適切なEV充電ケーブルを使用し、安全性と信頼性を確保しながらユーザーに快適さを提供
普通の人は、小型および中型の電気コネクタの抜き差しをとても安心して行います。携帯電話や多種多様な他のデバイス向けの保護されていないUSB、RF同軸、HDMI、その他の小型低電圧コネクタの抜き差しに抵抗を感じることもありません。また、完全に露出した「バレル」コネクタをAC/DCアダプタ(壁のコンセントに直接差し込むタイプ)と組み合わせて使用し、デバイスを充電してきました。これらはすべて低電圧、低電力のコネクタであるため、ユーザーに対する危険はありません。
電圧が高くても、ほとんどの消費者が必要に応じてACラインコード(120/240V)を差し込むことには何の問題もありませんが、低電圧コネクタに比べればその頻度は多くありません。人々は、これらのACコネクタが完全に密閉されておらず、プラグのブレードが多少露出しており、絶縁やコネクタ本体が古くてひび割れしていることが多いため、それなりの注意を払って使用することを学んできました。
実際、感電による死亡者や負傷者が少ないのは驚くべきことです。アメリカ国立医学図書館/国立衛生研究所の報告書(電撃傷)1によると、米国では電撃傷が原因で年間約1000人が死亡しています。このうち約400件は高圧電気によるもので、雷によるものが50~300件です。また、死亡に至らない感電事故が年間3万件以上発生しており、米国では、火傷で入院する全患者数の約5%は電撃傷が原因です。
電撃傷の約20%は、幼児や若者を含む未成年者で発生しており、そのほとんどが家庭で発生しています。成人の場合、これらの傷害は主に職業環境で発生しており、職場に関連した外傷死の4番目に多い原因となっています。良いニュースは、火傷やさらに悪い結果を伴う「自宅での」感電がかなり稀だということです。要するに、人々はACライン電圧が潜在的に危険であることを知っているため、ACラインのコードやプラグの取り扱いには相応の注意を払うということです。このような身近さとそれに伴う安全性は、電気自動車(EV)のユーザーエクスペリエンスの一部となる必要があります。
EV充電がもたらす身近さと安全性への懸念
EVの普及に伴い、一般消費者は、より高いレベルの電圧、電流、電力(最大250kW)および関連するコネクタやケーブルアセンブリを安心して使用できるようになると予想されます。一部のEVユーザーは、120/240VのAC(VAC)ラインを使用して「夜間に自宅で」充電することを計画しますが、多くの人は、はるかに速い充電時間と高い効率を活用するために、より高出力のレベル2 DC充電器も自宅に設置するでしょう。また、ユーザーは間違いなく、路上の公共充電ステーションでレベル2充電器を使用するはずです。これらのユーザーは、接続/切断プロセスがシンプルで信頼でき、内燃機関(ICE)用のガスやディーゼルと同様の燃料補給手順であることを期待しています(図1)。
図1:ユーザーに対するEVの快適性要因の確立には、充電器の接続と切断の手順を一般的なICE車と似たものにすることが含まれます(画像提供:Phoenix Contact)
これらの充電器には、使いやすさ、ガス/ディーゼルのフォームファクタとの密接な類似性、大きな電気容量、電気的および熱的安全性、乱暴な扱いに対する耐性を含む全体的な堅牢性などに関する困難な目標を満たすようなケーブルとコネクタの配置が必要になります。
業界で実際に使用されている「ケーブル」という用語が、コネクタおよびそのケーブルを指していることは注目に値します。それは、この2つが異なる2つのサブアセンブリとしてではなく、シームレスに統合された1つのユニットとして提供されるためなのです。
課題点を明らかにするコネクタとケーブルの例
ACラインのコネクタとケーブルは、適度な電気的および機械的要件を満たす必要があります。これらは、家庭用テーブルランプに使用するような2線式のシンプルな非接地プラグから、家電製品用の3線式の高信頼性接地プラグまで多岐にわたります。これらには、ソリッドなモールドケーブルとコネクタハウジングが付属しています。
対照的に、EVのプラグでは、はるかに高い電流と電圧に対応し、周囲の状況や自己発熱による内部温度の上昇を感知し、ユーザーによる使用や酷使(地面に落としたり、轢いたり、水たまりや泥の中に放置したりするなど)に耐え、なおかつ保護されていない環境において、極めて高いレベルの電気的、機械的完全性を提供する必要があります。さまざまな状況の中では、車両が部分的に水中に入った状態でユーザーが充電を試みる(そして成功する)可能性もあります(図2)。
図2:推奨されませんが、それでも機能します。EV充電ステーションは、非常に濡れた状態でも安全に充電できるよう、複数の保護レベルを備えています。(画像提供:Sun/News Group Newspapers/UK)
Phoenix Contactの電気自動車用CCS C-Line DC充電ケーブル(コネクタを含む)のファミリが示すように、これらすべてを行うのは容易ではありませんが、実行可能です。このファミリは2つの類似グループで構成されますが、明確な違いもあります。1つは個別のロッククリップを備えた北米向けのタイプ1(SAE J1772)で、もう1つは欧州向けのタイプ2(IEC 62196-3)です(図3)。これら2つのグループは、仕様も外見も若干異なります。
