衝撃、振動、温度から精密電子機器を保護する方法

著者 Art Pini

DigiKeyの北米担当編集者の提供

衝撃、振動、過剰加温は、すぐに故障につながるので、電子システムの設計において脅威となります。また、動作中の騒音が大きいと、顧客からのクレームや修理の依頼が殺到します。また、冷却がうまくいかないと、コストがかさみます。

振動や騒音は、冷却ファンの取り付けが不適切であることが原因である場合があります。サービスパネルやアクセスポートの周りの空気漏れは、冷気を漏らすので、空気の温度を上昇させて、通風・エアコン系統の冷却効率を低下させる可能性があります。エンクロージャは機械的共振により、ガタついたり振動したりすることがあります。

騒音、振動、温度上昇は付き物ですが、最小限に抑える必要があります。そこで、エネルギー吸収用のポリウレタンフォームのガスケット、バンパー、ダンパを使用することができます。しかし、適切な素材を選ぶには、素材の主な特性や性能を把握しておく必要があります。

本稿では、3Mのポリウレタンフォーム製品ISOLOSS LSを実例として、設計者が緩衝・制振・減衰・防音材を選択する際に考慮すべき主な特性について見ていきます。また、最も要求の厳しい用途において重要な機器の保護にISOLOSS LSポリウレタンフォーム製品を使用することで、設計者の時間とコストを削減する方法も紹介します。

ポリウレタンフォームISOLOSS LS

3Mの素材ISOLOSSは、ファインセル状で高密度のポリウレタンフォームです。圧縮永久歪みが小さく、力のたわみが一定で、耐久性とエネルギー吸収性に優れ、広い温度範囲で使用できます。さまざまな密度や厚み、形状(含む:ガスケットストリップや、円形や正方形のパッチ、正方形や長方形のシートなど)のバージョンを取り揃えております(図1)。

画像:3MのポリウレタンフォームISOLOSS LS図1:3MのポリウレタンフォームISOLOSS LSは、バンパー、ガスケット、制振・防振材/シートとして使用できるように、役立つさまざまな形状を取り揃えております。(画像提供:3M)

ポリウレタンフォームISOLOSS LSには、さまざまな形状があるだけでなく、4種類の密度のバージョン、つまり10(160.2)、15(240.4)、20(320.4)、25(400.5)ポンド/立方フィート(lb/ft3)(キログラム/立方メートル(kg/m3))を取り揃えています。このように4つの密度があるのは、ポリウレタンフォームを特定の用途に適合させるためです。これらのフォーム製品は、いずれも-40℃~+107℃(-40˚F~228°F)の温度範囲で使用できます。

ポリウレタンフォームは、「ガスケット」「緩衝材 & 支持」「エネルギー制御」の3つの用途に分類されます。ガスケットには、隙間を塞ぐ機能、機械的な衝撃や振動を吸収する機能、嵌合面をシールする機能などが求められます。ファンとエンクロージャの間のガスケットは、防振を行うとともに、圧力損失防止のためのシール機能を備えています。緩衝材と支持は、たとえば扉の閉まりを監視するスイッチを閉める扉バンパーのように、物体同士を隔絶させるものです。つまり、バンパーはスイッチの緩衝材となり、扉閉め時の衝撃を軽減します。このような用途には、LS-2506-PSA-1-CIRCLE-50PKLS-2006-PSA-2-X2-50PKなど、小型の円形パッドや正方形パッドがよく使われます。エネルギー制御では、衝撃の吸収および振動の制振・減衰による機械エネルギーの低減を行います。

ポリウレタンフォームの主な特性

これらの用途はすべて、フォームが形状を保持し、そのフォームを圧縮しようとする物体に対して力を返す機能に依存しています。これらの特性を測定するポリウレタンフォームの設定値は、圧縮永久歪みと通称される圧縮永久歪みと、圧縮力たわみ(CFD)の2つです。

圧縮永久歪みは、持続的に圧縮したフォームの永久歪みを測定した値です。圧縮永久歪みの値が低い場合は、フォームを繰り返しまたは連続的に圧縮しても、元の厚みに戻ることを示します。3MのフォームISOLOSS LSの室温での圧縮永久歪みは1%未満です(軟質フォーム素材の標準規格、ASTM D1667に準拠)。

軟質フォーム素材の標準検査方法を網羅した規格ASTM D3574 Dには、圧縮永久歪みの測定方法が規定されています。被検査材を50%の厚みに圧縮し、高温に長時間さらします。圧縮永久歪みとは、元の厚みに対する、圧縮解放後に失われた厚み分のパーセンテージのことです。

高い耐圧縮永久歪み性が要求される代表的な用途として、エアコンのフィルタラックシールでの使用があります(図2)。

画像:圧縮永久歪みが低い3MのフォームガスケットISOLOSS LS図2:圧縮永久歪みが低いフォームガスケットISOLOSS LSは、エアコンフィルタラックのアクセスドア(点検口[窓・穴])をシールし、フィルタを固定しながら空気漏れを最小にします。(画像提供:3M)

