便利な機能が多い電子ヒューズのご紹介

従来のサーマルヒューズには、非常に具体的で満足できるものがあります。過電流フォールト状態が発生した場合、電流の流れを恒久的にゼロにカットします。これを上手く確実に行い、電流を監視している回路の一部である間、問題を起こしません。また、目視でまたは抵抗計を使用して簡単に確認できます(図1)。

図1:従来のサーマルヒューズの状態は簡単に確認できます。多くの場合、目視で確認できますが、それができない場合は簡単で明確な導通テストに抵抗計を使用することができます。(画像提供:Wololo.net)

数え切れないほどの多くのサーマルヒューズが、下流のコンポーネントの損傷から火災の発生まで、さまざまな障害に対する最初の、あるいは最後の防御線として日常的に使用されています。おそらくこのようなヒュージブルリンクデバイスを好む理由は、昔とのつながりを感じさせるからかもしれません。加熱と溶断は、人類が火を起こし始めた石器時代を思い起こさせるでしょう。あるいは、ソースや負荷を損傷から救うために無私の犠牲を払うような高貴さが好きなのかもしれません。

理由が何であれ、時代が変わり、技術が進歩し、アプリケーションが変化するのが現実です。したがって、従来のサーマルヒューズでも、現代の設計ニーズを満たすために必要なヒューズ関連の機能と特長のすべてを提供することはできません。eFuseまたはe-Fuseとも表記される電子ヒューズは、従来のサーマルヒューズにはない独自の機能を備えており、サブ回路や機能の保護に大きな役割を果たすようになってきています。しかし、これを使用するには、多くの場合、設計者側のヒューズの「考え方」を変える必要があります。

電子ヒューズとは?

サーマルヒューズと電子ヒューズはともに「ヒューズ」という言葉を含んでいますが、動作原理は大きく異なります。サーマルヒューズの原理はシンプルです。電流はI2R放散を介してヒュージブルリンクを加熱し、その電流が大きくなりすぎるとヒュージブルリンクを溶断します。この溶断作用の速度と電流経路が開く速度は、過大電流がどれくらい流れるか、どれくらいの時間流れるかによって決まります。

電子ヒューズでは、負荷への電流はFETを通過し、専用の電流センサがセンス抵抗の電圧を監視して電流を測定します。センスされた電圧が閾値を超えると、FETはオフになり、電流の流れは停止します(FETのリーク電流を除く)。

サーマルヒューズと電子ヒューズは、このように動作原理が大きく異なるため、特性も非常に異なります。アプリケーションによっては、電子ヒューズの特性が利点となる場合もあれば欠点となる場合もあります。これらの特性には次のようなものがあります。

  • 超高速短絡保護:超高速短絡保護技術は、基本的なヒューズの役割をミリ秒またはマイクロ秒で提供し、これはサーマルヒューズよりもはるかに高速です。
  • 過電流保護値はかなり正確で、電子ヒューズに応じて、外付け抵抗を介してユーザーが設定するか、工場出荷時に設定します。これは、主に電流と時間の組み合わせに頼るサーマルヒューズよりも正確です。
  • 基本的なヒュージブルリンクデバイスとは異なり、標準的な電子ヒューズは過負荷が収まった後、自動的に電流の流れを再確立することができます。
  • 電子ヒューズは、電圧が瞬間的に上昇した場合に出力をクランプすることで、過大な電圧が負荷に印加されるのを防ぐこともできます。
  • 電子ヒューズの中には、追加の外部コンデンサを介して突入電流を抑制できるものもあります。コンデンサは、ターンオンのスルーレートを希望の値に設定します。

これらの特長と特性により、電子ヒューズはホットスワップコントローラや自動車のサブ回路などのアプリケーションに好適です。これらのアプリケーションでは、短時間の電流または電圧の過渡的なスパイクが発生し、損傷が起こる可能性があります。このスパイクは直ちに抑制する必要がありますが、過渡現象が収まると電流の流れは再開します。

基本的なコンポーネントから独自の電子ヒューズを作ることはできますし、実際にそれが行われています。しかし、よくあることですが、ICバージョンでは、DIYのディスクリートバージョンでは提供が難しい機能を追加しながら、より小型のパッケージで向上した一貫性のある性能を提供しています。基本的な電子ヒューズに必要なコンポーネントは原理的にはわずかですが、実際には、完全でより機能的な電子ヒューズ回路には、ダイオードや過渡電圧抑制(TVS)デバイスに加えて、抵抗やコンデンサが必要になることもあります。

