ポリウレタンフォームがガスケット処理、振動管理、エネルギー制御に適している理由

ノイズ、振動、衝撃は、最先端の電子設計において問題となる不要なエネルギーです。その影響は、単に迷惑なだけの場合から壊滅的な場合までさまざまです。このため、ほとんどのソリューションでは、さまざまな形状、密度、厚みのエネルギー吸収フォーム(例:ガスケット、バンパー、制振パネルなど)を使用しています。このようなエネルギー吸収フォームが、たとえば、3Mの子会社であるAearo Technologiesから、E-A-R(エネルギー吸収樹脂)ブランドで販売されています。

私は、同社のエネルギー吸収製品のすばらしい例を見たことがあります。私が前職で勤めていた会社は、低周波のスペクトラムアナライザを設計・製造しておりました。その主な用途の一つとして、衝撃や振動の測定があったのです。そのような生活を送っていた中で、衝撃や振動などの機械的エネルギーを熱に変換するエネルギー吸収製品を製造するE-A-Rというブランドを知ったわけです。

私が参加した展示会の一つは、カントリークラブで催されました。3MのE-A-R事業部では、エネルギー吸収製品を紹介するにあたり、自社の技術を使ったゴルフボールを提供しました。そのゴルフボールを床に落とすと、なんと、バウンドせずにそのまま静止するのです。で、それをゴルフクラブで叩くと、飛べるところまで飛んで止まってしまうという、なんとも不思議な光景でした。幸いなことに、E-A-Rブルーに塗られていたので、普通のゴルフボールだと偽って使用することはできません。このボールは、E-A-Rエネルギー吸収製品に可能なことを示す、すばらしい例でした。

形状や温度耐性が安定していることでエネルギー吸収が可能

現在、3MのISOLOSS LSは、通気性のあるマイクロセルのポリウレタンフォームです。同製品は、圧縮永久歪みが小さく、圧縮たわみが一定なので、耐久性のあるエネルギー吸収材料です。また、広い温度範囲で使用できます。

この技術を使用した製品には、さまざまな密度や厚みのものがあります(図1)。つまり、製品の種類として、冷却ファンによる機械的振動を遮断するガスケットや、点検用パネルの隙間を塞ぐフォームテープ、エンクロージャの囲いや扉の振動を緩和するシート、衝撃を緩和するバンパーなどがあります。

図1:ISOLOSS LSフォーム製品は、密度や厚みのバリエーションがあるので、柔軟な設計が可能です。(画像提供:3M)

ポリウレタンフォームの用途は、「ガスケット処理」「緩衝(衝撃の緩和)と支持」「エネルギー制御」の3つに分類されます。ガスケット処理を行うには、隙間(ギャップ)を塞ぐ機能、機械的な衝撃や振動を吸収する機能、嵌合面をシールする機能が必要になります。エアコンのフィルタラックのガスケットは、ポリウレタンフォームでフィルタハウジングを密閉することでフィルタを固定するものです。緩衝(衝撃の緩和)と支持とは、物体同士を隔離することを意味します。これはたとえば、扉が閉まったかどうかを監視するスイッチをオフにするために扉のバンパーが持っている、衝撃を緩和した上で支える役目と同じです。バンパーがスイッチのクッションとなり、扉を閉める際の衝撃を軽減します。エネルギー制御用途では、機械的エネルギーを低レベルの熱として放散することで、振動や衝撃を低減します。製品例としては、大型金属パネルの制振パッドがあります。

ポリウレタンフォームの2大特性は、圧縮永久歪みと圧縮たわみです。これらの特性はそれぞれ、フォームが形状を保持する能力と、フォームが自身を圧縮している物体に対して力を返す能力を表しています。

圧縮永久歪みは、フォームが持続的に圧縮された後に残る永久歪みの量です。圧縮永久歪みの値が低い場合は、繰り返しまたは連続的に圧縮しても、フォームが元の厚みに戻ることを意味しています。このことは、ガスケット処理のような用途では重要です。非圧縮状態に戻ることで、再び圧縮状態にしたときに良好なシール性を維持できるからです。ISOLOSS LSフォームの室温での圧縮永久歪みは1%未満です。

圧縮力たわみ(CFD)は、さまざまな圧縮度でのフォームの硬さを表しています。圧縮の関数としてのCFDのグラフは、これらのフォームを用いた設計を行うためのヒントをいくつか与えてくれます。CFDについては、「衝撃、振動、温度から精密電子機器を保護する方法」をご覧ください。

3MのフォームISOLOSS LSは、さまざまな形状で提供されています。たとえば、ガスケットストリップ、円形および正方形のスポット、正方形および長方形のシートなどがあります(図2)。

図2:ポリウレタンフォームISOLOSS LSは、あらゆる用途に簡単に対応できる、効果的な形状を取り揃えています。(画像提供:3M)

LS-2506-PSA-1-CIRCLE-50PKLS-2006-PSA-2-X2-50PKなどの小さい円形や正方形のパッドは、バンパーとしてよく使われます。幅0.75インチ、厚み0.25インチで密度10lb/ft3のストリップであるLS-1025LM/PSA 0.75"X180"-1RLのようなストリップは、ガスケット処理に役立ちます。

LS-1506/PSA-5 "X7"-10PKLS-1006LM-PSA-12-X12-6PKなどの大型シートフォームは、音響や振動の減衰用途に役立ちます。これらを適用することで、パネルや扉の振動形式を変更することができます。振動減衰は、ベース層の曲げ応力によって制振フォームが伸縮し、エネルギーを放散することで目的を達します(図3)。

図3:基層(ベースレイヤ)に接着されたISOLOSS LMフォームが、屈曲されるに従ってエネルギーを放散する様子。(画像提供:3M)

フォームの減衰層(レイヤ)の厚みが増せば、減衰も大きくなります。また、フォームの密度を変えることでも、減衰に影響を与えることができます。パネル全体を覆う必要はありません。パネル面積の25%程度を覆うだけでも振動レベルは顕著に低減します。

まとめ

私たちが当たり前のように使っている技術が、全く新しい用途、特に娯楽用に活用されるのを目にするのは面白いです。ゴルフボールの実演は、まさにエネルギー吸収フォームの可能性を示すものでした。3MのISOLOSS LS製品は、寿命が尽きるまで、形状やシール性能を維持しながら、振動、衝撃、シール性の問題を解決し続けます。難燃性や耐薬品性も備えているので、その過程で過酷な環境にも耐えることができます。

著者について

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Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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