Wi-Fi対応のタッチスクリーンをコンパクトなIIoTユーザーインターフェースとして活用する理由と、どのように活用するかをご紹介

産業用オートメーション(IA)機器のユーザーインターフェースは、階層的なメニューが並ぶマルチスクリーンパネルから、ON/OFFと刻印されたオレンジ色の大きなスイッチのようなシンプルなものまで、多岐にわたっています。レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を借りれば、「ユーザーインターフェースは可能な限りシンプルでなければなりませんが、シンプルすぎてもいけません」。あくまでもタスクに適したものであって、複雑すぎないことが重要です。

産業用オートメーションシステムでは、操作するシステムの近くにコンパクトなユーザーインターフェースを配置したり、システムの再構成時に簡単に移動させたりしなければならない場合があります。本ユーザーインターフェースは、タッチスクリーンディスプレイの柔軟性を使用して、機器とワイヤレスで通信することができます。これは、IIoT(産業用モノのインターネット)アプリケーションだけでなく、ホームオートメーションアプリケーションにも役立ちます。ホームオートメーションアプリケーションとしては、照明の遠隔操作やガレージドアの開閉のような簡単なものにも使用できます。

研究所の技術者が、照明のオン/オフ、扇風機の制御、ソレノイドを使ったドアのロック解除など、簡単な制御作業を行えるように、ローカルネットワークに接続された専用のラップトップを設定しているのを私は見たことがあります。これは良いシステムでしたが、基本的なセキュリティが欠けていました。たとえば、ラップトップがネットワークから切断された場合、フェイルセーフとして、すべての照明が点灯し、ドアのロックが解除されます。

必要なセキュリティを備えた、よりシンプルで効率的なソリューションは、ワイヤレスネットワークに接続するタッチスクリーンです。3.5インチの320 x 240の明るいTFT(薄膜トランジスタ)ディスプレイ(図1)に静電容量式タッチスクリーンを採用した内蔵評価ボードMIKROE-3923など、非常に優れたシングルボードコンピュータ(SBC)システムのメーカーとして、MikroElektronikaがあります。このボードは、シングルセルのリチウム電池で駆動することができます。この電池は、USB-Cコネクタを介して充電され、USBホストモードとデバイスモードの両方に対応しています。

図1:MIKROE-3923の正面と背面の写真。保護機能と魅力のあるベゼルに囲まれた、320 x 240、3.5インチのTFTディスプレイです。さらに、いくつかのセンサと1つのブザーを備えており、Wi-Fiを使ってローカルに接続することができます。(画像提供:MikroElektronika)

MIKROE-3923の色深度は24ビットで、6個の高輝度LEDを使用し、500:1の高コントラスト比を実現しています。これにより、ほとんどの照明条件で、見やすく視認性の高いディスプレイを実現しています。このような特性は、明るい産業施設や、時折陽光にさらされる可能性のあるホームオートメーションシステムでは特に重要です。タッチスクリーンは、マルチタッチやマルチジェスチャにも対応しています。これは、オペレータがディスプレイ全体を素早く下方向にスワイプするなどして、システムを素早くシャットダウンする必要があるような緊急の場合に役立ちます。

本ボードは、MikroElektronikaのmikroBUS拡張ヘッダに対応しており、対応するmikroBUSデバイスと接続できます。MikroElektronikaのCC3100 mikroBUS Click Wi-Fi mikroBUS拡張ボードMIKROE-2336(図2)は、前述の拡張ヘッダに簡単に差し込むことができるので、施設のWi-Fiネットワークに確実に接続することができます。また、CC3100 Clickは、Wi-Fiのアクセスポイントとしても機能します。このことは産業用&ホームオートメーションシステムにおいて大きな利点となります。CC3100 Clickが、中央のアクセスポイントとして機能できるとともに、MIKROE-3923に直接ネットワーク接続されたシステムを処理するコンピュータを制御できるからです。これにより、ネットワーク接続やメンテナンス作業が容易になり、システムの信頼性が向上します。

図2:MikroElektronika CC3100 Click Wi-Fi mikroBUS拡張ボードは、MIKROE-3923への信頼性の高いWi-Fi接続を提供することができます。本ボードは、既存のWi-Fiネットワーク上のノードとして、またWi-Fiのアクセスポイントとして使用することができます。(画像提供:MikroElektronika)

MIKROE-3923は、よく知られているオーディオフォーマットのほとんどをサポートするオーディオコーデックを搭載しています。ボードに搭載された3.5mmジャックにスピーカを接続すれば、合成音声による通知や、タッチスクリーンのクリック音など、オペレータへのオーディオフィードバックが可能になります。

MIKROE-3923のセンサには、3軸の加速度計と磁力計が搭載されています。多くの人が出入りする大規模なIIoT施設では、これらのセンサを使って、許容できない振る舞いやデバイスの取り外しを検知することができます。MIKROE-3923は、許容できない振る舞いや改ざんを検知した場合、Wi-Fi経由でセキュリティシステムにアラームを送信したり、スピーカでアラームを鳴らしたりすることができます。

本ボードのメインプロセッサは、FPU(浮動小数点演算プロセッサ)を搭載した120メガヘルツ(MHz)のArm Cortex-M4である、NXPMK64FN1M0VDC12です。1メガバイト(Mバイト)のプログラムメモリフラッシュと256キロバイト(Kバイト)のSRAMを搭載するとともに、複雑なエッジ処理にも対応できる処理能力を備えています。さらに、MIKROE-3923は産業用装置のメインSBCとしても機能し、ユーザーインターフェースとしてだけでなく、接続された機器群の中央制御コンピュータとしての役割も果たします。

MIKROE-3923にはmicroSDカードスロットがあり、データを保存したりMK64FN1M0VDC12のファームウェアをアップグレードしたりするのに使用することができます。また、8Mバイトのフラッシュメモリモジュールも搭載されており、プログラムフラッシュメモリや不揮発性のデータストレージとして使用することができます。これにより、MIKROE-3923はアプリケーションの定数や較正データを保存したり、システム操作のデータロギングを行ったりすることができます。これは、ホームオートメーションシステムで経時的に温度を記録したり、産業用オートメーションシステムで性能データを記録して後で検証し、効率化によるコスト削減の方法を見つけたりするのに役立ちます。

まとめ

IA、IIoT、ホームオートメーションを進歩させるには、コンパクトで使いやすく、明るい場所でも見やすい、柔軟なユーザーインターフェースを選択できる必要が生じる場合がよくあります。コンパクトなタッチスクリーンのユーザーインターフェースは、十分な処理能力とWi-Fi接続があれば、単なる制御パネルを超えた機能を果たすことができます。また、複雑な装置群やIIoTネットワークのメイン制御コンピュータとしても機能し、操作の簡素化やメンテナンス性の向上を実現します。

著者について

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Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

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