EUの次期エコデザイン要件への準備はできていますか?
スマートフォンやタブレットコンピュータに対する欧州連合(EU)の次期エコデザイン規制への準備を行うのに、早すぎるということはありません。この規則は、持続可能な1設計と新しいエネルギーラベル2の要件を含み、これらのデバイスの設計、製造、販売の方法に大きな影響を与えるものとなります。一方の規則では、消費者が簡単に修理、アップグレード、メンテナンス(場合によってはバッテリ交換も含む)を行えるようなスマートフォンを製造することが要求されます。他方の規則では、家電製品に貼られているようなエネルギーラベルを追加することに焦点が当てられます。
いずれも2024年に法制化される予定です。
5G接続の性能要件により、これらの新しい指令を満たすことがさらに困難になります。持続可能でエネルギー効率の高いタブレットコンピュータやスマートフォンを設計する際に考慮すべき重要な3つの分野は、低消費電力メモリ、最適な電源管理、効率的なRF信号チェーンです。
このブログでは、エコデザインに関する要件の一部と、その準備のためにできることを簡単に説明します。そして、Micron Technologyの低消費電力ダブルデータレート5(LPDDR5)メモリIC、Texas Instrumentsの電源管理IC(PMIC)、InfineonのアンテナチューニングICなど、高効率化を実現するICを取り上げます。
エコデザイン規制の例
「携帯電話及びタブレットコンピュータを持続可能なエコデザインとするための設計」に関する規制の52ページに及ぶ付属文書から、新しい要件の例をいくつか以下に抜粋します。
侵入保護:これらのデバイスは、1mm以上の固形異物や水の飛沫の侵入に対して保護されていなければなりません。粒子や水分に対する侵入保護は、IPコードで表現されます(表1)。侵入保護試験は、デバイスに保護カバーがない状態で実施する必要があります。後述するように、ユーザーが交換できない長寿命バッテリを搭載したデバイスには、IP67規格の防水設計が必要になります。
表1:最低限必要な侵入保護性能は、1mm以上の粒子と水の飛沫に対するものです。(表提供:ec.europa.eu)
バッテリおよびバッテリ管理:エコデザイン規格では、バッテリに対し、使用可能な容量が公称定格の80%に達するまで連続的に充電/放電サイクルを繰り返す試験を行うことが求められます。ライフサイクルテストでは、デバイスのデフォルトの充電アルゴリズムが使用されます。サイクル数は、十の位以下を切り捨てます。たとえば、524サイクル後に定格容量の80%になるバッテリは、500サイクルの定格となります。
すべてのデバイスは、少なくとも500サイクルのバッテリ寿命を持つことが要求されます。ユーザーがバッテリに異常がないかどうかを随時確認し、容量劣化が激しい場合はバッテリを交換できるようにしておく必要があります。ただし、1000サイクル以上の寿命とIP67規格の防水性能を持つバッテリを搭載したスマートフォンは例外です。この場合、ユーザーがバッテリを交換できなくても構いません。ただし、これらのスマートフォンに搭載するバッテリは、専門の技術者が交換できるものでなければなりません。
バッテリ管理の要件は、次のとおりです。
- これらのデバイスは、バッテリがフル充電の80%に達した時点で充電を終了する、ユーザーが制御可能な充電機能を備えていなければなりません。
- これらのデバイスには、充電レベルが定格容量の95%未満に低下しない限り、完全に充電されたバッテリに電力が供給されないようにするデフォルト設定が含まれていなければなりません。ユーザーがこの設定を無効にできるオプションが必要です。
新しいエコデザイン指令で求められるバッテリのライフサイクル要件を満たすには、適切な電源管理に加え、低消費電力も重要な要素となります。
より多くのメモリ帯域幅、より少ない消費電力
低消費電力はもちろん、エネルギー効率の高い部品を用いて実現できます。手始めに、モバイル端末用のLPDDR5ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)に目を向けてみましょう。Micron TechnologyのMT62F1G64D8CH-031のようなデバイスは、前世代のメモリデバイスと比較して、20%も電力効率が向上しています。このDRAMは、5Gスマートフォンの主要要件である最大6.4ギガビット/秒(Gbit/s)のピーク速度でのデータ処理に対応し、従来のDRAM設計よりも50%高速化されています。
図1:MT62F1G64D8CH-031などのLPDDR5メモリデバイスは、前世代のデバイスに比べて電力効率が20%向上しています。(画像提供:Micron Technology)
電源管理IC
Texas InstrumentsのPMICであるLP8758Aは、スマートフォンやタブレットに搭載されるプロセッサの消費電力を最適化することができます。独立した降圧DC/DCコンバータから4つの出力電圧を供給し、I2Cシリアルインターフェースで制御することが可能です。LP8758Aは、パルス幅変調(PWM)とパルス周波数変調(PFM)を自動的に切り替えて、広い出力電流範囲で効率を最大化します(図2)。消費電力を効率的に監視できるように、LP8758Aでは、外付けの電流センス抵抗を使用せずに負荷電流を測定できるようになっています。
図2:LP8758A PMICは、幅広い出力電流範囲で高効率を実現します。(画像提供:Texas Instruments)
アンテナのチューニング
スマートフォンやタブレットコンピュータのエネルギー効率には、効率的なRF信号チェーンも重要な要素となります。Infineon TechnologiesのBGSC2341ML10は、同調可能なインピーダンスマッチング、同調可能なフィルタリング、アンテナチューニングなどのRFチューニングアプリケーション向けに設計されています。このICは、8段階で同調可能なコンデンサと低オン抵抗の単極双投(SPDT)RFスイッチを集積しており、モバイルインダストリプロセッサインターフェース(MIPI)2.1のRFフロントエンド(RFFE)プロトコルによって制御されます(図3)。
図3:BGSC2341ML10には、同調可能なコンデンサ(C1)とSPDT RFスイッチ(SW1とSW2)が搭載されています。(画像提供:Infineon Technologies)
まとめ
スマートフォンやタブレットの新しいエコデザイン要件が2024年にEUから発表されるため、今がその準備を行う時期となります。また、持続可能性と修理可能性を考慮し、家電製品に現在表示されているものと同様のエネルギー効率表示も盛り込まれます。上述のように、次世代システムの厳しい低消費電力要件に応えるために、設計者は容易に入手できる先進のLPDDR5 DRAMメモリ、PMIC、アンテナチューニングICを利用できるのです。
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