JPY | USD

「プログラム可能」アナログアレイのその後

筆者は最近、2001年に書いた記事について、ある人からその後の動向を尋ねるメールをLinkedIn経由で受け取りました。なんと、そんな昔の記事について話す機会が回ってくるとは!その記事は、プログラム可能なアナログデバイスに関するもので、アナログ信号チェーン機能設計上の特別な方法に注目したものです。

近頃のニュース記事一般に対して筆者は不満だらけですが、その1つはフォローアップ記事がないことです(生々しい劇的な逮捕報道はあっても、その後の裁判結果の記事はめったにない)。フォローアップの件もありますが、その記事を公開してから20年近くが過ぎていることから、再びこの話題を取り上げる意義もありそうです。

まず、定義を明確にしておく必要があります。世の中には、ピンストラッピングや個別の抵抗器、あるいはI2C/SPIポート経由で駆動するソフトウェアを使用して、ユーザーが帯域幅やサンプルレートなどの動作パラメータや機能を設定できるプログラム可能なアナログICがたくさんあります。しかしながら、これらのデバイスは、今回の文脈で筆者が「プログラム可能」と表現しているものではありません。

そうではなく、筆者の記事で指しているのは、動作が未確定のデジタルゲートおよび機能の巨大なアレイを備えたコンポーネントであるFPGA(Field-Programmable Gate Array)を補完するアナログ製品のことです。FPGAは必要に応じて相互接続ができ、最終的な回路トポロジを形成してきわめて複雑なデジタルシステムを構成します。100万個以上のゲートを備えたFPGAも今では当たり前です。FPGAが主要な製品となったことに疑問の余地はなく、その理由はこの記事の読者には説明するまでもありません。そして新製品の発売も続いています。

図1:EfinixのT4F81C FPGAは、SMICの40nmプロセスで製造され、コアリーク電流が150µA未満(1.1V時、標準)。(画像提供:Efinix)

最近、Efinixから発売されたのが、T4F81C2 Trion™です。このFPGAはSMICの40nmプロセスで製造され、81ピンBGAパッケージで提供されています(図1)。

T4F81Cの特長は、高密度、低消費電力のEfinix Quantum™ファブリックの周囲にI/Oインターフェースを配置し、フットプリントの小さなパッケージに収められていることです。低消費電力、低コスト、スモールフォームファクタが求められる、モバイル、民生、IoTエッジの市場をターゲットとしています。T4F81Cの主要点は以下のとおりです。

  • SMICの40nmプロセスで製造
  • コアリーク電流が150µA未満(1.1V時、標準)
  • 1.8V、2.5V、3.3VのシングルエンドI/O規格およびインターフェースをサポートした高性能I/O
  • 柔軟に使用できる内蔵クロック
  • 標準SPIおよびJTAGインターフェースなどのデバイス構成オプション

技術が進歩し続け、対応できる多様な要件やアプリケーションが増えていくのに伴って、FPGAの発売も続いていくでしょうが、最近はプログラム可能なアナログデバイスの新製品があまり多く登場していません。

優れたアイデアのように見えたが…

多数の確定されていないアナログ機能を備えた類似のICに対して、ニーズがあるように思えるかもしれません。理論的には、そのようなICはセンサインターフェースのアナログ信号チェーン全体、信号調整、フィルタ処理信号チェーン、さらにはホストプロセッサへのI/Oも提供できるでしょう(ほんの一例)。このFPAA(Field-Programmable Analog Array)は、ファミリまたはシリーズの各種製品に必要な機能を提供するように、自社ブランド製品製造会社の生産ラインで構成することもできます。そうすれば、BOMは複数の製品で共通になります。また、アナログチェーンの機能に変更が必要になっても、ぞっとするようなプリント基板の再スピンなしに、したがって付随する遅延や不確実要素もなく実装できます。

