優れたオペアンプがたくさんあるにもかかわらず、新しいオペアンプが必要な理由

数十社に及ぶメーカーから、いくつの異なるオペアンプが提供されているのか正確に把握するのは困難ですが、その数は数千種類に上ります。これには、ベースモデルのバリエーションでありながら、仕様や温度グレード、パッケージングがわずかに異なるオペアンプは含まれていません。

これらの基本的で目立たないながらも汎用性の高いアナログ構成要素は、信号処理アナログフロントエンド(AFE)、フィルタ、センサインターフェースにおいて重要な機能を提供しています。必要とされる回路機能のリストは常に長いものでしたが、エッジ人工知能(AI)、スマートコントローラ、システムと実世界の連携を必要とする無数のアプリケーションからの需要により、そのリストはさらに長くなっています。

ミッドレンジの十分な仕様のものから、卓越した高性能・高精度デバイスに至るまで、すでに市場に出回っているすべてのオペアンプを考えると、新しいオペアンプの必要性はほとんどないと思いがちです。しかし、最近登場した製品は、その思い込みの甘さを改めて証明しています。

最新のオペアンプ技術は、極めて低いドリフトを実現

私はこの1年で、大手および中堅ベンダーから何十もの新しいオペアンプを見てきました。高電圧設計やガルバニック絶縁など、用途に特化したものもありますが、ほとんどはごく標準的でありながら、いくつかの仕様で優れています。

極めて低いドリフトを特徴とする、最近発売された3つのオペアンプを考えてみましょう。

  • Analog DevicesMAX74810ARMZ-RLは、チョッパー安定化、低消費電力、デュアルチャンネル、ゼロドリフトオペアンプです。低ノイズ、グランドセンシング入力、およびレールツーレール出力を備え、時間、温度、電圧条件にわたって総合的な精度が最適化されています。
  • STMicroelectronicsTSZ901IYLTは、AEC-Q100認定オペアンプ(TSZラインの超高精度オペアンプ)であり、高性能センサの信号調整に不可欠な特性である、ほぼゼロのドリフトと超低オフセットを誇ります。
  • Texas InstrumentsTLV4888PWRは、36V、14メガヘルツ(MHz)のチョッパー安定化ゼロドリフト、クワッドチャンネル、マルチプレクサ対応のCMOS高精度オペアンプです。

ベンダーと設計者が抱えるジレンマ

こうした至る所で見られる部品のベンダーもユーザーも、旧型のオペアンプに対しては複雑な思いを抱いています。ベンダーは利益率が高く、製造やテストが予測しやすい旧型部品を作り続けたいと考えています。一方、ユーザーは、その既知の性能と微妙な差異のために旧型部品を求めています。同時に、両者とも、(ベンダーにとっては)即時かつ長期的なロックイン、(ユーザーにとっては)より高い性能など、新しい製品の潜在的な利点を求めています。

オペアンプは機能的にはシンプルな構成要素ですが、多くの重要な、そしてしばしば微妙に異なるパラメータを持っています。必要なテストとその後のデータ分析は高度に自動化されていますが、それでも開始、完了、文書化にはかなりの時間と労力を要します。

MAX74810ARMZ-RL(図1)に見られるように、入力バイアス電流(IB)と温度との関係は、必要でありながらテストが困難な仕様の1つです。

図1:MAX74810ARMZ-RLのIB対温度のグラフを示しています。このグラフは、高精度AFEを実装する設計者にとって非常に重要です。(画像提供:Analog Devices)

オペアンプのデータシートには、何千ものテスト済みデバイスにわたって入力オフセット電圧(VIO)の分布がしばしばプロットされます。図2のTSZ901IYLTなど、これらのプロットは、ベンダーが製造プロセスを確実に管理していることをユーザーに保証し、シミュレーションの信頼性を大幅に向上させ、確信を与えてくれます。

図2:TSZ901IYLTのVIO分布のようなプロットは、製造プロセスが厳密に管理されていることを設計者に保証します。(画像提供:STMicroelectronics)

また、ベンダーはいくつかのパラメータについて最大(または最小)仕様を明記する必要があります。標準値は最初のレベルの見積もりには問題ありませんが、Spiceやその他のツールを使用した詳細な分析を行う際には不十分となるためです。図3のTLV4888PWRなど、オペアンプのデータシートでは、徹底した設計評価を支援するため、全温度範囲にわたる標準値と最大値の両方が規定されています。これらはしばしば表形式で提供され、オフセット電圧や入力バイアス電流などのパラメータの標準値が含まれています。

TLV4888PWRのようなデバイスを綿密に設計評価するには、標準値と最大値が必要です。オペアンプのベンダーは、適切な場合、これらを表形式で提供しています。(画像提供:Texas Instruments)

ベンダーにとってのメリットは?

