IO-Linkを使用してスマートファクトリアクチュエータの生産性を向上させる方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

効率性、安全性、生産性、および全体のコスト削減を実現するために、インダストリ4.0、または産業用モノのインターネット(IIoT)への移行が続いています。この取り組みの重要な要素が、デバイスのコネクティビティです。適切な通信規格を選択し、関連インターフェースや関連ソフトウェアを設計する必要があり、それらすべてがスマートファクトリの展開を遅らせる場合があるため、この取り組みは困難になる可能性があります。

産業用オートメーション向けシステムの設計者は、迅速かつコスト効率の良い展開を促進するために、標準的で信頼性が高く、効率的で、よりモジュール化されたアプローチを必要としています。

この問題に対処するために、スマートファクトリで実績のあるインターフェースであるIO-Linkを利用できます。IO-Linkは、双方向でポイントツーポイントのシングルドロップデジタル通信インターフェース(SDCI)であり、IEC 61131-2、IEC 61131-9(SDCI)、IO-Link 1.1.3を含む複数の規格で規定されています。

この記事では、スマートファクトリへの移行と、それが設計者にもたらす課題について簡単に説明します。その後、IO-Link動作の概要と、スマートファクトリの展開を簡素化する方法について説明します。Analog DevicesIO-Linkデバイスの例として、空気圧式アクチュエータの代替として使用して性能を強化できるスレーブデバイス、DC/DCコンバータを内蔵したスレーブデバイス、およびマスターデバイスを紹介します。また、IO-Linkを搭載した産業用アクチュエータを迅速に実現するためのリファレンス設計も紹介します。

スマートファクトリへの移行の簡素化

スマートファクトリへの移行に伴い、センサやアクチュエータのコミッショニング、監視、再構成を行うために、インテリジェンスをエッジに追加する簡単な方法の必要性が高まっています。IO-Linkの簡単な設置方法と双方向の通信機能は、エッジインテリジェンスの展開をサポートします。ある例では、IO-Linkによってセットアップ時間とコミッショニング時間が90%短縮されたと評価されています。

実際には、デバイスのセットアップや再構成を行うために、パラメータ設定をIO-Link経由でダウンロードできます。これにより、技術者の介入が不要になり、ダウンタイムが短縮されます。IO-Linkのスマート診断、エラー検出、データロギング機能を利用して、工場現場全体でリアルタイムの動作情報を収集し、ダウンタイムをさらに削減することができます。

IO-Linkシステムのアーキテクチャは、IO-LinkマスターとさまざまなIO-Linkデバイスの間のポイントツーポイント接続で構成されています。標準のM8またはM12コネクタと20mの3線または4線ケーブルの使用により、システムの設置が簡素化されます。IO-Linkマスターデバイスは通常4ポートまたは8ポートを搭載し、それぞれがIO-Linkデバイスに接続されます。各ポートは、標準入出力(SIO)モードまたは双方向通信モードで動作します。IO-Linkはポイントツーポイントのアーキテクチャであるため、フィールドバスではありませんが、フィールドバスや産業用Ethernetでの使用と互換性があり、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)やヒューマンマシンインターフェース(HMI)に接続することが可能です(図1)。

フィールドバスやIEEE産業用Ethernetネットワークと互換性があるIO-Linkの図図1:IO-Linkは、フィールドバスやIEEE産業用Ethernetネットワークと互換性があります。(画像提供:IO-Linkコミュニティ)

IO-LinkはSDCIモードで動作するだけでなく、バイナリセンサ用のIEC 60974-5-2規格との下位互換性も提供します。基本的なポイントツーポイント通信では、3線式インターフェース(L+、C/Q、L-)を使用します。IO-Linkモードでは、マスターデバイスとスレーブデバイス間の通信は双方向で、3つの伝送レート(COM1は4.8kbps、COM2は38.4kbps、COM3は230.4kbps)があります(図2)。IO-Linkマスターは、接続されているすべてのスレーブデバイスと通信できるように、3つのデータレートすべてに対応する必要があります。スレーブデバイスは、1つのデータレートにのみ対応します。通信は、C/Qラインでノンリターンゼロ(NRZ)符号化を使用し、24Vパルスによって行います。IO-Linkモードでは、ピン2をデジタル入力(DI)モード、デジタル出力(DO)モード、または接続されていない状態にすることができます。IO-Linkデバイス(センサまたはアクチュエータ)は、L+が18Vの閾値を超えた後、300ミリ秒(ms)以内に機能する必要があります。

双方向のIO-Link通信の図図2:IO-Link通信は双方向で、4.8、38.4、230.4kbpsに対応することが可能です。(画像提供:)

