コンパクトなCCSケーブルでレベル2の高速DC充電を実現
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-10-18
電気自動車(EV)につきまとう「航続距離の不安」を解消するには、便利で信頼性の高い充電が必要とされています。このようなニーズに対応するため、EVサービス機器(EVSE)インフラの設計者に必要となるものは、最大80A(アンペア)まで供給可能な中出力レベル2の直流高速充電器(住宅・商業施設・小売店用)、最大500A DCまで供給可能な高出力レベル3の超高速充電器、および低出力レベル1の交流充電器(夜間・緊急充電用)など、多様な充電オプションです。
しかし、EVのDC充電は複雑です。EVSEでは、コネクタのロック、システムの絶縁、充電電圧、充電電流、コネクタの温度などを継続的に監視する必要があります。これらのパラメータのいずれかが設定された制限から外れると、EVSEは停止します。また、レベル2 DC充電器用のコンパクトなケーブルとコネクタにおいて、長期的な機械的・電気的完全性の設計・組み立て・保証は、困難なことです。レベル2のケーブルには、+DC、-DC、通信、ロックモニタ、保護接地の5本の導線が含まれています。これらの導体は、一端でEVSEに、他端で小型充電システム(compact charging system:CCS。複合充電システム(combined charging system)のCCSとは異なる)コネクタに確実に接続する必要があります。これらの接続のいずれかが不良な場合に、EVSEを確実に動作させるには、高コストで時間のかかる手直しが必要になる恐れがあります。
設計者がレベル2 EVSEのCCSコネクタ & ケーブルの組み立て(アセンブリ)に関する懸念を解消するには、ケーブルが付属した組み立て済みの小型CCSコネクタを使用します。これらのケーブルとコネクタのアセンブリは、レベル3の充電が必要とされないもののレベル1よりも高速なレベル2が好ましい場所で使用することを想定して設計されています。これらのケーブルは、北米向けのタイプ1と欧州向けのタイプ2があります。タイプ1はUL2251の要件を満たしています。
そこで、本稿では、ACとDCのCCSコネクタ & ケーブル間の違いを確認するとともに、レベル2とレベル3のDC CCSコネクタ同士をサイズと利便性の観点から比較します。また、中出力CCSケーブルアセンブリのいくつかのユースケースについて説明し、Phoenix Contactのタイプ1およびタイプ2 CCS小型ケーブルアセンブリを紹介して、設置に関する推奨事項を示します。
ACのEV充電用ケーブルとDCのEV充電用ケーブルの違い
CCSの標準的な充電インレットは、ACとDCの両方の充電コネクタに対応するように設計されており、EV設計の簡素化および自由度を提供します。AC充電は元々、消費電力が少なく、プラグ式のコネクタを両端に持つケーブルを使用します(図1)。AC充電よりも高い電力レベルで動作するDC充電では、充電ケーブルは、一端が常にEVSEに接続され、他端が自動車のレセプタクルに挿入されるコネクタになっています。さらに、DCコネクタには、ロック機構や温度監視など、ACコネクタにはない安全機能が搭載されています。
図1:DC充電用のケーブルがEVSEには常設されており、EVのレセプタクルに差し込まれます。AC充電用のケーブルは、両端にプラグが付いています。(画像提供:Phoenix Contact)
250kW(キロワット)までのレベル3とレベル2のDC充電用CCSコネクタは、サイズが同じため、一般的な車両インレットで使用することが可能です。レベル3がレベル2と大きく違ってくるのは、250kW定格のユニットで、より高い出力レベルを伝送するためにケーブル直径が約50%増加し、それに伴いケーブル重量も増加することです。最大定格が80kWであるレベル2のコネクタ & ケーブルアセンブリは、ケーブルがレベル3よりもはるかに小さくなるため、大幅に軽量で、取り扱いも容易になります。最大500kW以上の高出力DC充電には、液体冷却に対応した別の車両インレットと、より大きいコネクタやケーブルが必要です(表1)。
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表1:80kW、250kW、500kW定格のDC充電器に対応したタイプ2 CCSコネクタ & ケーブルのサイズ比較(画像提供:Phoenix Contact)
CCSのDC充電用コネクタシステムには、ユーザーの安全とEVSEの正常な動作を保証するために、ロック機構が組み込まれています。このロックは高い引き抜き力に耐えるように設計されているため、EVの充電中にコネクタを取り外すことはほぼ不可能です。タイプ1のコネクタのロック機構は、図2に示すように、手動クリップです。タイプ2のコネクタでは、ロックは電磁気的に制御されるメタルボルトを使用して行われます。いずれの場合も、ロック機構が監視され、その状態が専用回線を介してEVSEに伝達されます。
図2:タイプ1のCCSコネクタには、手動で操作するロッククリップが付いています。(画像提供:Phoenix Contact)
CCSのDC充電用コネクタには、温度センサを搭載することが必須になっています。電源端子で直接、温度を正確に監視することで、過熱時に充電プロセスを停止または減速させ、ユーザーを危険から、EVSEを損傷から守ります。これらのコネクタには、PT1000センサが各端子に1個ずつ、計2個搭載されています(図3)。これらのセンサは、温度の上昇に比例して抵抗値が増加するため、温度の監視が容易になります。温度は、ケーブル内の信号ラインを通じてEVSEに伝達されます。
図3:動作温度を監視し、安全な充電を保証するため、CCSコネクタの端子にはPT1000温度センサを搭載することが必須になっています。(画像提供:Phoenix Contact)
しっかりした接続
