RFアプリケーション向けの同軸コネクタを選択、使用、保守する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2018-06-20
無線周波数(RF)回路は、有線と無線のどちらの通信においても普及しつつあり、Wi-Fiや、モノのインターネット(IoT)に使用される各種の無線テクノロジも含まれます。これらの高周波数の信号は、システム、回路部品、サブアセンブリ間で分散する必要があり、損失や擬似放射も最小限に抑える必要があります。
従来から、これはRF同軸ケーブルとコネクタの役割でしたが、設計者は時間、コスト、信頼性の制約に追われ、最適なRFコネクタを迅速に選び、正しく適用して、最高の性能と長い寿命を確保する必要に迫られるようになりました。
この記事では、設計者がRFアプリケーションに適したコネクタを選択できるよう、サイズ、周波数範囲、損失、耐久性などの重要なパラメータの観点からRFコネクタを検討します。また、それらのコネクタをどのように適用し、保守するかについて、適切なソリューションと有用な情報も紹介します。
RF同軸コネクタ
RF同軸コネクタおよびケーブルは、通信、放送、無線に加えて、テストや測定の用途においても主要なRFリンクを提供します。これらのコネクタは、同軸ケーブルやストリップ線を使用して、RFシステム、コンポーネント、サブアセンブリ、デバイス相互の間で損失の低いパスを形成します。基本的な同軸構造は、中心となる導体を、同心円の絶縁体レイヤで囲んだものです。このレイヤはさらに、筒状の導体のシェルで覆われます。ケーブルの各要素の寸法は、導体の寸法と間隔が一定になるよう精密に決められています。これは、伝送ラインで効率的に機能するために必要な条件です。RFコネクタは、同軸ケーブルやストリップ線の伝送ラインを他のコンポーネントやサブアセンブリに接続するための結合部となります。これらのコネクタは、インターロック導体を追加することで同軸構造を延長し、ロック機構も搭載され、同時に一定の電気的インピーダンスを維持します。Amphenol RF製のサブミニチュアタイプA(SMA)コネクタ要素の嵌合ペアを、図1に示します。

図1:SMAコネクタペアは同軸コネクタの例です。この画像では、内部導体、絶縁レイヤ、およびロック機能のある外部導体を示しています。(画像提供:Amphenol RF)
左側の画像はオス型(プラグ)部分です。右側の画像は、コネクタペアのメス型(ジャックまたはソケット)部分です。一般に、プラグには中央に導体の突起部が、外側の導体の内側にロック用のネジ山があります。ソケットは内部の導体がくぼんでおり、外側にロック用のネジ山があります。一部の「逆極性」タイプのコネクタではロック用のネジが逆になっており、オス型部品の外側と、メス型部品の内側にネジ山があることに注意してください。他のロック機構として、ツイストロック、差込接続、スナップロックリングも使用されます。
ほとんどの同軸コネクタは、このSMAコネクタペアのようにオスとメスの区別があり、構造が異なっています。一部のコネクタには、結合部の両側が同一構造のものもあります。これらのほとんどは、実験室用アプリケーションを目的とした高精度のコネクタです。
同軸コネクタのタイプ
RFコネクタには非常に多くの種類がありますが、いくつかの主要なパラメータによって分類できます。主な仕様には、物理的サイズ、インピーダンス、VSWR、嵌合タイプ、帯域幅または周波数範囲があります(表1)。

表1:一般に使用される同軸コネクタの仕様の概要表。(データ提供:DigiKey)
コネクタの帯域幅
同軸コネクタの主要な仕様は、その帯域幅です。これは、そのコネクタを使用可能な最高周波数を示しています。コネクタを使用可能な最高周波数は、外部シェルの直径と、絶縁体として使用される材質に影響されます。シェルの直径が小さいほど、使用可能な最高周波数は高くなります。同様に、空気を絶縁体として使用すると、他の絶縁体と比較して最も高い周波数特性が得られます。結果として、最も帯域幅の高いコネクタは、空気を絶縁体として使用します。