しかし現実には、このタイプのプログラム可能アナログは工学設計コミュニティであまり人気を博してはいません。2001年の記事で言及したベンダたちを見ると、撤退したところ、他のIC企業に吸収されたところ(この業界ではごく当たり前で、特別なことではありません)がありますが、市場に何らかのしっかりした存在感を築いたベンダはありません。このタイプの製品がまだ販売されているという程度で、非常に知名度が低いのです。設計者が信号チェーンのニーズに応えるソリューションとして、プログラム可能アナログを検討しているということを耳にすることはありません。

プログラム可能アナログアレイに人気がないのは、どうしてでしょう?筆者はこれを、アナログ回路に内在する不可避の性質とその機能によるものと考えています。オペアンプやコンパレータなど最も基本的なアナログ機能の構成要素に注目すれば、ほとんどのベンダは数十、あるいは数百もの製品を取り揃えています(「考察:オペアンプはなぜこれほど多く存在するのか?」を参照)。その理由は、各モデルが、設計、ファブリックプロセス、テスト/トリムによって微調整されて、独自に組み合わされた性能特性を持っているためです。たとえば、あるオペアンプは低ノイズ性能が優れているものの、ノイズ性能が劣る他の類似製品よりもオフセットドリフトが大きいといった具合です。

問題は多次元的なトレードオフ

設計者はトレードオフを評価し、優先順序付きで必要な性能を得るために、どの性能を犠牲にするか決定しなければなりません。他のオペアンプでは、主要な静的仕様および動的仕様に関してさまざま組み合わせの製品があります。1つか2つの項目では優れているものの、それ以外はそこそこというデバイスもあれば、大部分の仕様項目で「優良」であるものの、ある1項目はそれほど優れていないというデバイスもあるかもしれません。では、どの製品が設計に対して「正しい」ものなのでしょう?

例によって答えは、設計優先順序とトレードオフの重み付けに「依りけり」です。基本的なオペアンプの評価に使われる多くのパラメータを考えてみてください。たとえば、速度、電圧オフセット、バイアス電流、温度ドリフト、帯域幅、ノイズ、消費電力、ゲイン、駆動能力、電圧範囲。これでわかるように、たいへん長いリストになります。

また、一歩下がって全体をもっと遠くから見ると、FPGAのデジタル世界とは異なり、ほとんどのアナログ信号チェーンは機能ブロックの数が多くなく、それらは通常互いにまったく異なっています。アナログブロックの重要な特性は、信号の場所ごとに異なります。センサに接続するインターフェースに必要なものと、バンドパスフィルタで必要なものは同じではありません。負荷の駆動用か、プロセッサI/O用かでは異なります。

たとえば、科学実験設備用に高精度インピーダンスと電気化学フロントエンドを提供する特定分野向けICである、Analog DevicesAD5940を考えてみましょう(図2)。AD5940はアナログとデジタルの多数の機能部から構成されていますが、アナログ部分の方が変化に富み、サポートする電気化学センサと適合するよう綿密に作成された仕様に基づいています。

図2:AD5940の簡略版ブロック図(画像提供:Analog Devices)

このデバイスは、内蔵A/Dコンバータ(ADC)と、さらには内部管理用マイクロコントローラまでも備えていますが、この設計の最も高感度の部分は、ポテンショスタットの特製ラボ電極と接続する、バイアス電流ほぼゼロのオペアンプおよびプログラマブルゲインアンプ(PGA)を含んだセクションです。もっと一般的なFPAAに含まれるアナログ機能には、このような高感度の特性は必要ないでしょう。

結論

当初、原理面で魅力があったにも関わらず、アナログブロックの汎用アレイは、多くのアプリケーションの多様なニーズに対応できないのが現実です。妥協が許されない一方で、BOMの複雑さ、プリント基板面積、その他の設計要因における実際の利点は、このような製品の価値を認めるには不十分でしょう。

ほとんどのアナログ設計では、信号チェーンの部分ごとに最適な少数の(そして通常、種類の異なる)ICを選定する方が、設計の仕方として優れています。どのような点が良いのか?信号チェーンのどの段でも、部品選びで困ることがないのです。

著者について

Image of Bill Schweber

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

More posts by Bill Schweber氏