかも)ですので、彼にアドバイスをもらうためにZoomミーティングを設定したのです。1時間ほどアイデアを出し合いながら楽しく過ごし、その日は解散となりました。翌朝、ジョーが「せっかくだから」と基板を設計してくれたことに、私が驚きと喜びを覚えたことは想像に難くないでしょう。

「そして、この角の部分は...」

ジョーが基板の回路図とレイアウトを説明してくれているとき(嗚呼、それにつけてもZoomの素晴らしさに感謝!)、彼は「そして、この角の領域は、僕にとってはよく使う電源回路なんだけど」と、何げなく口にしたのです。詳しく聞くと、「5ボルトと3.3ボルトの両方でPICをテストするのがいいと思って、多くの設計に使っている実績ある回路を投入したんだ」とジョーは説明してくれました。

ジョーは、「5Vの電圧は安定的に確保できないから」という理由で、USBを使った電源供給はしないそうです。また、「内側のコネクタに+Ve、外側のコネクタに0V(グランド)と書いてある電源は信用していない。ある人に騙されたから」とも説明してくれました。実を言うと、この話によって、以前購入した非常に魅力的なコンピュータ用スピーカが、同じような構成だったために破損したことを思い出しました。そこでジョーは、交流でも直流でも7~25ボルトを入力できる回路(ただし、直流は極性を問わない)を独自に開発することにしました。この電源は、彼のガジェットやギズモへの電源として、5Vと3.3Vの安定したDC電圧を供給します。

私もこれはとても良いアイデアだと思いました。あまりに素晴らしいので、私はジョーに、これを別のボードとして独立させ、他のマニア(みなさんのような)が自分の趣味のプロジェクトに使えるようにできないか、と尋ねたのです。もうご明察のように、翌朝、私のメールの受信トレイにこの設計と、誰にでも使えるようにする許可が届いておりました。

電源を子細に調べてみる

ジョーの電源ユニット(PSU)の回路図を図1に示します。一見すると、何も画期的なことはないと思われるかもしれません。しかし、深く調べれば調べるほど、そこには多くの配慮がなされていることに気づかされます。この基板は片面だけなので、マニアにとっては自作することも可能です(プロに依頼したい人向けには、ジョーが親切にも設計ファイルを提供してくれています)。

図1:PSUの回路図は一見簡単そうに見えますが、基板設計ファイルが片面であるなど、マニアが自作できるような配慮がなされています。(画像提供:Joe Farr(ジョー・ファー))

部品について説明するには、図2に示すようなレイアウトについて考える必要があります。まず電源コネクタSK1ですが、これはフットプリントが適正であれば、どのような基板用バレルタイプコネクタでも構いません。私は手持ちの壁掛け電源を使用して、通常、Tensility International Corp54-00166のような2.1mmバージョンを使用します。別の方法としては、シンプルに、電源からのワイヤを基板のパッド「a」と「b」にはんだ付けすることもできます。

図2:シルクスクリーンに示された部品の値、タイプ、配置(たとえば、レギュレータIC2はパッド/ビアIC2aに接続されています)により、PSUはACまたはDC 7~25ボルトを入力とし、安定的に5ボルトと3.3ボルトを出力します。しかし、一部の部品を交換する(たとえば、異なるタイプのレギュレータをパッド/ビアIC2bに接続する)ことで、他の様々な電圧の組み合わせを実現することができます。(画像提供:Joe Farr(ジョー・ファー))

出力コネクタSK2の場合、Molexの5ピンバージョンが理想的です。プロジェクトの他の部分から基板を簡単に切り離すことができるためです。しかし、標準的な0.1インチ(2.54mm)ピッチの5ピンコネクタを使用することも可能です。また、ヘッダピンをはんだ付けしたり、基板に直接ワイヤをはんだ付けすることも可能です。

BR1に関しては、最低50ボルトの動作電圧と最低1アンペア(A)の電流定格(常に基板の合計最大負荷よりわずかに多い)を持つブリッジ整流器であれば、どのようなものでも使用することができます。

今回の設計の実装では、5Vの出力(IC1で生成)と3.3Vの出力(IC2で生成)の両方が必要です。IC1に使った部品は、ジョーの予備部品の宝箱に眠っていた7805型の部品(つまり、採用した部品は、onsemiMC7805ACTGに類似したもの)です。IC2については、シルクスクリーンに写っているオリジナル設計では、LDO(低ドロップアウト)レギュレータLD1117V33(例:STMicroelectronicsLD1117V33)を使用するように指定されています。このことは、完成したPSUを示した図3の右側に示されています。

図3:完成したPSU。中央にある、「d」と「e」の間のジャンパは、IC2への入力をIC1の出力で駆動することを意味します(下記の注を参照)。fとiを電流制限抵抗(R1)で接続することで、IC2からの出力によってLED1に電力が供給されるので、パワーチェーンのすべての要素(BR1、IC1、IC2)が機能することになります。(画像提供:Joe Farr(ジョー・ファー))

