最適化されたIRエミッタを使用して、性能のトレードオフを最小限に抑える

最初の可視光スペクトル領域の発光ダイオード(LED)は、1962年にNick Holonyak Jr教授によって開発され、数年以内に商品化されました。当時は赤色しかなく、輝度は低く、ロットごとにばらつきがありました。それでも、白熱灯やネオン光源を大きく上回る進歩への第一歩となり、ソリッドステート照明を大衆市場で現実のものとなりました。

当初の欠点にもかかわらず、これらのLEDはすぐにインジケータやデジタル表示器として活用され、LEDのマトリックスや、バー状のレンズを使った7セグメントディスプレイに使用されました。集中した研究開発により、1970年代には黄色と緑色のLEDが開発され、1990年代半ばには高輝度の青色LEDが誕生するなど、さらなるブレークスルーが起こりました。

この発明により、青色LEDに赤色および緑色LEDを組み合わせる方法、あるいは蛍光体コーティングを施す方法によって、白色光への道が開かれました。その後、LEDがバックライトや広範囲照明など、さまざまな分野で主流となるまでの経緯は、広く知られている通りです。

しかしながら、LEDの進歩にはあまり注目されない側面があります。それは、主に、あるいは専らスペクトルの赤外線(IR)領域で発光するソリッドステートデバイスの開発です。そのため、その出力は目で見ることができません。一般消費者にとってはあまり意味がないように思えるかもしれませんが、IR LED(より正確にはIRエミッタと呼ばれる)は、科学、産業、センシング、認証、バイオメトリックトラッキング、さらには一部の民生用アプリケーションにおいても非常に価値あるものです。

IRエミッタ固有の特性

赤色LEDと同様、最初のIRエミッタは性能が限定的で不安定でした。それでも、フィルタ付きの白熱電球などの従来のIR光源と比較して、いくつかの利点がありました。

今日のIRエミッタは、すべての主要な電気的および光学的パラメータにおいて高い性能を発揮しています。さらに、特定の性能属性を最適化し、強調するように調整されているため、ユーザーは対象とするアプリケーションで優れた性能を発揮するIRエミッタを選択することが可能となります。

これらのデバイスは、出力波長が850、920、940ナノメートル(nm)を中心とする傾向があります(図1)。なお、850nmは可視光領域とIR領域の境界近くにあるため、より短波長のIRエミッタではわずかに赤みがかった輝きが生じることがあります。

図1:IRエミッタは780~1400nmの範囲で動作します。広く使用されている850nmのIR波長も、可視光の赤色スペクトルの端に近い位置にあるため、若干の可視赤色光を伴うことがあります。(画像:Gigahertz-Optik Inc.)

最先端のIRエミッタコンポーネント

ams OSRAMOSLON P1616およびOSLON Black IRエミッタは、IRエミッタの性能と技術的進歩を示す良い例です。両シリーズとも、ams OSRAMのIR:6チップ技術を採用し、性能を向上させています。これにはダイ内の光損失を低減しつつ放射強度を高める、チップ内部のリフレクタとチップミラー設計の改良が含まれています。ams OSRAMによれば、このIRエミッタは現在入手可能製品と比較して、42%高いウォールプラグ効率と、35%高い出力を実現しています。

OSLON P1616とOSLON Blackシリーズの主な違いは、前者が極めて小型であること、後者が多様なフォームファクタと照明パターンを備えていることです。

たとえば、SFH 4182BS-CB2DB1-11(図2、上)のようなP1616デバイスは、940nmで発光する高出力IRデバイス(図2、左下)であり、高密度実装向けに1.6 × 1.6ミリメートル(mm)という小型のフットプリントを有しています。レンズやスタイルによって高さは異なります。アプリケーションとしては、出入管理のための生体認証、ノートパソコンやスマートドアベル向けの2D認証、IR照明などが挙げられます。

P1616ファミリは、190~765ミリワット/ステラジアン(mW/sr)のクラス最高の公称放射強度と、1000mW~1650mWの放射束を提供します。SFH 4182BS-CB2DB1-11の標準放射強度は455mW、最大放射束は1650mWです。強度と放射束はいずれも1アンペア(A)で測定されましたが、デバイスのサフィックスによって異なる場合があります。