たとえば、一般的で非常に有用な機能である逆電圧保護の追加は、望ましくない順方向ダイオード降下を使用した追加のダイオード、P-MOSFETを備えた理想ダイオード回路、またはサーマルヒューズとTVSダイオードを介して行うことができます(図2)。あるいは、Texas InstrumentsTPS26620が使用できます。このソリューションは設計上の問題が少なく、完全に特性化された優れた性能を提供します。ディスクリートバージョンよりも小型で、寸法はわずか3 x 3mmです。

図2:ディスクリート電子ヒューズは、(a)ダイオード、(b)P-MOSFET、(c)サーマルヒューズとTVSダイオード、または(d)TPS26620電子ヒューズを使用して実装することができます。(画像提供:Texas Instruments)

電子ヒューズを自作する際に、非常に慎重にならなければならない大きな理由がもう1つあります。それは正式な認証の要件です。すべてのサーマルヒューズは、保護に関する規制基準を満たしているため、製品の承認が容易になります。しかし、自作の電子ヒューズは、(電圧の関数である)沿面距離やクリアランスなどの要件を本質的に満たしているわけではありません。そのため、独自に認証を取得する必要があります。この認証取得には多くの労力がかかりますが、数多くの認証済み電子ヒューズの1つを使用することで、このような労力を回避できます。たとえば、最近発表されたToshiba Semiconductor and Storage Corp.TCKE805NL 5A電子ヒューズは、情報通信技術(ICT)およびオーディオ/ビデオ機器に向けたかなり新しいハザードベースの製品安全規格であるIEC62368-1の認証を受けています(図3)。

図3:ToshibaのTCKE805NLは、ICTおよびAV機器に向けた比較的新しいハザードベースの製品安全規格IEC62368-1に適合しています。(画像提供:Toshiba Semiconductor and Storage)

結論

広く使用されているサーマルリンクヒューズに電子ヒューズが完全に取って代わると考えるのは非現実的です。実際には、それぞれのタイプには明確な機能と利点があり、現代の回路設計やシステム設計で果たすべき役割が明確になっています。多くの設計者にとって、最適な選択肢は両方を使用することです。電子ヒューズは局所的に使用でき、一方、サーマルヒューズは電流レベルや電圧が高く、過大な電流の流れによる回路や安全上の危険性がある大規模なシステム機能のバックストップとして使用できます。

しかし、電子ヒューズを単独で、またはサーマルヒューズと組み合わせて使用するには、ヒューズのオプションを検討する際の考え方を変える必要があります。両タイプのヒューズの電流制限値の基本仕様を超えて、電子ヒューズを評価するためのパラメータはサーマルヒューズのパラメータとは大きく異なり、その状況で判断する必要があります。サーマルヒューズと電子ヒューズを併用すると、機能、特長、柔軟性、確実性の強力な組み合わせとなります。

参考記事:

「新しいIEC/UL IEC-62368消費者製品の安全要求事項を満たすには適切な電源が重要」

https://www.digikey.jp/ja/articles/techzone/2019/dec/the-right-power-supply-to-meet-the-new-iec-ul-iec-62368-safety-mandate

「ヒューズのチュートリアル」

https://www.digikey.jp/ja/articles/fuse-tutorial

その他の参照資料

Texas Instruments、SLVA862A、「Basics of eFuses」

http://www.ti.com/lit/pdf/slva862

Texas Instruments、「eFuse and hot swap controllers」

http://www.ti.com/power-management/power-switches/efuse-hotswap-controllers/overview.html

CUI Devices、「IEC 62368-1: An Introduction to the New Safety Standard for ICT and AV Equipment」

https://www.cui.com/catalog/resource/iec-62368-1-an-introduction-to-the-new-safety-standard-for-ict-and-av-equipment.pdf

TUV、「What You Need to Know about IEC 62368-1」

https://insights.tuv.com/blog/what-you-need-to-know-about-iec62368-1

Optimum Design Associates、「Clearance and Creepage Rules for PCB Assembly」

http://blog.optimumdesign.com/clearance-and-creepage-rules-for-pcb-assembly

著者について

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エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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