DigiKeyで入手可能なGaN電源製品とリソース

私のメール受信箱や、フォローしているメディアニュースに、GaN(窒化ガリウム)に関連する技術的な情報が登場することが多くなってきました。そうした情報の多くで取り上げられているのが、従来のシリコンと比較したGaNの電力効率とサイズ縮小の利点です。ワイヤレス充電から通信インフラに至るまで、GaNは電源の設計に浸透しつつあるため、この機会にその背景の一部と、DigiKeyが現在提供しているGaNの関連製品とリソースの概要を紹介しておくことにしました。

GaN(窒化ガリウム)とは何か

GaN(窒化ガリウム)は、電子の高い可動性を実現する、ワイドバンドギャップ半導体材料です。GaNは、トランジスタレベルで従来のシリコントランジスタに比べ、より大きな電流、より高速なスイッチング速度、物理サイズの小型化を実現します。エンハンスメントモードの窒化ガリウム(e-GaN)およびカスコードデプレッションモードの窒化ガリウム(カスコードd-GaN)スイッチアーキテクチャを利用することもできます。

(画像提供:Texas Instruments

e-GaNスイッチはノーマリオフのGaN高電子移動トランジスタ(HEMT)であり、通常のMOSFETのように稼働しますが、ゲート駆動回路の設計には十分な注意が必要です。e-GaN HEMTのスイッチング専用に設計されたゲートドライバをお勧めします。カスコードデプレッションモードのGaNスイッチでは、ノーマリオンのデプレッションモードGaN HEMTが直列で、カスコード構造のシリコンMOSFETとともに使用されます。このシリコンMOSFETはカスコードスイッチ内のGaN HEMTのターンオンおよびターンオフを制御するため、標準のMOSFETゲートドライバを使用することができます。GaN HEMTおよび関連するGaNゲートドライブ回路を統合した部品を利用することもできます。

(画像提供:Infineon

GaNの用途

市場に製品を投入するサプライヤが増えるのに従い、電源アプリケーションへのGaNの使用も格段に増えています。シリコンに対するGaNの利点には、スイッチング周波数が高いこと、損失が少ないこと、物理的なサイズが小さいことなどがあります。エンジニアにとって、こうした利点は、スペースに制約があり、効率の高い電源回路を設計する場合の選択肢が増えるということを意味します。GaNの利点が最も活かされるアプリケーションは、高効率が要求される場合、または物理スペースが非常に限られている場合です。こうした市場には、サーバ、電気通信、アダプタ/充電器、ワイヤレス充電、D級オーディオなどがあります。

GaN製品

DigiKeyでは、GaN FET、ドライバ、および統合デバイスを提供していますが、主なメーカーは、EPC、Infineon、Navitas、Texas Instruments、transphormなどです。

EPC

(画像提供:EPC)

EPCは、2009年から商用のエンハンスメントモード窒化ガリウム(eGaN®)トランジスタを提供しており、現在ではGaN FETおよび統合窒化ガリウムデバイスを幅広く取り揃えています。FETは、単一トランジスタおよびアレイの両方で使用できます。単一トランジスタは、最大200VのVdss定格および最大90A(TA = 25˚C)の連続IDで使用できます。トランジスタアレイはデュアルコモンソース、ハーフブリッジ、およびハーフブリッジ+同期ブートストラップの各構成で使用できます。推奨されるゲートドライバについては、EPCのHow2AppNote 005に記載されています。EPC2152は、シングルチップドライバにGaN FETハーフブリッジパワーステージを加えたもので、EPC独自のGaN IC技術を使用しています。入力ロジックインターフェース、レベルシフト、ブートストラップ充電、ゲートドライブバッファ回路、およびハーフブリッジとして構成されたeGaN出力FETは、モノリシックチップ内に統合されています。これにより、寸法わずか3.9mm x 2.6mm x 0.63mmのチップスケールLGAフォームファクタデバイスを実現します。

EPCデバイスは、チップスケールのパッケージングで提供され、GaNトランジスタはシリコントランジスタよりも大幅に小型化されています。この組み合わせにより、使用するPCBの面積が少なく、大幅に小型化されたデバイスを低コストで実現することができます。GaNによってフットプリントが小さくなり性能が向上したため、大型のシリコン部品で不可能だった設計が可能になります。EPCのFETおよびICに対して、評価およびデモンストレーションボードが使用できます。ボードには、クイックスタートガイド、回路図、BOM、およびガーバーファイルが含まれています。

Infineon

Infineonは、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)およびGaN(窒化ガリウム)技術において、半導体ベースの電源デバイスを提供しています。窒化ガリウム技術において、Infineonは600VのCoolGaN™エンハンスメントモード(ノーマリオフ)GaNパワートランジスタ、および高電圧のGaNスイッチ向けEiceDRIVER™シングルチャンネル絶縁ゲートドライバICを開発しています。1EDF5673K1EDF5673F、および1EDS5663HのEiceDRIVER™ゲートドライバICは、CoolGaN™パワーFETを十分に補完します。このGaN EiceDRIVER™ファミリの主な利点には、正および負のゲート駆動電流、オフ位相の間にゲート電圧が確実にゼロに維持されること、内蔵のガルバニック絶縁などがあります。