また、SFH 4182BS-CB2DB1-11は、順方向電流1A、パルス幅10ミリ秒(ms)の試験条件下においても、明確な角度放射特性を示します(図2、右下)。本シリーズはNanostack技術を採用することにより、出力を約180%向上させており、レンズ付きバージョンはすぐに設計導入が容易な一方、レンズなしバージョンはカスタムの光学配置が可能です。

図2:P1616シリーズのレンズ付き、高出力IRエミッタSFH 4182BS-CB2DB1-11(上)は、940nmに狭帯域発光特性を有します(左下)。本デバイスは、明確な放射角度特性を示します(右下)(1A、10msパルス)。(画像提供:ams OSRAM)

P1616シリーズには3波長オプションを提供します。高感度カメラ向け850nm、セキュリティやインテリアアプリケーション(セミカバートモード)向け赤色輝度低減940nmおよびトレードオフのバランスを重視した920nmです。視野角オプションは±25°~±60°まで幅広く、矩形視野を必要とする用途を含む幅広いアプリケーションでの使用を可能にします。

SFH 4716B (図3、上)のようなOSLON Blackシリーズのデバイスは、コスト効率に優れた高性能IRエミッタです。SFH4716Bのピーク波長は850nmです(図3、左下)。本シリーズには920nmと940nmのデバイスも含まれており、極めて高い総光束と、3.75 × 3.75mmの業界標準小型パッケージを兼ね備えています。

本エミッタシリーズは、多様なパッケージとチップオプション、さらに異なる輝度レベルに対応した積層チップおよび非積層チップのバリエーションが用意されているため、アプリケーション設計において柔軟性を提供します。主なアプリケーションには、2D顔認識、長距離および短距離CCTVカメラ、ホームセキュリティ、マシンビジョン、ナンバープレート認識などが挙げられます。

本デバイスの性能は、200~280mW/sr(1A時)の放射強度、1050または2000mW(1A/2A時)の放射束、周囲温度や高電流直流動作による高温環境下での動作を可能にした低熱抵抗を特長としています。SFH 4716Bの放射パターン(図3、右下)は、同様の試験条件下ではSFH 4182BS-CB2DB1-11の放射パターンと若干異なります。しかしながら、他のBlackシリーズと同様に、±25°〜±60°という広い視野角範囲を維持しています。

図3:IRエミッタのOSLON Blackシリーズ SFH 4716B(上)は、SFH 4182BS-CB2DB1-11と比較して、850nmにピーク出力を示し(左下)、放射パターンが若干異なります(右下)。(画像提供:ams OSRAM)

まとめ

IRエミッタが、比較的粗雑で不安定な部品から、広く入手可能で高性能かつ安定したIR光源へと進化してきた様子は、実に興味深いものです。ams OSRAMのOSLON P1616やOSLON Blackシリーズのような最新製品は、設計者に高性能と、波長、サイズ、強度、その他の主要パラメータにおける幅広い選択肢を同時に提供します。これらのIRエミッタは、生体認証セキュリティからエリアイメージングやマシンビジョンに至るまで、多様なアプリケーションを実現します。

関連コンテンツ

1:Light is security: Selection guide and product portfolio for infrared vision applications(光は安全:赤外線ビジョンアプリケーション向け選択ガイドと製品ポートフォリオ)(パンフレット)

https://look.ams-osram.com/m/39974ab4771efcd2/original/aO-IRED-Brochure-112023.pdf

2:SFH 4182BS OSLON P1616データシート

https://look.ams-osram.com/m/154b521f0188e2f1/original/SFH-4182BS.pdf

3:SFH 4716B OSLON Blackデータシート

https://look.ams-osram.com/m/19ecb8089d239a55/original/SFH-4716B.pdf

著者について

Image of Bill Schweber

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

More posts by Bill Schweber氏
 TechForum

Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.

Visit TechForum