考察: オペアンプはなぜこれほど多く存在するのか?

プロジェクトに対して適切または「最適」なオペアンプを選択するという作業は、非常に困難になる場合があります。選択肢を単一のベンダーに絞ったとしても、検討対象にはよく似たデバイスが数多く存在し、ともすると新リリースのデバイスも含まれています。ベンダー選択ガイドは幅広いカテゴリ(高速、高精度、高電圧など)で役立ちますが、これらの区分も重複していたり、曖昧であったりします。

では、オペアンプはなぜこれほど多く存在するのでしょうか?皮肉屋は「それは多様化が簡単だからだろう」と言うかもしれませんが、実際の理由はそうではありません。オペアンプの各バリエーションおよびサブバリエーションにはコストがかかり、設計、製造、テスト、認定、生産計画、受注処理、パッケージングなど1つ以上の要素の変更が必要になります。

対照的に、理論派の人にとって質問の答えは明白であり、 「それは完全なオペアンプが存在しないからだろう」と言うかもしれません。これは技術的には正しいものの、やはりオペアンプが多く存在する理由ではありません。事実、無限の帯域幅、ゼロノイズ、他の「不完全性」も皆無の理想的なオペアンプは過剰であり、必要とされていません。たとえば、アプリケーションでオペアンプを使用するには、デバイス自体の限られた帯域幅に頼るよりも、外部フィルタを追加して、外部ノイズをオペアンプに影響しないように減衰する必要があります。

オペアンプがこれほど多く存在する理由は、実際には2つの要素の結果です。最初に、アプリケーションの多様性が高いことがあります。次に、エンジニアリングの永遠の課題であるトレードオフがあります。オペアンプの場合(他の多くのコンポーネントと同様)、これらのトレードオフは単純な是非の問題ではなく、程度と優先順位において微妙なニュアンスがあります。

一部のアプリケーションは、その状況で本当に重要な1つか2つのパラメータで真に優れたパフォーマンスを得るために、他のパラメータについてはあまり望ましくない値を許容します。たとえば、高精度計測器回路は、広い温度範囲で低オフセットドリフトを本当に必要とすることがあり、その目的を達成するために一部の追加消費を進んで受け入れます。それでも、問題が「主要な目的を遂げるために他の部分での犠牲をどの程度受け入れる覚悟ができているか」であることに変わりはありません。一部の2次的仕様での50%向上を犠牲にして、10%優れたオフセットドリフトパフォーマンスを得ることには、それだけの価値があると思いますか?

もちろん、コストという要素もあります。ほとんどすべてのアプリケーションはコストに敏感であるものの、問題はコストがどの程度まで重要な要素になるかです。さらに数円費やしてデバイスのノイズを10%低減することには、それだけの価値があると思いますか?その答えが学校の教科書に載っていないことは確かです。

2種類の「ゼロオフセット」オペアンプ(Microchip TechnologyMCP6V51Texas InstrumentsOPA735)について考えてみましょう。他の違いに加えて、Microchipのデバイスは、±15マイクロボルト(µV)の初期最大オフセット、±36ナノボルト(nV)/°Cの最大オフセットドリフトを特長としています(図1)。Texas Instrumentsの部品の初期最大オフセットは3分の1である±5µVですが、最大オフセットドリフトは約50%高い±50nV/°C(図2)です。では、どちらが優れていると言えるでしょうか?

図1: 入力オフセット電圧と周囲温度の対比は、高精度オペアンプアプリケーションでは重要な仕様です。この図は、Microchip TechnologyのMCP6V51の場合を示しています。(画像提供:Microchip Technology)

図2: OPA735の場合、オフセット電圧ドリフトは異なる方法で表示されていますが、明らかにたった数nV/°Cです。(画像提供: Texas Instruments)

多くのエンジニアリングの場合と同じく、答えは一見シンプルに見えます。 つまり「それは状況次第」です。この場合、それはドリフト値と比較した場合の初期オフセット値の重要度に依存しています。ただし、それは1つの特定のアプリケーションのみで有効である可能性があります。

必要な成果を得るために何をどの程度犠牲にするかの決定は、多くの要素と判断の慎重な相互関係に基づいており、それがエンジニアリングの課題の中心です。設計レビュー時には皆がそれぞれもっともな異なる見解を持つ場合があるため、決定が困難なことが多々あります。

アプリケーション優先度、相対的重み付け、および「必要なものを得るために何を犠牲にするか」の決定には数多くの異なるパターンがあります。幸いなことに、幅広い選択肢は最適な答えを出すのに役立ちます(多くの場合)。それでも、選択肢の多様性は圧倒的なものになり、次の2つの可能性につながる場合があります。それは、設計者が単に理想に近い最初のデバイスを選択する可能性と、単に以前から使用し最も慣れているベンダーとデバイスを選択する可能性です。

皮肉なことに、使用可能な既存のオペアンプが数多くあり、新製品も継続的に登場するにもかかわらず、結局のところ多くの設計者は良くも悪くも自分が最も慣れ親しんだオペアンプを選択しています。

著者について

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エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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