(画像提供:Infineon)

EVAL2500WPFCGANATOBO1は2500Wのフルブリッジトーテムポール力率補正評価ボードで、CoolGaN™ FETおよびEiceDRIVER™ GaNドライバICを使用しています。EVALAUDAMP24TOBO1 eモードGaN HEMTベース評価ボードは、2チャンネル、225W/ch(±43Vで4Ω)または250W/ch(±63Vで8Ω)のハイエンドHi-Fiオーディオシステム用ハーフブリッジD級オーディオパワーアンプです。

Navitas

Navitasは、GaNパワー統合型回路(IC)を提供しています。このICはモノリシックGaNチップで、GaNパワーFET、ゲートドライバ、およびロジックが統合されています。単一ダイに完全な回路があるということは、サイズ、スイッチング速度、効率、および統合の簡単さの面で大きな利点となります。NV6113NV6115NV6117NV6123NV6125、およびNV6127は、単一のスイッチデバイスで、降圧、昇圧、ハーフブリッジ、およびフルブリッジなどのトポロジで使用できます。NV6115を使用するデモンストレーションボードで利用できる電源は、NVE031Eです。

Texas Instruments

Texas Instrumentsは、GaNドライバおよび統合GaNパワー段デバイスの両方を提供しています。これらのドライバを利用することで、設計者は、特定の要件に対応するためのGaN出力FETを柔軟に選択できるようになります。統合パワー段デバイスは、寄生インダクタンスを最小化することでスイッチング性能を向上させ、基板スペースを節約します。

TIのこうしたGaNドライバには、LMG1205LMG1210LMG1020LMG1025、およびLM5113-Q1などがあります。LMG1205ハーフブリッジドライバは、同期整流式降圧、昇圧、またはハーフブリッジの構成で、エンハンスメントモードのGaN FETのハイサイドおよびローサイドの両方を駆動するように設計されています。LMG1210はLMG1205と同じ機能ですが、より優れたスイッチング性能、抵抗で構成可能なデッドタイム、より広範なVDD範囲に対応する内蔵LDOを提供します。LMG12xx評価ボードには、LMG1205HBEVMおよびLMG1210EVM-012が組み込まれています。LMG1020およびLMG1025は単一のローサイドドライバで、高速アプリケーションでGaN FETおよびロジックレベルのMOSFETを稼働させます。これらのデバイス用の評価ボードには、LMG1020EVM-006およびLMG1025-Q1EVMなどがあります。LM5113-Q1ハーフブリッジドライバはAEC-Q100認定品であり、車載アプリケーション用の同期整流式降圧、昇圧、またはハーフブリッジの構成で、エンハンスメントモードのGaN FETまたはシリコンMOSFETのハイサイドおよびローサイドの両方を駆動するように設計されています。その評価ボードは、LM5113LLPEVBです。

(画像提供:Texas Instruments)

TIの統合パワー段デバイスには、LMG3410、LMG3411、およびLM5200などがあります。LMG3410およびLMG3411には、600VのGaN FET、ドライバ、保護回路が統合されています。LMG34xx評価ボードには、LMG3411EVM-029LMG34XX-BB-EVMLMG3411EVM-018、およびLMG3410EVM-018が組み込まれています。LMG5200には、80VのGaN FETが2個統合されています。このGaN FETは、ハーフブリッジ構成で1個の高周波数GaN FETドライバによって駆動します。この製品用の評価ボードには、LMG5200EVM-02およびBOOSTXL-3PHGANINVなどがあります。

Transphorm

最後はTransphormです。同社は、ノーマリオフの低電圧シリコンMOSFETおよびノーマリオンの高電圧GaN HEMTをベースとしたGaNパワースイッチをカスコード構成で提供しています。

(画像提供:Transphorm)

TransphormのGaNデバイスは、低荷電のボディダイオードを使用する超高速FETのように動作します。従来のシリコンに比べた性能上の利点は、回復電荷が低く、回復時間が短いことです。これらのスイッチは立ち上がりが極めて高速で、立ち上がり時間は10ns未満です。650Vおよび900Vの両方のデバイスが利用可能です。AC/DCコンバータやDC/ACインバータなど、複数の評価ボードを利用することもできます

 

関連リソース:

1 – DigiKeyのリファレンス設計ライブラリには、GaNベースのリファレンス設計が複数用意されています。

著者について

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Scott Raeker氏は、DigiKeyの主任アプリケーションエンジニアです。2006年以来、同社に在籍し、ワイヤレス分野でのお客様を支援を主な仕事としています。彼はエレクトロニクス業界で35年以上の経験を持ち、ミネソタ大学で電気工学の学位を取得しています。余暇には、歴史的な農家の修復を楽しんでいます。

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