接続の中でも、CCSコネクタ内の接続は、特にしっかりと行う必要があります。EVSE内の接続部には大きな機械的応力はかかりませんが、CCSコネクタは定期的に脱着が行われ、ケーブル接続部には繰り返し応力がかかることになります(図4)。コネクタケーブルが適切に取り付けられていない場合、抵抗が増加したりケーブルが外れたりするという形で接点劣化が起こるため、1つまたは複数の導体で過熱が起きたり接続が瞬間的に失われたりする可能性があります。コネクタケーブルの組み立てが不適切な場合、充電システムの信頼性低下、ユーザーの不満、EVSEメーカーの保証費用負担が発生する可能性があります。
図4: 中出力のDC充電用コネクタは小型であるため、ケーブル接続の安定性と信頼性を保証することが困難です。(画像提供:Phoenix Contact)
レベル2のユースケース
レベル2のDC充電は、「AC充電で賄える以上の電力が必要ではあるが、より高速なレベル3の充電までは必要ないケース」が増えてくれば普及するものと予想されます。この小型コネクタを使用したEVSEは、CCS規格に適合しており、小型化により利便性と使いやすさが向上しています。これらのEVSEは、以下のようなさまざまな用途で使用されることが予想されます。
郊外の住宅:レベル2 DC充電器は、AC 240ボルト(240 VAC)の電源を使用し、EVによっては、基本的なレベル1のAC充電器よりも3~7倍速くバッテリパックを充電することができます。もう一つのメリットとしては、ソーラーパネルを設置している家庭において、レベル2のDC充電器がソーラーパネルから直接DC電力を伝送できるため、変換時の電力損失をなくすこともできます。今後、V2G(vehicle-to-grid:車からグリッドへの給電) やV2H(vehicle-to-home:車から家への給電)システムの普及に伴い、車から家やグリッドへの電力の逆流を管理する双方向のレベル2充電器が登場するでしょう。
集合住宅や都市部:居住者や来訪者のためにレベル2のDC充電器を提供する集合住宅やマンションが増えています。また、都市部の住宅地におけるいわゆる「路上充電」は、車庫がない場合に、路上駐車している車に充電器を提供するものです。いずれの場合も、充電器は、EVSEのオーナーには収入をもたらし、近隣のEV所有者には利便性をもたらすことができます。
車が集まる公共の場:レベル2のDC充電器は、ショッピングセンターや娯楽施設、学校や大学、駐車場、スポーツ競技場、ガソリンスタンド、修理工場など、さまざまな公共の場に設置されることが多くなっています。EVの販売台数の増加に伴い、レベル2のDC充電器もカーディーラーで見かけるようになりました。これらの充電器は、顧客に納車する前に完全に充電するため、また、修理用に預かった電気自動車を充電するために使用されます。
レベル2のDCコネクタソリューション
最大80Aの充電電流が必要な場合、EVSEの設計者には、Phoenix Contactの軽量なCCS C-Line DC充電用コネクタ & ケーブルアセンブリをご利用いただけます。このアセンブリには、タイプ1およびタイプ2のアプリケーションに対応したさまざまなケーブル長が用意されています。たとえば、充電ケーブル1236308はタイプ1のコネクタと長さ4m(メートル)のケーブルを備え、充電ケーブル1236966はタイプ2のコネクタと長さ7mのケーブルを備えています。これらの人間工学的コネクタは、あらゆるCCS規格を満たしており、小型で、さまざまな低電力充電アプリケーションでの迅速な接続と切断を可能にします(図5)。ご希望により、企業ロゴを付けてEVSEをブランディングすることも可能です。サイズは小さいですが、高性能であり、以下の特長があります。
- 銀メッキ端子により、最適な性能と信頼性を実現
- CCS規格に従って、電源端子の温度を監視するセンサ、およびロック機構を搭載
- DIN EN 50620に準拠。さらに、EVSEとEVを接続する際、過酷な環境下で使用できるよう、最大750ボルトの定格を持つ押し出し絶縁 & シースを採用
- 自動車部品の規格IATF 16949とISO 9001の要件への適合性
図5:CCS C-Lineコネクタの人間工学的な形状と軽量なケーブルは、取り扱いが容易で便利です。(画像提供:Phoenix Contact)
EVSEの組み込み
設計者がEVSEにC-Lineケーブルアセンブリを組み込むことができるように、Phoenix Contactではコネクタホルダとケーブルグランドを設計者に提供しています。つまり、タイプ1のコネクタ用には1624143コネクタホルダと1424483ケーブルグランドを、タイプの2コネクタ用には1624153コネクタホルダと1411134ケーブルグランドを提供しています。EVSEの側面や前面にコネクタホルダを設置することで、コネクタを使用していないときに安全に保管することができます。コネクタは所定の位置にロックされますが、簡単に取り外すことができます。ホルダは、0°~45°の前傾角度で取り付けることができる柔軟性があります。ケーブルグランドを使用することで、EVSEの外壁を通るケーブルを保護し、ユーザーがケーブルを引っ張った場合の損傷から守り、EVSE内への汚れや水分の侵入を防ぐことができます。
図6:CCS C-Line コネクタ & ケーブルアセンブリのEVSEへの組み込みを容易にするタイプ2コネクタ用コネクタホルダ(左) & ケーブルグランド(右)(画像提供:Phoenix Contact)
まとめ
レベル2のDC充電は、低出力のレベル1充電に代わる価値ある充電方法です。ただし、DC充電のケーブルとコネクタの設計には、性能、安全性、規制など多くの課題があります。ご説明してきたように、レベル2充電に市販のケーブル/コネクタアセンブリを使用することで、設計者はこれらの課題の多くに迅速に対応できるようになるだけでなく、軽量化や人間工学に基づいた設計など、大幅に使いやすくなるようなメリットも得ることができます。
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