ケーブルアセンブリのプローブ範囲、簡単なものから困難なものまで
何年か前のこと、ある経験豊富な技術者が、冗談めかしながらも半ば本気で私に言いました。ケーブルアセンブリ、つまり1本または複数のパラレル銅線と組み合わされたコネクタ(単に「ケーブル」と呼ばれることもある)は、それ自体が潜在的な問題の発生源である上に、さらに2つの潜在的な問題の発生源を接続しているのだと。彼の言うことは的を射ている一方、ケーブルアセンブリには利点もあるのです。ケーブルアセンブリは、1つの回路や2つのサブアセンブリ間における相互作用の状況を把握するために便利な窓のような役割を果たすことがよくあります。
かつてはあらゆるところで使用されていたRS-232インターフェースと、RS-232でごく一般的に使用されていたコネクタである、25ピンでDの形をしたDB-25というコネクタについて考えてみましょう。現在、このコネクタは「過去の技術」と見なされ、多くの場合は代わりにUSBが使用されているため、新しい設計で使用されることはごくまれです。しかし、DB-25はこの業界やユーザーによって長年使用され、データレートが低い場合や中程度の場合などのリンクでは主力のコネクタだったのです。
また、その物理的なサイズにより、設計者が保護シェルを外してコネクタの背面にアクセスし、電圧計やオシロスコープなどのテスト機器を使用してコネクタのワイヤを直接プローブできるというのも良い点でした。また、非常に便利なブレークアウトボックスを使用することによって、RS-232アセンブリの1本または複数のワイヤに対するプローブの接続、信号パスの作成/分割、ジャンパやワイヤのクロス接続を簡単に行うことができました(図1)。このようなアクセスのしやすさによって、ヌルモデムを作成したり、DTE(データ端末装置)デバイスをDCE(データ通信装置)デバイスに変換したりしなければならない場合に簡単に作業することができました。さらに、実際に必要な部品を簡単に確認でき、新しいコネクタ/ケーブルを適切な配線構成を使用して素早くはんだ付けすることができました。
図1:使いやすく便利なRS-232ブレークアウトボックス。1本または複数のワイヤに対するプローブの取り付け、信号パスの分割、1つのコンタクトから別のコンタクトへのジャンパの接続も行うことができます。(画像提供:Tecra Tools, Inc.)
では、RJ11電話線は?
便利なブレークアウトボックスを使用できるのは、DB-25コネクタだけではありませんでした。有線電話に使用される標準的な6線式のRJ11モジュラーコネクタの場合は、ブレークアウトボックスを使用することで、ワニ口クリップやスライドオンコネクタを使って導体を簡単に利用することができました(図2)。これにより、スタンドアロンの留守番電話やファックスなどを操作している際に、信号をモニタしたり注入したりすることができました。
図2:このシンプルなRJ11ブレークアウトボックスにより、プローブ、信号、または設計中のシステムを有線の電話線に非常に簡単に接続できるようになります。(画像提供:Bill Schweber氏)
6線と対象となるプロトタイプとの間に、小型ではんだ付けされたインターフェースが必要な場合は、SparkFun Electronicsの使いやすいRJ11ブレークアウトボードを利用することで、電気関連の相互接続の信頼性を確保し、作業の負担を回避することができます(図3)。
図3:このSparkFun ElectronicsのRJ11ブレークアウトボードを利用することにより、幅広く利用されている6線のモジュラーコネクタへのはんだ付けによる接続をシンプルにすることがきます。(画像提供:SparkFun)
IDCアセンブリもプローブ可能だった
ミディアムピッチの絶縁変位コネクタ(IDC)およびフラットケーブルが使用される高密度のアセンブリも、プローブが比較的簡単でした。たとえば、プロトタイプのセットアップベンチで、TE Connectivity AMP Connectorsの26極、長方形のレセプタクルコネクタである1658623-6などの追加のコネクタを、ケーブルアセンブリの任意の場所に圧着することができます(図4)。
図4:追加のTE Connectivity AMP Connectorsの1658623-6 26ピンIDC。フラットケーブルに圧着して、1本以上のケーブルワイヤへのアクセスポートとして使用できます。(画像提供:TE Connectivity AMP Connectors)
次に28AWGのソリッドワイヤを1つ以上のコンタクトホールに挿入して、挿入したワイヤにプローブを取り付けます。これは適当な処置に見えるかもしれませんが、きちんと機能します。フラットケーブルは基本的なグレーの他に、虹のようなマルチカラーのものもあり、テストやデバッグの際に便利でした(図5)。
図5:IDCコネクタには単色またはマルチカラーのフラットケーブルがあり、マルチカラーのものを使うことによって、デバッグやワイヤのトレースが簡単になります。(画像提供:執筆者)
マルチギガヘルツの設計が状況を変える
しかし、それから時代は変わり、現在では多数の設計作業が、帯域幅がマルチギガヘルツの範囲である信号、そして対応するギガビット/秒のデータレートに照準を合わせて行われています。あらゆる相互接続ケーブルアセンブリは、今では直径わずか1ミリメートルしかないこともある同軸ケーブルが使用された、精密に設計されたコンポーネントになっています。これらのケーブルアセンブリは、Rosenbergerの01K80A-40ML5のような、動作定格が110GHzである面実装レセプタクルで使用するために設計されています。コネクタの中には、締め付け程度を適切にするために、トルクレンチが付属しているものもあります(図6)。
図6:Rosenbergerの01K80A-40ML5 RFコネクタ。110GHzで動作するように設計されており、直径わずか1ミリメートルの同軸ケーブルで終端するコネクタに接続されます。(画像提供:Rosenberger)
1GHzを超えるケーブルアセンブリは、ある理由があって、目には見えないが重要な「妨害しないでください」というサインを出しています。それは、妨害やアドオンのプローブが、ケーブルのインピーダンス、性能、信号の完全性、ビットエラーレート(BER)に重大な悪影響を与えるという理由です。今日の高速で回転速度が高く、振幅の小さい信号は、静電容量、負荷、そして時には温度に対しても高感度であるため、ユーザーが不用意に実施する可能性がある、どちらかと言うと大雑把なプロービングに耐えることができません。アセンブリに対する入出力信号を確認する必要がある場合は、バッファについての戦略を慎重に計画し、実行する必要があります。
実際には、こうした信号の物理的な性質は操作できるものではないため、対策はあまりありません。これは、電気的な試験および測定においてハイゼンベルグの不確定性原理を実証しようとしているようなものです。つまり、測定という行動自体が、測定しようとしているパラメータを変化させてしまうのです。私たちは、高速に移動する信号と、それらの精密なコネクタの世界に生きています。そして、信号もコネクタも介入に対して不寛容なのです。安全なスコーププローブや不注意なフィンガーでさえ、コネクタのインダクタンスや静電容量など、信号とコネクタが適切に処理できるように設定されている要素のバランスを崩す可能性があります。
しかし、かつては基本的なブレークアウトボックスが広く使用され、大きな効果を上げていました。こうしたブレークアウトボックスは、現在でも用途によっては有用ですが、急速に使用されなくなりつつあります。その多くが、現在は機材ロッカーにしまい込まれてしまっているのではないかと思います。これらのブレークアウトボックスは、遠い将来、貴重な収集家向けアイテムになるのではないでしょうか。もしかしたら未来の物語では、古いけれども必要用不可欠なシステムの誤動作によって人類に脅威が及び、その事態を解決するために、引退していた技術者の助けを借りてブレークアウトボックスが復活したりするのかもしれませんね。
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