図3:北米向け(左)と欧州向け(右)のCCS C-Line DC充電コネクタは、同様の機能を提供しますが、フォームファクタが若干異なります。(画像提供:Phoenix Contact)
CCS C-Line DC充電ケーブルは、CCS規格に準拠して設計された固有の軽量コネクタを備え、取り扱いや保管が容易な小型フォームファクタで提供されます。これらのケーブルは、高い充電電力を必要とせず、ACよりもDC充電が好まれる場所で使用するために製作されました。それらは、個人住宅、集合住宅、駐車場、企業などで使用されるのです。最大80Aの充電電流を備えたCCS C-Lineケーブルは、AC充電ケーブルと比較して、より高レベルの機能と充電時間の短縮をもたらします。
主な市場は、EVサービス機器(EVSE)メーカーおよび車両フリートオペレータ向けです。タイプ1とタイプ2の両グループ内には、関連する電流容量に応じて6AWGまたは10AWGのワイヤを選択できるさまざまな製品があり、ケーブル長は4~7mです。
ユーザーは、プラスとマイナスのDC電源端子(DC+とDC-)、保護アース(PE)、挿入後の信号コンタクト(CSとCP)など、コネクタのコンタクトの回路図や機能割り当てを気にしていません(図4)。
図4:CCS C-Lineコネクタの重要なコンタクトは、プラスとマイナスのDC電源端子(DC+とDC-)、保護アース(PE)、挿入後の信号コンタクト(CSとCP)です。(画像提供:Phoenix Contact)
その代わりに、彼らが気にするのは、昔ながらの「ピストルグリップ」でガス/ディーゼル用のポンプハンドルアセンブリを彷彿とさせる、親しみやすい外観と感触を備えた快適なフォームファクタです(図5)。
図5:使用時、CCS充電プラグを使用したDCアセンブリには、ガス/ディーゼルのタンク補給プロセスのような安心感を与える親しみやすさがあります。(画像提供:Phoenix Contact)
しかし、CCSのEV充電を成功させるために必要な多くの技術的特長は、ユーザーには見せないか、意識させない必要があります。以下の特長は、図6の丸で囲んだ数字と対応しています。
図6:CCS C-Lineコネクタは、(ラベルやロゴがない限り)ユーザーが気づかない場合もありますが、適切で、効果的で、信頼性が高く、安全な操作に不可欠な6つの主要な技術的、性能的特長と機能を備えています。(画像提供:Phoenix Contact、ビル・シュウェーバー氏による修正あり)
1)組み込み温度センサ技術:電源端子で直接正確な温度測定を行うことで、過熱時に充電プロセスを中断し、ユーザーを危険から、充電ステーションを損傷から保護することができます。
2)銀メッキコンタクト:電源端子と信号コンタクトの銀メッキ表面は、効率的な電力伝送、最適な腐食保護、長い耐用年数を保証します。
3)個別のロゴ:Phoenix Contactロゴの代わりに、UV耐性および耐候性プラスチックラベルに印刷したカスタムロゴを充電コネクタに添付できます。
4)人間工学的ハンドルを備えた小型設計:人間工学に基づいた形状のグリップゾーンは、扱いやすさと心地よい手触りを保証します。さらに、小型設計により、充電ステーションと充電コネクタは全体的に調和のとれた外観となります。
5)賢明なシーリング概念:洗練されたシーリング概念により、連続的かつ長期的な水密性を確保し、充電コネクタやケーブルへの水分の浸入を防ぎます。
6)DIN EN 50620に準拠して設計されたケーブル:特に堅牢なVDE認定の充電ケーブルは、絶縁の厚さ、材料の柔軟性などの特性に関して、e-モビリティ用途で使用するために特別設計されています。
まとめ
EVのDC充電には、厳しい電気的および機械的性能基準を満たすコネクタとケーブルアセンブリが必要です。同時に、消費者に役立つ外観、感触、動作および、全体的な快適さも備えている必要があります。Phoenix Contactが提供するタイプ1およびタイプ2のCCS C-Line DC充電ケーブルは、これらの要件を満たし、さまざまな最終設計要件に対応する複数のバージョンで入手可能です。
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1:コンパクトなCCSケーブルでレベル2の高速DC充電を実現
https://www.digikey.jp/ja/articles/compact-ccs-cables-provide-level-2-fast-dc-charging
2:総合的なEV充電インフラを支えるさまざまなコネクタの採用方法について
https://www.digikey.jp/ja/articles/how-to-employ-a-connectors-for-ev-charging-infrastructure
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