今こそLDOから小型スイッチングレギュレータに移行すべきか?

認めましょう。スイッチングレギュレータが大いに注目されていても、私には心情的的に(そして頭の中でも)低ドロップアウトレギュレータ(LDO)に弱い面があります。いくつかある理由のうち特に重要なのは、LDOは1つのことを実行し、しかもうまく簡単にこなすことです。こちらを悩ませたり、仰天させたりすることはありません。それに、私が初めて使ったパワーレギュレーションデバイスはLDOでした。当時、作ろうとしていたのは実回路だったので、LDOで十分でした。今でも、電圧が数ボルトで電流が1アンペア程度のレールが必要な場合、私の頭に最初に浮かぶのは基本的な3端子のLDOであり、スイッチングレギュレータ(別名スイッチャ)ではありません。

一般に、スイッチャと比べるとLDOの方が効率的に劣るのは周知のとおりですが、1アンペア程度の低い電流レベルの場合、その差異はわずかであり、特定の設計では大きな問題になりません。数アンペアを超える場合は、一般に差異が大きくなるため、超低ノイズのレールが必要でない限り、LDOは賢明な選択とは言えなくなります。そのような場合、スイッチャの中には、非常に性能が良く、極めて低ノイズのものがあります。また、両者の間に特定のタイプのLDOを低オームの「ブリーダ」抵抗器と並列接続して、電流消費を均等化することができますが、この方法はレイアウト、フットプリント、BOM、性能の定量化の面で複雑になる可能性があります。

それでも、LDOは技術者のBOMの選択肢として必要不可欠なコンポーネントなのです。LDOはとても簡単に使用できるため、多くの設計者が、ICまたはサブ回路の近くで制御が必要な場合にいつでも、LDOをプリント回路基板の周囲にポップコーンのように「ちりばめて」います。こうすることで、電源レールのIRの低下とノイズピックアップに加えて、電源がその負荷から離れた場所に配置された場合に生じるその他の不具合を最小化することができます。

されど時代は変わりゆく

とはいえ、私は、このようにしてLDOを基本的なデザインインに使用する機会が失われつつあるのではないかと思い始めています。カプセル封止低電流スイッチングレギュレータは、シンプルさ、サイズ、必要な(必要でない場合もある)外部受動部品、およびデザインインの総合的な簡便さの点で、LDOに匹敵する属性が備わってきました。回路内のこれらのカプセル封止スイッチとLDOの「ブラックボックス」的な面を見てみると、1アンペアのLDOと、複数アンペアのカプセル封止スイッチャとの違いを区別することは容易ではありません。

また、LDOは下方制御(降圧)しかできませんが、降圧、昇圧、さらにはこの2つのモード間でのシームレスな移行が可能な降圧/昇圧スイッチャも存在します。それはまさに重要な機能です。なぜなら多くの回路は単一のLiイオンセルから動作し、完全に充電された状態から、ある程度放電された状態まで、バッテリを制御するために降圧/昇圧モードが必要になるからです。

実例(証拠)を見せろ

Analog DevicesのSilent Switcher µModuleレギュレータ、LTM8074(LTM8074EY#PBF)について見てみましょう(図1)。このレギュレータは広い入力電圧範囲(3.2~40ボルト)と広い出力電圧範囲(0.8~12 ボルト)を備えていて、連続的に1.2アンペアを供給し(24ボルトの入力および5ボルトの出力時)、3.3ボルトの出力の状態で1.75アンペアのピーク出力電流に到達します。しかし、真に注目すべきはそのサイズの小ささです。このBGAデバイスの寸法は、わずか4mm × 4mm ×1.82(高さ)mmです。

図1:LTM8074は、フットプリントの小さい使いやすいスイッチングレギュレータで、モジュールにもその回路全体にも適しています。(画像提供:Analog Devices)

動作させるのに必要なのは、2つのコンデンサ(1µFおよび10 µF)と2つのレジスタのみです。そのため、同等なLDOのように簡単にドロップインして使用でき、しかも小さなフットプリントでさらに優れたパワーを発揮します。通常はスイッチャから想起されるインダクタはパッケージに組み込まれているため、設計者の視点からはBOMに含まれていないことになり、追加のスペースも必要ありません。さらに、EMIエミッションは極めて低く、LDOのEMIエミッションに匹敵します(図2)。