これらすべての開発努力とベンダーの費用は、それだけの価値があるのでしょうか?一般的にはそうです。成功したアナログ製品は、何年にもわたって現実的で高収益の収入源となり得ます。ベンダーが機能、特徴、性能仕様を適切に組み合わせ、その部品が成功した顧客製品にマッチすれば、そのオペアンプが現在の製品世代とその後継製品の両方で使用される可能性は十分にあります。その結果、好まれていた旧型部品は取って代わられることになります。

しかし、旧型の部品を置き換えるのは容易ではありません。プロセッサとは異なり、優れたオペアンプは、設計から排除されて置き換えられるのではなく、回路において再び選ばれることがよくあります。では、なぜ設計者は、旧型で性能が劣る可能性のあるオペアンプを、新しいものに置き換えることに消極的なのでしょうか?

その理由は、アナログ部品は、デジタル部品に比べて、設計、レイアウト、さらには製造における微妙な差異や特異性の影響を受けやすいからです。経験豊富なアナログ回路設計者は、やむを得ない理由がない限り、新しい部品とそれに伴う学習曲線に変更したがりません。また、デジタル中心の設計者はアナログの側面について考えたがりません。彼らの考え方は、「十分に機能しているなら、そのままにして先に進もう」というものです。

ベンダーと設計者にとって、長期的なメリットは他にもあります。

  • 洗練された製造・テストプロセスにより、生産と供給に関する懸念が大幅に軽減されました。
  • 製造ノウハウと歩留まりの向上は、ベンダーにとってより高い利益率につながります。
  • その部品は、多くのOEMが維持している設計者の承認済みベンダーおよび部品リストに掲載されているため、部品表(BOM)に組み込むことに企業が躊躇することはありません。

この「変更しない」という考え方を示す1例が、Burr-BrownのINA133計装アンプ(特殊なオペアンプトポロジー)です。このデバイスは1998年頃に発売され、現在でもTexas Instruments(2000年にBurr-Brownを買収)のINA133UA/2K5など、さまざまなパッケージやグレードで提供されています。

もちろん、これらの新しいオペアンプと旧型オペアンプに関するジレンマは、アプリケーションに最適な製品をどのように選択するかということです。設計者によっては、特定のベンダーを優先して検討を始める人もいれば、同僚からの提案を基に検討を始める人もいます。ここでAIが役立つかもしれないケースを紹介しましょう。必須の仕様、あれば望ましい仕様、その他のパラメータの最小値・最大値を入力すれば、適切なオペアンプのランク付けされたリストが得られます。

これは興味深い出発点となるかもしれませんが、選択肢を絞り込み、これらのデバイスの微妙な違いを真に理解するためには、ドキュメントやベンダー担当者との直接の対話に勝るものはありません。

まとめ

すでに数千種類もの優れたオペアンプが市場に出回っているにもかかわらず、新製品が次々と登場し続けていることは、常により優れた部品が求められていることを示しています。これらのデバイスは、全体的な性能がわずかに向上している場合もあれば、1つまたは2つの重要な仕様において大幅な改善が図られている場合もあります。いずれにせよ、成功した新しいオペアンプは長寿命であり、設計者の負担を最小限に抑えつつ、ベンダーの歩留まりと利益率を最大化することができます。

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1:オペアンプ選択ガイド

https://www.digikey.jp/ja/blog/a-guide-to-op-amp-selection

2:アナログフロントエンド設計を簡素化する適切な高精度オペアンプの選択

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3:高精度オペアンプを効果的に選択し、使用する方法

https://www.digikey.jp/ja/articles/how-to-choose-and-use-precision-op-amps-effectively

4:ゼロドリフトオペアンプを使用して、高精度で低電力の産業システム制御を実現する方法

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5:ゼロドリフトアンプを使用してDC精度と広帯域幅を両立させる方法

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著者について

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エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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