DKテックトーク - 第6話

アプリケーションツーリング

昨日、Molex社から来訪した担当者の方々と2時間あまり過ごす機会がありました。そのとき語り合った主な話題は、アプリケーションツーリングについてでした。具体的には、Molexが扱うコンタクト関連製品向けに同社が提供している工具の違いについてです。この種のコンタクトには、たとえばMolexのWM13478-NDという部品があります。このコンタクトはMini-Fit Jr 5558ハウジングに適合します。このコンタクト用の手工具を参照すると、WM9999-NDWM17551-NDWM24837-NDの3種類の圧着工具があり、それぞれ価格が異なります。

(画像提供:Molex)

お勧めの手工具が3種類あると、何を買えばよいのか、同じ部品用の工具なのにさらにお金をかける必要があるかどうか、判断に迷うかもしれません。工具の特長および利点をいくつかご紹介しましょう。

WM9999-NDは普及版の工具ですが、その理由は主に価格面です。この記事の執筆時点で、この圧着工具は75ドルを少し下回る価格になっています。これは手ごろな工具で、実はDigi-Keyのラボにも試作用に1つあります。工具の仕様書(https://www.molex.com/pdm_docs/ats/ATS-638111000.pdf)を参照すると、14~24AWGの幅広いコンタクトに対応することがわかり、しかも適切に処理できます。

しかし、良いことずくめではありません。この工具はあまりにユニバーサルなので、必ずしもユーザーフレンドリーではなく、十分に注意を払いながら圧着作業を行う必要があります。また、コンタクトの絶縁タブとワイヤタブの圧着は、別々に行う必要があります。その場合、別々に圧着はできるのですが、絶縁タブとワイヤタブはそれぞれ幅が1.2mmと2.1mmしかなく、その隙間は1mm未満なので、一方を圧着して他方を圧着しないようにするには多少コツが必要です。また、この工具はラチェット式ではないので、きちんと圧着されるかカンを働かせながら作業する必要もありそうです。では、この工具を購入するのはどんなときでしょうか?簡単に言えば、試作または1回限りの修理のためにコンタクトを1個か2個圧着するだけであれば、この工具が役立つでしょう。でも、ここで少しだけ余分な出費をお勧めします。圧着するコンタクトが1つの場合、私なら5~10個を購入して、ハウジングできちんと機能する圧着処理にします。

次の工具は、サービスグレードのWM17551-NDです。サービスグレードとは何かというと、まさにその呼び名が示すとおりです。この工具は、既存の部品を修理する作業員向けに設計されています。1日数個の圧着作業に適しますが、製造目的で1日中コンタクトを圧着するような用途には向きません。この工具の価格は前述のユニバーサル工具の約2倍ですが、何回か使用する機会がある場合はこちらの工具にアップグレードする価値はあります。

サービスグレードの工具には、3つの重要な利点があります。その1つは端子ホルダです。仕様シート(https://www.molex.com/pdm_docs/ats/ATS-640160200.pdf)のイラストを見ると、圧着するときこの工具でコンタクトが所定の位置にどのように保持されるかがわかります。ホルダは磁力で所定の位置に保持され、使用するワイヤゲージの正しいスロットに合わせることができます。ここでも、端子が小さくコンタクトを整列させる必要があるため、正しく整列させるのが厄介かもしれません。整列させた後、圧着するときにコンタクトの絶縁タブとワイヤタブの両方を同時に圧着できるのが2つ目の利点です。また、圧着時には3番目の利点も発揮されます。それはラチェット式ハンドルです。ラチェットにより、コンタクトの過剰な圧着を避けながら完全な状態で圧着できます。

(画像提供:Molex)

トレーニングのセッションでサービスグレードの工具を使用すると、ユニバーサルなWM9999-NDからのアップグレードを実感できました。実際には圧着を2回行ったのですが、これは最初のコンタクトの整列が正しくなかったからです。この不手際の原因は自分です。ただ、この工具にはまだ細かい調整の余地があると感じました。

その調整の効果を実感したのは、プレミアムグレードの手工具WM24837-NDを使ったときでした。この工具はサービスグレードのラチェット機能を備えるだけでなく、ハンドルも改良されて片手で持ちやすくなっています。ユニバーサルの端子ホルダはサービスグレード工具では磁力で保持されましたが、プレミアムグレードでは固定式端子ロケータになっています。プレミアム工具を使うときは、ロケータの後ろにあるボタンを押すと、ロケータが前方に飛び出して、コンタクトを適切なロケータの穴に簡単に固定することができます。これは、このクリンパの仕様シート(https://www.molex.com/pdm_docs/ats/638190901-000.pdf)にも示されています。ボタンを放しても、端子は所定の位置に保持されます。その後でワイヤを差し込んで圧着すると、ラチェット機能により両方のタブが1回の簡単な操作で完全に圧着されます。この工具には疑問の余地がなく、初めて使っただけで圧着の素晴らしさがわかります。ただし、価格はサービスグレード工具の約2倍です。とは言え、1日に何度も圧着したり、日常業務の中に圧着作業が含まれていたりすれば、使いやすさと品質、繰り返して圧着しやすいなど、その特長に対価を支払う価値はあります。