コンデンサC1は470マイクロファラッド(μF)の電解素子であり、想定される最大基板入力電圧より高い電圧定格を持っている必要があります(ここでは35Vの部品を使用しました)。コンデンサC2、C3としては、動作電圧が35ボルトを超える、ほぼあらゆる100ナノファラッド(nF)コンデンサが使用可能です。コンデンサC4としては、IC2がLD1117V33レギュレータの場合、10μF/16Vのコンデンサが最適です。ただし、IC2に78xxレギュレータを使用する場合(後述のレギュレータに関する説明も参照)、このコンデンサをC2、C3と同じ100nFの別のコンデンサに変更する必要があります。

LED1は、5mmまたは3mmの発光ダイオード(LED)であり、順方向電圧は2ボルト程度です。電流制限抵抗R1(定格0.25W)の値は、どのような出力電圧でLEDを駆動するかによって異なります(以下の説明を参照してください)。

熟考すべき当該ポイント

レギュレータは、入力電圧を、指定された出力電圧に合うように下げる働きをします。今回使っているレギュレータの場合、入力電圧と出力電圧の差が熱として放散されるため、レギュレータが非常に高温になることがあります。放熱を最小限にするため、入力電圧は接続されているレギュレータの出力より3ボルト程度高くなるように設定してください。また、基板を直流で動作させる場合は、ブリッジ整流器により入力電圧が1V程度低下することを考慮してください。

LD1117V33を代表とするレギュレータの中には、金属製の取り付けタブがレギュレータの出力端子に接続されているものがあります。これに対し、78xxレギュレータは、取り付けタブがセンター(グランド)ピンに接続されています。

前述のように、ここで紹介する設計は5ボルトと3.3ボルトを出力することを目的としていますが、必要に応じて12ボルトと5ボルトなど他の電圧の組み合わせに対応できるように簡単に変更することが可能です。その場合、IC1に使用するレギュレータは78xx系であれば何でも構いません(79xx系のレギュレータはピン配置が異なるため、この基板上のどの場所にも使用しないでください)。

IC2には2つのオプションがあります。すでに説明したように、オリジナル設計では3.3VレギュレータのLD1117V33を使用しています。このレギュレータは、より普及している78xxシリーズの素子とはピン配置が異なるため、IC2aのパッドを使用する必要があります。78xxを2番目のレギュレータとして使用する場合は、IC2bと書かれたパッドを使用してください。

レギュレータIC1には常にコンデンサC1とブリッジ整流器の出力が直接供給されます。これに対し、レギュレータIC2を駆動するオプションには、必要に応じて以下の2つから選択できます。つまり、ブリッジ整流器から直接給電(「c」と「e」にジャンパを装着)することも、あるいは、IC1の出力から給電(「d」と「e」にジャンパを装着)することもできます。後者の選択肢が有効なのは、私の実装のように、IC1の電圧出力がIC2に必要な最低入力電圧より高い場合です。これは発熱を抑えるためですが、前提としては、レギュレータIC1がレギュレータIC2と同様に、回路に電力を供給するのに十分な容量を持っていることが必要です。

LED1の電流制限抵抗R1でfとgを接続すると、ブリッジ整流器BR1の出力からLEDに電力が供給されることになります。R1でfとhを接続すると、IC1の出力からLED1に電力が供給されます。また、R1をfとiの間に接続すると、IC2の出力から電力が供給されます。LEDに印加される入力電圧に応じて、適度な明るさが得られるようにR1抵抗の値を調整する必要があります。LEDに負担をかけずに適度に明るい10ミリアンペア(mA)前後が得られる電圧とそれに応じた抵抗値の候補は、3.3ボルトと150Ω、5ボルトと330Ω、12ボルトと1KΩ、15ボルトと1.2KΩです。

まとめ

というわけで、本稿もそろそろ終了です。この電源は、アニメ『宇宙家族ジェットソン』に出てくる乗り物のような豪華装備の電源ではないかもしれませんが、DIYの主力となる、活かした小型の基板であり、多くのホームプロジェクトの要件を満たすために使用できます。今後のプロジェクトですぐに使えるように、レギュレータのコレクションと一緒にこの電源をストックしておこうと思っています。みなさんはどう思われたでしょうか。いつものように、コメントやご質問、ご意見をお待ちしています。

著者について

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Clive "Max" Maxfield氏は、1980年にイギリスのシェフィールドハラム大学で制御工学の理学士号を取得し、メインフレームコンピュータの中央処理装置(CPU)の設計者としてキャリアをスタートしました。Maxは長年にわたって、シリコンチップから回路基板まで、果ては脳波増幅器からスチームパンクな予測エンジンまであらゆる設計に携わってきました(細かいことは聞かない)。彼はまた、30年以上にわたってEDA(電子設計自動化)の最前線にいます。

また彼は、『Designus Maximus Unleashed』(アラバマ州で発禁)、『Bebop to the Boolean Boogie』(型破りなエレクトロニクス界へのガイド)、『Where Electronics Begins』(EDA関連)、『Instant Access』(FPGA関連)、『How Computers Do Math』(同)をはじめとする多くの書籍の著者や共著者として活動しています。彼のブログ Max's Cool Beans をチェック!

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