図2:LTM8074(DC2753Aデモボード上)のCISPR22規格クラスBのエミッション。VOUT = 3.3ボルト、アンペア負荷1.2、EMIフィルタなし。(画像提供:Analog Devices)

Texas Instrumentsは、LDOと類似した機能を持つ小さなスイッチングモジュールとして使用できるLMZ10501(LMZ10501SILR)を提供しています。これは1アンペアのナノモジュールで、入力電圧範囲は2.7~5.5ボルト、出力電圧範囲は0.6~3.6ボルトです(図3)。

図3:Texas InstrumentsのLMZ10501。3.00mm × 2.60mmのパッケージで提供されます(インダクタ込み)。このモジュールが機能する上で外部的に必要になるのは、3つのセラミックコンデンサと2つのレジスタのみです。(画像提供:Texas Instruments)

LMZ20501が必要とするのは、3つのセラミックコンデンサと2つのレジスタのみです。わずか3.00mm × 2.60mmの8ピンのmicroSiPパッケージにはインダクタも統合されています(図4)。1つ確実に言えるのは、これは標準的なICとは外見がまったく異なることです。

図4:Texas Instruments LMZ10501のインダクタは、ナノモジュールの物理設計に必要不可欠な部品であり、スペースとBOMを節約します。(画像提供:Texas Instruments)

これらの小型のスイッチャは、低電流範囲でも、LDOに強く対抗できます。後者は低電流範囲では、長い間、サイズと使いやすさの点で優位でした。たとえば、Maxim Integrated MAXM15462は非常に効率の高い同期整流式降圧DC/DCモジュールであり、統合型コントローラ、MOSFET、補償部品、および広い入力電圧範囲で稼働するインダクタを備えています(図5)。このモジュールは4.5~42ボルトの入力を受け入れ、0.9~5ボルトのプログラム可能な出力電圧にわたって最大300ミリアンペア(mA)の出力電流を提供します。また、その小型の2.6mm × 3mm × 1.5mm uSLIC™パッケージの横に、3つのコンデンサ(1 µFの2つのコンデンサおよび10 µFの1つのコンデンサ)と2つのレジスタが必要です。

図5:Maxim IntegratedのMAXM15462 300 mAの出力スイッチングレギュレータは、サイズの面で低電流LDOにも対抗できます。(画像提供:Maxim Integrated)。

こうした小型のスイッチャの利点は、同程度の性能のLDOよりもさらに小さく、効率が高いことです。選択したデバイスによっては、入力突入電流を軽減するためのソフトスタートや、「パワーグッド」出力ピン、プログラム可能な不足電圧ロックアウト(UVLO)閾値など、優れた(場合によっては必須の)機能が組み込まれています。

ついに前進...かな?

技術の進歩の恩恵を受けるには、これまでの好みを捨てなければならない場合があります。私は、新製品の設計で、設計者たちが20年前のオペアンプを指定するのを見たことがあります。設計者たちが、そのオペアンプの特性に慣れ親しんでいることが主な理由でした。ある意味でそれは賢明な方策なのでしょうが、それと引き換えに、最終設計の性能向上、低価格化、小型化などの実現の機会を失う可能性があります。

LDOなどのパワーレギュレータは、今でも毎年膨大な数のレベルで新しいデザインインに使用されている可能性があります。しかし、強化された性能、優れた動作、使いやすさ、効率性などの点では、低電力のスイッチングレギュレータの方が実現できることが多く、しかもパッケージは小型です。たとえ最初にBOMで選択したくなるのが慣れ親しんだLDOであったとしても、こうしたレギュレータを少なくとも検討しないというのは、プロフェッショナルとしては怠慢でしょう。

さて、私はこのあたりで自分の車のキャブレターを点検してきます。ニードル弁を掃除しないといけないし、フロートの位置もずれているようなので。

著者について

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エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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