斬新な工夫:Maxim IntegratedがデュアルコアArm/RISC-Vマイクロコントローラを使用してRISC-Vのリスクを解消した点

Armのコアは信頼性が高いことが証明されており、現在ほとんどのモバイルデバイスとモノのインターネット(IoT)のエンドポイントに搭載されていますが、1つのサイズですべてに対応できるとは限らないため、代替手段があった方が常に便利で安心です。

そこで、RISC-V 32ビットCPUの話題に入りましょう。RISC-V(「リスクファイブ」と発音)はオープンソースであり、ロイヤルティのないアーキテクチャであり、非常に長い時間をかけて確立されたArm CPUコアのエコシステムにとって初めて手ごわい競争相手となる製品です。ベースとなるRV32バリアントには、x1からx31という名前の31個の汎用32ビットレジスタがあります(レジスタx0はハードワイヤでの接続により常に0であり、書き込むことはできません)。様々なアプリケーションに柔軟に対応できるアーキテクチャの拡張機能をサポートします。たとえば、マイクロコントローラを構築する場合、RISC-V拡張機能「B」はネイティブのビット操作をサポートします。これは、マイクロコントローラに関する私の長い経験では、本アーキテクチャが深く埋め込まれるものに真剣に取り組んでいることを示しています。

ただし、課題は、技術者に新しいアーキテクチャを受け入れさせることです。新しいアーキテクチャが採用されるには、既存の調達の勢いに逆らおうとすることは常に困難なやり方となります。

Maxim Integratedがこの採用の問題を解決した方法は、調達の勢いの方向に進むことでした。MAX78000EXG+はデュアルコアマイクロコントローラであり、搭載している100メガヘルツ(MHz)のArm Cortex-M4コアには浮動小数点ユニット(FPU)と様々なシリアル通信インターフェースを備えています。ただし、Armコアはメインバスを2番目の32ビットRISC-Vコアと共有しています(図1)。しかし、2番目のコアだけが、MAX78000EXG+を詳しく調べる価値がある理由ではありません。マイクロコントローラには、人工知能(AI)パターンマッチング用の、442キロバイト(Kバイト)の重みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)アクセラレータがあります。RISC-Vコアの存在理由は主に、プログラム可能でスマートなダイレクトメモリアクセス(DMA)を行えることで、CNNとオンチップメモリ​間でデータを移動できることにあります。ただし、RISC-Vコアは独立して動作することもでき、その場合、技術的にはMAX78000EXG+がデュアルコアプロセッサになります。

図1:Maxim Integrated MAX78000EXG+マイクロコントローラには、RISC-Vコアに加えてFPUを備えたArm Cortex-M4コアがあります。また、AI処理用のCNNだけでなく、様々なシリアルインターフェースも備えています。(画像提供:Maxim Integrated)

これで、RISC-VとArmをアーキテクチャのバリアントとエコシステムの面で比較できましたが、エンジニアリング/設計要員は、その雇用主に使用されもしない新しいマイクロコントローラアーキテクチャを調達するたびに転職しなければならなくなっているというのが赤裸々な真実です。たとえば、モジュールメーカーは、製品で使用されているメインコアが不評なために完成品メーカーによってその製品を「拒否」されたり、より婉曲な用語では「業界で認められる」だけに終わったりするリスクがあります。私がこのような事態を目にしたのは、半導体会社にいて、デジタルカメラのモジュールメーカーを訪問したときでした。

同社は極めてニッチ市場向けのデジタルシグナルプロセッサ(DSP)をベースにしたすばらしいデジタルカメラモジュールを製造していました。「ニッチ市場向け」というのも、そのモジュールのニーズがDSP市場の10%未満であると推定していたためです。とにかく、そのデジタルカメラモジュールにはすばらしいデータがあったため、最初はモジュールメーカーにDSPを使用するように説得することができませんでした。私の巧みなパワーポイント資料と習得していた高い言語コミュニケーションスキルにもかかわらず、です。初めは、私のDSPを採用するようにそのモジュールメーカーを説得できなかったわけです。

今にしてみると、モジュールメーカーがアプローチしたデジタルカメラメーカーは、ニッチなDSPに対する情熱を共有していませんでした。そのDSPは性能上明らかに優位であったにもかかわらず、どのカメラメーカーもそのモジュールメーカーと提携してモジュールを購入しようとしませんでした。すばらしい仕様のこのニッチなDSPコアはあまりにも知名度が低く、市場で十分に売れなければ、製造打ち切りになることが懸念されていました。モジュールメーカーが短時間の再調整を行った後で私のところに戻ってきたので、私たちは彼らのコードを当該のDSPに移植しました。

新しいコアを調達する際のもう1つの懸念は、エンジニア/設計者がそのコアのアーキテクチャについての経験をほとんど持っていないことです。このような場合、設計者は、コアがアプリケーションでどのような性能を示すかや、実際のメモリ要件がどれほどであるかを過小評価する可能性があります。開発作業は、電圧レギュレータの調達とは異なり、何か月もかかる場合があります。この期間内では、選択したコアの性能が低下していることが判明するまでに、アプリケーションでフィーチャークリープが起こる場合もよくあります。

Maxim Integratedは、MAX78000EXG+を使用することで、RISC-Vコアの調達に関連するエンジニアリング/設計およびビジネス上のリスクを明らかに解決しました。RISC-VコアはスマートDMAとして使用されていない場合、アプリケーションの2番目のコアとして使用できます。Cortex-M4とその近くのFPUによって性能が支援されるため、性能に対する懸念は簡単に解消されます。

まとめ

RISC-Vなどの新しいコアを調達すると、アプリケーションでのコアの性能が不確実である場合があります。用途とメモリ要件への適合性が現時点でまだ不明な場合は、コアの機能が完全に理解されて評価されるまでに数か月のコーディングが必要になることもあります。ただし、Maxim IntegratedのMAX78000EXG+により、Armコアが新しいアプリケーションにRISC-Vコアを採用することによる技術上およびビジネス上の懸念を軽減することができたのは、エンジニアリング/設計上の大きな皮肉の1つでした。

著者について

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Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

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