コネクタのインピーダンス
最大の伝送電力を保証し、反射による電力損失を低減するため、コネクタの特性のインピーダンスはソースおよび負荷に一致するようにします。一般的なRFアプリケーション用のコネクタのほとんどは、50Ωのインピーダンスを実現するよう設計されています。ビデオ関連のアプリケーションでは、75Ωのコネクタも利用可能です。
VSWR
電圧定在波比(VSWR)は、嵌合するコネクタの実効インピーダンスの基準です。VSWRが高いほど、インピーダンスの不一致によりコネクタで反射する電力が大きいことになります。VSWRは周波数の関数となり、コネクタのVSWR値は同一周波数でのみ比較すべきことに注意してください。
嵌合機構
嵌合列には、採用されている機械的ロッキング機構のタイプが示されています。これは、コネクタが振動にさらされるアプリケーションでは非常に重要です。嵌合では一般に、接続の容易さと確実なロックはトレードオフの関係にあります。前の図1に示したSMAコネクタペアは、ネジ山式嵌合の例です。図2に示すのは差込およびスナップオン式の嵌合の例で、それぞれBNCおよびSMPコネクタタイプを使用したものです。

図2:差込およびスナップオン嵌合の例。振動が予想されるアプリケーションでは嵌合方式が重要で、多くの場合は使いやすさと確実なロックとのトレードオフになります。(画像提供:DigiKey)
コネクタのサイズと耐久性
小型化の動向の中で、コネクタの選択にはサイズが重要な役割を果たします。表1に記載されているコネクタには、サイズのクラスが示されています。コネクタのサイズと寿命も、トレードオフの関係にあります。小さなコネクタは一般に、取り付け/取り外しの可能な回数が少ない傾向があります。たとえば、大きなNコネクタは嵌合サイクルで500回以上の耐久性があり、マイクロミニチュアのU.FLコネクタは嵌合サイクルが30回に制限されています。コネクタの寿命は製造業者ごとに異なるため、寿命が重要なパラメータの場合はコネクタの仕様について問い合わせるようにします。
テストや測定機器などのアプリケーションに使用される同軸コネクタでは一般に嵌合サイクルが多くなるため、通常は「コネクタセーバー」を使用して保護されます。これらの簡単に交換可能なアダプタは、機器のコネクタと嵌合され、繰り返し使用できる消耗品のコネクタ本体として機能します。
コネクタのクラスと業界仕様
コネクタはいくつかの異なるクラスに分類されます。表1で、1mmから2.92mmやNコネクタなど、高精度のコネクタは、IEEE-STD-287に属します。これらのコネクタは帯域幅の広いアプリケーションを対象としているため、寸法の許容公差がより厳格に規定されています。より一般的なコネクタは、MIL-STD-348、またはCECC 22220など欧州の規格のいずれかに属します。これらのコネクタの許容公差はそれほど厳格でないため、コストの削減が可能です。
嵌合の互換性
コネクタのクラスに関係するのが、さまざまなファミリのコネクタを嵌合できるかどうかです。表1には、相互に交換して嵌合可能な多くのコネクタが示されています。1.85mmと2.4mmのコネクタや、2.92mmと3.5mmのコネクタは相互に交換可能です。2.92mmと3.5mmのオス型コネクタの本体は、SMAのメス型コネクタと嵌合可能ですが、総合的な帯域幅が低下します。許容公差クラスの相違から、SMAのオス型を2.92mmまたは3.5mmのメス型コネクタと組み合わせるのは適切な方法ではありません。SMAの機械的許容公差が大きいため、高精度コネクタのソケットのピンを傷める可能性があります。
コネクタの定格電力
製造業者は、コネクタの電力放散を規定しません。これは、その仕様がアプリケーションによって大きく異なるためです。この値は、周波数、システムのVSWR、温度、高度、負荷インピーダンスによって変化します。一般に、電力の扱いはコネクタのサイズと放熱能力に応じて直接変化します。周波数が上昇すると、最大電力放散は減少します。
