すべての全地球航法衛星の信号を受信する技術

駐車場で航法システム(カーナビ)を起動してから、衛星の信号が捕捉されて古めかしい砂時計アイコンが止まるまで待つのは、イライラするものです。この時間は初期位置算出時間(TTFF)と呼ばれ、無線受信機が視界(視線)内にある衛星からの信号を取得し、その信号を三角測量するまでの時間です。

見通し線を考慮すると、全地球航法システムの無線信号は、大きな建物(航法用語での通称は「ビルの谷間」)、林冠、パーキングガレージ/屋内、ノイズの多いRF環境などの障害物によって妨げられます。これらの要因により、航法受信機がこれらの信号を受信できなくなったり、受信するのが大幅に遅れたりします。

本稿では、STMicroelectronicsTeseo-LIV3F全地球航法衛星システム(GNSS)モジュールとその評価ボードをご紹介します。

所定時間に受信される信号を発する衛星の数は、多いほど良いに決まっています。

最近のGNSSシステムでは、数多くの全地球航法衛星システムからの信号を受信することができます。

STのTeseo-LIV3Fモジュールは、GPS、Glonass、Galileo、QZSS、BeiDouなど多数の世界標準の衛星信号を同時に取り込んでいるので、群を抜いています。

STMicroelectronics Teseo GNSSファミリの、開発とビジュアル化のためのTeseo-Suite PCソフトウェア(画像提供:STMicroelectronics)

これは同時マルチコンステレーションと呼ばれる機能であり、GPSのように1つのシステムしか利用できないモジュールや、同時受信できる信号のシステム数が限られているモジュールよりも、大きな優位性を持っています。

弱い、または部分的な信号を受信できる衛星の数が少ない場合に、そのような衛星数を多くする方法は他にもあります。

Teseo-LIV3Fでは、自律支援型GPSも使用できます。そのため、モバイルGSMのようにネットワークを利用できるデバイスでは、衛星の位置や将来の予測位置について一般に公開されているデータベースを利用できます。つまり、最初に受信したいくつかの信号を利用し、その利用可能な情報に基づいて現在の位置を推定することができます。これにより、本デバイスでは、三角測量の計算やさらなる信号の受信を待つなどの処理作業の多くを行わないでも済みます。このため、初期位置算出時間が短縮されます。これはもうほとんどロケットサイエンスの世界ですが、開発者は心配する必要はありません。STのモジュールと開発環境がすべての力仕事を代行してくれます。

ユーザーが求める機能が多くなると、航空機では重量が重要になるのに対し、携帯電話ではスペースが非常に重要になります。9.7 x 10.1mm(0.38 x 0.39インチ)という非常にコンパクトなサイズも、本機の特長の一つです。

物理的制約によりどうしても受信できない場合があります。トンネル、屋内、既述の「ビルの谷間」、ノイズの多いRF環境では、「デッドレコニング」の出番となります。

STのライブラリや開発環境を念入りに調べてみると、ジャイロ、加速度計、慣性測定ユニットの製品群を簡単に利用できるようになっているため、空間に対する本デバイスの物理的な位置を測定できるので、電波が途絶えたときにも本デバイスが地図を動かし続けることができるようになっています。

(画像提供:STMicroelectronics)

開発のしやすさを考慮して、STはこのモジュールと同時に、Arduinoフォームファクタのシールド互換ヘッダコネクタを備えたNucleoエコシステム開発拡張ボードを発売します。

この拡張ボードは、STM32 Nucleo開発ボードファミリに属するNUCLEO-F401RENUCLEO-L476RG、またはNUCLEO-L073RZボードと組み合わせて使用することを推奨します。

また、この開発シールドをすぐに使用できるように、STではSTM32Cube用ソフトウェア拡張X-Cube-GNSS1も用意しています。

この開発ボードには、特長となるSTMicroelectronics製GNSS PC開発ツールTESEO-SUITEが付属しています。これは、航法受信機のビジュアル化、管理、構成、評価を支援し、ファームウェアの再構成や将来のファームウェアアップグレードなどの機能を実現します。

モバイル市場向けの高速開発ツールとして、STではTESEO GNSSソリューション用のAndroid Hardware Abstraction LayerのデバイスドライバであるAndroidHAL-Teseoを用意しています。

携帯電話、タブレット、無人航空機、車両トラッキングの設計者、あるいはそれらのデバイスのユーザーにとって、今はエキサイティングな時代なのです。

著者について

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Kristof Berg氏は技術コンテンツ開発者で、2010年からDigiKeyの一員です。彼はアノーカテクニカル大学で電子工学技術応用科学の学位を取得しています。8ビットマイクロコントローラとRFプロジェクトを専門とし、余暇には電子ベースのさまざまなタイプの音楽装置を作成しています。

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