このように書くとMolexの宣伝と思われるかもしれませんが、この記事ではMolexの手工具グレードの違いをご紹介するのが主な目的です。手工具について質問やご意見がある場合は、以下のコメントセクションでお知らせください。

話変わって、DigiKeyコンテンツの最新動向をご紹介

メーカー:Shawn Hymelは、Adafruit Feather STM32F405 Expressを使用して温度ロガーを作成するプロジェクトを展開しています。Shawnは、部品、ハードウェアの接続、およびプログラミングを一連の説明で紹介しています。この基板の特長はCircuitPythonでもCでも実行できる点にあります。

ブログ:TheCircuitでは、Ashleyが2019年ホリデーギフトガイドをまとめました。このガイドには、Digi-Keyが扱う製品でエレクトロニクス愛好家の贈り物リストに必ずあるクールなアイテム数点が含まれています。

記事:記事ライブラリで目新しいのは、Bill Schweber氏の「数十年のIoTセンサ運用での環境発電と電池の比較」と題した秀逸な記事です。Billは、IoTデバイスに長期間にわたり電力を供給することの利点と課題を取り上げています。

TechForum:TechForumに最近掲載された2つの記事には、当社IoTカテゴリのKelsieが「Zigbeeとは何か?」について語った記事と、Paulが圧着に関する情報を取り上げた「圧着リングターミナル」についての記事があります。他にもリング/スタッドのサイジングや圧着用にワイヤを準備する方法についての記事もあります。

はい、それ売ってます!

オーブン、といっても「七面鳥調理」用のオーブンではありません。当社が扱うのは、ミニクリスタルオーブンです。実を言うと、最初にアイテムとしてオーブンを勧められたとき、部品を焼くためのオーブンだと思いました。しかしそのオーブンでもなかったのです。ここでご紹介するミニオーブンは、特定のデバイス温度を調整できるように作られています。ご承知のように、すべてではないにせよ、多くの部品には温度変化に対して性能のばらつきが多少あります。また、多くの部品が動作時に熱を発生します。このミニオーブンの要点は、そのようなデバイスの温度を調整して、性能の変化をなるべく抑えることです。

(画像提供:Taitein

次は、多くの人が使うアイテム、ヘッドフォンです。PUIは当社が取り扱うスピーカーで知られていますが、当社は先ごろ、PUIのインラインボリュームコントロール付きヘッドフォン(品番668-PUIAUDIOHEADPHONES-ND)の取り扱いを始めました。

(画像提供:PUI Audio, Inc.)

Digi-Key Electronicsの近況

社内だけに限らないのですが、やはりDigi-Key社内でも話題の的といえば毎年恒例のDigiWish Giveawayです。最近のプレスリリース、Digi-Key、11回目の毎年恒例DigiWish Giveawayを開催 では、ソーシャルメディアにアクセスしハッシュタグ#DigiWishを使って望みを伝えるイベントが紹介されています。毎日、最高100ドル相当の製品を抽選で1名のDigiWisherに差し上げています。投稿をフォローして、参加者の方々が何を望んでいるかを見るのはいつも楽しみです。時には、見慣れない製品やまったく知らなかった製品がサイトの隅に潜んでいることに気付くきっかけにもなります。

お読みいただき、ありがとうございます。また私が執筆するどのコンテンツでも、ディスカッション、質問、ご意見ご要望は大歓迎です。画面下にコメントを入力いただいてもよいですし、Digi-Keyについての質問があれば気軽にメールをお送りください。次号でお答えしたいと思います。

著者について

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DigiKeyのシニアアプリケーションエンジニアリング技術者のロバート・フェイ氏は2010年からDigiKeyで仕事を続けており、現在はTechForumのリーダーであり、その2017年の設立以来フォーラムに携わっています。空軍時代からのAerospace Propulsionの証明書と、Minnesota WestからのPowersports TechnologyとNorthland Community and Technical CollegeからのElectronics Technology and Automated Systemsの両方の学位を取得しています。ロバートは仕事や、ガレージで作業をしていないときには、放課後プログラムを通じて地元の小学校の子供たちにロボット工学とエンジニアリングを紹介しています。

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