IO-Linkデバイスの説明

すべてのIO-Linkセンサとアクチュエータには、IODD(IO-Link device description)ファイルがあります(図3)。IODDは、IO-Linkマスターがデバイスを識別・設定し、そのデータを解釈するために必要なデータを提供するxmlファイルです。

  • IODDの内容は、以下の通りです。
    • 通信をサポートするために必要なプロパティ
    • デバイスパラメータ
    • 識別情報
    • プロセス情報と診断情報
    • デバイスの画像とメーカーのロゴ
  • IODDの構造は、IEC 61131-9とは別に概説されています。
  • IODDファイルの一元的なデータベースは、IO-Linkコンソーシアムによって管理されています。

IO-Linkマスターが必要とする情報を含んだxmlファイルであるIODDの図図3:IODDは、IO-Linkマスターが各スレーブデバイスを識別・設定し、それらと通信するために必要な情報を含むxmlファイルです。(画像提供:Analog Devices)

データリンクとデータタイプ

IO-Linkマスターとデバイス間のメッセージ交換は、データリンク(DL)層によって管理されます。メッセージは1~66ワードの長さのユニバーサル非同期レシーバ/トランスミッタ(UART)フレームで、「Mシーケンス」と呼ばれます。メッセージは、オンリクエストデータ、システム管理のリクエストやコマンド、および通常のプロセスデータに関連しています。マスターには、エラーやエラーメッセージを処理し、ウェイクアップ、SIO、COMレートなどの動作モードを管理するDLハンドラが含まれます。マスターがリクエストを送信すると、デバイスは応答することが要求されます。

IO-Link通信には、同期式と非同期式があります。IO-Linkのマスターやデバイスには、同期通信用のプロセスデータハンドラと、イベント、制御、パラメータ、インデックスサービスデータユニット(ISDU)データの非同期通信用のリクエスト時ハンドラがあります。非同期データはオンリクエストであり、以下が含まれます。

  • 構成またはメンテナンスの情報および制御
  • イベントトリガ、3段階の緊急度:
    • エラー
    • 警告
    • 通知
  • デバイスパラメータを直接読み取るためのページデータ
  • 大規模データ構造のためのサービスデータ

IO-Linkをマスターやデバイスに組み込むのは複雑な場合があります。デバイスの相互運用性とシステム動作の信頼性を確保するために、規格を完全に実装することが必要です。効率的で信頼性の高いIO-Link通信をスマートファクトリアクチュエータに迅速に組み込むために、設計者はマスターとデバイス向けに事前設計されたソリューションを使用することができます。IO-LinkデバイスコントローラICは、アクティブな逆極性保護を備えた超低電力ドライバを搭載しており、DC/DCコンバータ内蔵タイプと非内蔵タイプが用意されています。また、広範な診断機能をサポートするシリアルペリフェラルインターフェース(SPI)も搭載しています。デュアルチャンネルIO-LinkマスタートランシーバICは、低電力動作をサポートし、UARTおよび先入れ/先出し(FIFO)機能を備えたフレームハンドラを搭載することにより、マイクロコントローラ(MCU)の選択を簡素化します。

IO-Linkによる空気圧式アクチュエータの置き換え

IO-Linkは、空気圧式アクチュエータをサーボドライブや高度なデジタル制御に置き換えることで、プロセス制御への従来のアプローチを打ち破り、工場での動作を強化する簡単な方法を提供します。たとえば、設計者はMAXREFDES37# IO-Linkサーボドライブのリファレンス設計を使用して、市場投入までの時間を短縮することができます(図4)。このリファレンス設計は、5V電源を供給し、4つのパルス幅変調(PWM)出力に加え、最大4つのサーボモータを制御するための4つのデジタル入力を備えています。

このボードは、IO-Linkマスターに接続するためのM12-4コネクタを搭載しています。3ピンヘッダは、標準的な5Vサーボモータへの迅速な接続をサポートし、そのうちの1つは基本リファレンス設計に含まれています。5Vデジタル入力、パワーグランド、4つすべてのPWMチャンネルへの接続は、ポークインワイヤターミナルブロックを使用して行います。Technologie Management Gruppe Technologie und Engineering(TMG TE)のIO-Linkデバイススタックが搭載されています。MAXREFDES37#は、Windows PCを使用して簡単に検証できるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)プログラムを含むPmodフォームファクタのMAXREFDES277 2チャンネルIO-Linkマスターと組み合わせて使用できます。

Analog DevicesのMAXREFDES37# IO-Linkサーボドライブリファレンス設計の画像図4:MAXREFDES37#には、IO-Linkマスターに接続するためのM12コネクタ(左)があり、サーボモータ(右)が付属しています。(画像提供:Analog Devices)