エアフィルタラックは、圧縮永久歪みの少ないポリウレタンフォームを使用して、フィルタハウジングをシールし、フィルタを固定します。交換や清掃のためにフィルタを取り外すと、フォームが膨らんでほぼ元の厚みに戻ります。圧縮永久歪みが短いため、圧縮時間の長短に関係なく、シールが性能を維持することができます。このような用途には、3MのLS-1025LM/PSA-0.75インチ(in) x 180インチ-1RLのようなガスケットフォームを使用します。LS-1025LM/PSAは、幅0.75インチ、厚み0.25インチで、密度は10lb/ft3です。この軟質フォームがフィルタにフィットして、扉開口部をシールしたまま、フィルタを固定することができます。

CFDは、さまざまな圧縮度におけるフォームの硬さを表しています。規格ASTM D3574Cは、フォームを元の厚みの100%から30%まで、つまり10%から70%まで圧縮した場合のCFDを測定するためのものです。フォームを圧縮する際に、圧縮面がフォームを特定の厚みにするためにかける必要のある力を測定します。これは、フォームが圧縮面に与える力でもあることを忘れてはなりません。図3に印加圧力の関数としての圧縮のグラフを示します。用途に応じた最適なフォームを選定いただくため、ISOLOSS LSのフォーム密度ごとのCFDについて、グラフと表を記載しています。

4種類のフォーム密度(10、15、20、25(lb/ft3))についてCFDをプロットしたグラフ図3:4種類のフォーム密度(10、15、20、25(lb/ft3))に対する一連のCFDグラフ。フォームが圧縮面に与える力を大きくするには、より高い密度のフォームを使用するか、圧力を上げます。(画像提供:3M)

2つの面を100kPa(14.5psi)の圧力で離していなければならない緩衝材の用途を考えてみましょう。これは、約16%に圧縮された25 lb/ft3、約28%に圧縮された20 lb/ft3、約50%に圧縮された15 lb/ft3、または約70%に圧縮された10 lb/ft3フォームを使用して達成することができます。

振動・騒音の制振・減衰

構造の制振・減衰は、機械的エネルギーを熱に変換することで解消する方法です。制振・減衰材が、構造物の表面に強力な接着剤で直接貼り付けられます(図4)。

3MのフォームシートISOLOSS LSを面に貼り付けた図図4:フォームシートISOLOSS LSは、面に貼り付けて騒音を減衰させることができ、3Mの幅広い感圧接着剤と互換性があります。(画像提供:3MのE.A.R.事業部)

この自由層(フリーレイヤ)減衰システムは、最もシンプルな形態です。ベース構造からの曲げ応力により、制振・減衰材が伸縮し、エネルギーが散逸します。このようなシンプルなシステムであっても、適切に設計された制振・減衰処理によって、特に衝撃音については20デシベル(A加重)(dBA)以上の低減が可能であり、顕著な効果を得ることができます。制振・減衰材は、正方形や長方形のシート、円形や正方形のパッチを取り揃えています。これらのシートの素材は、OEM(自社ブランド製品製造会社)でのアセンブリを簡単にするためや、後付けレトロフィットキットとして、ダイカットまたはレーザーカットすることができます。効果を発揮するために全体をカバーする必要はなく、わずか25%の表面カバー率で10dBA以上の衝撃音低減が可能です。3MのLS-1506/PSA-5"x7"-10PKおよびLS-1006LM-PSA-12"x12"-6PKなどの大きなシートフォームは、制振・減衰用途に有用です。これらは、柔軟性があるため、ほとんどの製品設計に適合します。

制振・減衰量と騒音低減量を決定する因子には、以下の4つがあります。

  1. 基材のタイプと厚み
  2. 動作の温度および周波数における制振・減衰材の厚みと特性
  3. 基材厚みに対する制振・減衰材厚みの比率
  4. 制振・減衰材で覆われている表面積の割合

減衰・制振技術では、機械的な動きを低レベルの熱に変換することで騒音・振動レベルを低減できるポリウレタンフォームの特性を利用しています。ポリウレタンフォームISOLOSS LSは、このような用途でエネルギー制御を行うとともに、過酷な環境下でも形状、フィット感、機能性を維持することができます。

4種類の密度におけるポリウレタンフォームISOLOSS LSの全仕様を表1にまとめました。この表には、耐圧縮永久歪み性と圧縮力(荷重)たわみという重要な仕様だけでなく、本フォーム素材の認定に使用された検査規格を挙げてあります。

ポリウレタンフォームISOLOSS LSの代表的な物性の表表1:4種類の密度におけるポリウレタンフォームISOLOSS LSの代表的な物性を示しています。(画像提供:3M)

まとめ

極端な振動、衝撃、騒音、温度は多くのシステム設計にとって現実のものとなっていますが、適切な制振・減衰材を選定すれば、それらの影響を大きく軽減することができます。これまで見てきたように、3MのポリウレタンフォームISOLOSS LSは、形状、密度、厚みなどのバリエーションが豊富で、さまざまな環境への耐性が高く、耐用年数が長いことが特長です。開口部のシールや振動の低減に使用できるので、ガスケット用途に適しています。緩衝/支持用途では、衝撃や振動を緩和し、サブアセンブリを固定します。また、制振・減衰操作では、騒音を低減するために使用されます。

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著者について

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Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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