電力処理能力に最も優れているのはNコネクタで、300~400ワット(W)を処理できます。これに続くのがBNCおよびSMAコネクタです。高精度コネクタは数十ワットに制限されます。ここでも、大電力での動作が必要なら、より正確な電力放散仕様について製造業者に問い合わせることが重要です。
コネクタの使用法
コネクタを使用する前に、金属粒子、中心の導体の曲がり、または外部シェルの潰れや変形などがないかどうか検査することが重要です(図3)。損傷を修復するか、破損したコネクタを交換する必要があります。コネクタは、ほこりや他の汚染物質が付着していないクリーンな状態であることが必要です。コネクタの本体が滑らかに嵌合し、引っかかりや詰まりがないことを確認します。コネクタを強引に押し込んではいけません。問題が発生した場合、コネクタを再検査して原因を判定します。
ネジ山付きのコネクタを取り付けるときは、外側のシェルのみを回します。コネクタ本体やケーブルを回してはいけません。コネクタ本体を回すと、中央の導体が破損する可能性があります。外側の金輪が手で回らない程度に固定されたら、較正済みのトルクレンチを使用して、製造業者の指示に従い、規定のロック用トルクで締めます。

図3:(左)絶縁体に泥や金属粉が付着したSMAコネクタの例。(右)同じコネクタを、綿棒とイソプロピルアルコールでクリーニングした後の状態。(画像提供:DigiKey)
コネクタの保守
コネクタはクリーンに保つ必要があります。これを確実にするための最良の方法は、コネクタを使用しないときは保護キャップを使用することです。コネクタが泥で汚れている場合、クリーニングします。固体の絶縁体を使用するコネクタは、リントフリーの綿棒をイソプロピルアルコールに浸してクリーニングできます。中央の導体ピンを曲げないよう注意します。ネジ山付きコネクタでは、内側と外側の両方のネジ山もクリーニングすることが適切です。空気絶縁を使用しているコネクタでは、綿棒を使用してはいけません。これは、要素を定位置に保持している絶縁ビーズが溶剤により損傷する可能性があるためです。このようなコネクタは、乾燥した圧縮空気を使用してクリーニングできます。
同軸コネクタの選択
同軸コネクタの選択では、使用される信号を処理するために必要な帯域幅から始め、次にサイズと機械的構成(プラグ、ソケット、ソルダイン、パネル取り付けなど)を考慮します。たとえば、1GHz信号の発信器用の出力コネクタについて考えます。これはテストおよび測定用の信号ソースなので、BNCコネクタが一般的な選択肢です。BNCの帯域幅は1GHzより高く、パネル取り付けのソケットとして利用可能です。Amphenol RFのモデル31-221-RFX BNCソケットが適切な選択肢です。
信号の周波数が10GHzを超える場合、Amphenol SV MicrowaveのSF2950-6062などのSMAコネクタや、Amphenol SV MicrowaveのSF1521-60013などの高精度2.92mmコネクタを検討します。この選択は、帯域幅とコストとのトレードオフによって決定される可能性があります。2.92mmコネクタはSMAの2倍以上の帯域幅を持ちますが、代償としてコストが約3倍になります。
サイズが決定的な仕様の場合、コネクタの耐久性を検討します。たとえば、Molex LLCのMMCXジャックモデル0734152063は、500回の嵌合サイクルが規定されています。Hirose Electric Co.のU.FL-R-SMT(10)はより小型ですが、30回の嵌合サイクルにしか耐えられません。コストも大きく異なる可能性があります。
結論
この記事では、さまざまなRF同軸コネクタについて、主な属性の概要をレビューしました。これは、設計者が設計に適したコネクタを選択するための適切な開始点です。ここに示したように、単純に見えるRF同軸コネクタを選択するときにも、エンジニアリング要件の注意深いレビューは重要です。サプライヤのデータシートを調べて、さらに詳細な情報を確認することをお勧めします。
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