MAXREFDES37#は、MAX14821ETG+T IO-LinkトランシーバICと、MAX17504ATP+T降圧レギュレータDC/DC ICを内蔵しています。MAX14821ETG+Tトランシーバは、IO-Linkデバイスと24ボルトのバイナリセンサまたはアクチュエータと一緒に使用できます。指定されたすべてのIO-Linkデータレートがサポートされ、C/QおよびDOドライバは最大100mAをソースまたはシンクすることが可能です。トランシーバは、マイクロコントローラユニット(MCU)とインターフェースするためのDL層プロトコルを実行します。センサやアクチュエータの電源として、2つの内蔵リニアレギュレータから5Vと3.3Vの直流電流(VDC)を供給し、24Vのデジタル入出力も搭載しています。DOドライバとC/Qドライバは、プッシュプル、ローサイド(NPN)、ハイサイド(PNP)動作で個別に構成できます。トランシーバは、SPIを介して構成したり、監視したりすることができます。

搭載されたMAX17504同期整流式降圧DC/DCコンバータは、4.5~60VDCの入力範囲で動作します。出力電圧範囲は0.9Vから入力電圧の90%までで、最大3.5Aの電流を供給します。安定化精度は、±1.1%(-40~+125℃)です。ピーク効率は90%以上、シャットダウン電流は2.8μAです。

マスターまたはDC/DC内蔵デバイス用のトランシーバ

IO-Linkのマスターやデバイスの設計者向けには、MAX22514があります。このトランシーバは、DC/DC降圧レギュレータ、2つのリニアレギュレータ、内蔵サージ保護などの高度な統合と、低い消費電力、ウェハーレベルパッケージ(WLP)(2.5mm x 2.6mm)または薄型クワッドフラットパック(TQFN)パッケージ(4mm x 5mm)の選択により、スペースに制限のある産業用IO-Linkアプリケーションによく適します(図5)。

たとえば、品番MAX22514AWA+がWLPにあります。そのSPIは構成や診断をサポートし、COM1、COM2、COM3のデータレートもサポートします。

高度に統合されたAnalog DevicesのMAX22514トランシーバの図図5:MAX22514トランシーバは高度に統合されており、IO-Linkのマスターやデバイスでの使用に適しています。(画像提供:Analog Devices)

開発期間を短縮するために、設計者はMAXREFDES278#のようなリファレンス設計を使用できます。これは、MAX22514 IO-Linkトランシーバをベースにした8チャンネルソレノイドアクチュエータのリファレンス設計で、電界効果トランジスタ(FET)を内蔵した1Aオクタル集積型シリアル制御ソレノイドドライバのMAX22200を実証しています。このリファレンス設計には、DC/DC降圧レギュレータが内蔵されています。また、MAX22514の機能を探索するためのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を提供するWindows互換のソフトウェアが含まれています。評価ボードとPCの接続には、USB-A~micro-Bケーブルを使用します。

デュアルチャンネルマスター

デュアルチャンネルのIO-Linkマスターが必要な場合、設計者は2つの補助デジタル入力チャンネルを含むMAX14819ATM+トランシーバを利用することができます。内蔵IO-Linkフレーマにより、外部UARTが不要になります。また、内蔵サイクルタイマにより、MCUはタイミングが重要なタスクを処理する必要がなくなります。このトランシーバは、MAX14931FAWE+およびMAX12930EASA+Tデジタルアイソレータと組み合わせて使用することができます。MAX14931FAWE+は、デジタル信号を一方向に伝送するための4つのチャンネルを備えています。MAX12930EASA+Tは、データ転送用に2つのチャンネルを備えています。MAX14819EVKIT#評価キットは、MAX14819A用であり、MAX14931およびMAX12930デジタルアイソレータが含まれています(図6)。

Analog DevicesのMAX14819EVKIT#デュアルチャンネルIO-Linkマスター評価キットの図(クリックして拡大)図6:MAX14819EVKIT#デュアルチャンネルIO-Linkマスター評価キットには、MAX14819トランシーバとMAX12930およびMAX14931デジタルアイソレータが含まれています。(画像提供:Analog Devices)

まとめ

IIoTとインダストリ4.0の利点を享受するためには、センサとトランスデューサを迅速かつコスト効率良く展開する必要があります。そのために、IO-Linkは産業用オートメーションシステムの設計者に対し、標準的で信頼性が高く、効率的なモジュラーアプローチを提供します。上述したように、すぐに入手可能なコンポーネントを使用することで、設計者はIO-Linkを使用してインテリジェンスをエッジに追加し、センサやアクチュエータのコミッショニング、監視、再構成を行うことができます。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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