アクティブレールプローブとは何か、そしてその使い方は?
高速コンピュータおよびハンドヘルドポータブルデバイスの電源バス電圧は下がりつつあります。かつては、5Vの電源レールは±5%の許容差で動作していましたが、今日の低電圧プロセッサでははるかに厳しく、許容差が±1%のオーダーであることが求められます。その結果、1.1Vのバスの許容差は±11mVとなっています。そのような配電網(PDN)のインテグリティを保証するには、新しい測定ツールが必要です。
電源レール上のノイズやクロストーク、負荷変動による過渡現象はシステム全体に伝播するため、PDNは電力を必要とするあらゆるデバイスに共通しています。これらのスプリアス信号は、タイミングジッタなど、他の多くの問題を引き起こしかねません。したがって、DC電圧だけでなく、電源レール上のノイズ、リップル、クロストークを測定および評価することが重要です。
それには、DCレベルが1V以上の電源レール上の信号を、ミリボルトのレンジで調べる必要があります。しかし、ここに問題があります。一般的なオシロスコープは、5mVのレンジに設定すると±300mVのオフセットしか補償できません。これは、わずか1Vの電源バスでも画面外になってしまうということです。もちろん、垂直軸方向の感度を200mVなどに上げれば、オフセットレンジは±3Vになりますが、ノイズやリップルが電圧許容差の11mV未満であると仮定すると、ほとんど見えません。そこで、アクティブ電源レールプローブの出番です。
Teledyne LeCroyが提供するRP4030などの電源レールプローブは、この問題を複数の方法で攻略します。まず、減衰範囲が1:1に近いため、もともと微小な信号を減衰させません。次に、それぞれが固有の入力インピーダンスをもつDC経路とAC経路に信号経路を分けることで、パワーローディングを防ぎます(図1)。
図1:標準的な電源レールプローブの簡略化した機能図。並列のAC経路およびDC経路と周波数応答のグラフを示しています。(画像提供:DigiKey)
DC経路には、50kΩのDC抵抗があります。AC経路は、信号を容量結合します。DC経路はローパス周波数応答を持ち、AC経路はハイパス周波数応答を持っています。両方の経路は、プローブ出力で合流してオシロスコープの50Ω入力端子に入り、フラットな周波数応答をもたらします。オシロスコープの50Ω入力に送り込むことで、ノイズの追加発生を最低限に抑え、オシロスコープの帯域幅を最大にします。このプローブの帯域幅は4GHzであり、幅広いスプリアス信号を測定できます。最後に、これらのレールプローブは、オフセット電圧がきわめて幅広く高精度で、±30Vが一般的な範囲です。
アクティブプローブの使用例
図2に示す典型的な測定例を見てみましょう。これは、1.1Vバスの周期的偏差と偶発偏差(PARD)を測定したものです。PARDは広く使われている業界用語で、瞬間的なバス電圧の平均値からの偏差を示す尺度です。偏差には、周期的信号、ランダムノイズ、クロストークが含まれます。PARDは通常、ピーク-ピーク値として測定されます。
図2において、そのピーク-ピーク測定パラメータは、PARDの値が7.5mVであることを示しています。これには、周期的成分、ランダム成分、細いスパイク成分が含まれています。バス電圧における20Hz未満の低速変動はドリフトと呼ばれ、PARDには含まれません。このレールプローブのオフセットは、図の注記ボックスC1(左下隅の黄色のボックス)に-1.1Vと表示されています。この例で使われているレールプローブのオフセットレンジは±30Vです。これにより、垂直軸の1目盛り2mV(mV/div)で信号を測定できます。このプローブなしでは、±300mVのレンジでしかありません。
図2:垂直軸感度2mV/divでのPARD測定。1.1Vレールのランダム成分、周期的成分、クロストーク成分および、ピーク-ピーク値7.5mVが示されています。(画像提供:DigiKey)
電源レールプローブには、これらの測定が容易になる相互接続アクセサリとして、回路基板の手動プロービング用ブラウザやはんだ付けケーブルなども含まれています。はんだ付けケーブルは最も高い帯域に対応するのに対し、ブラウザはそれより低い帯域に対応します。
まとめ
パワーインテグリティの測定は、電源電圧が低くなるにつれて難しくなっていますが、上で示したようにアクティブ電源レールプローブが役立ちます。これらのプローブは、はるかに大きなDC電圧において小さな電圧変化を測定しなければならない場合に通常起きる、ダイナミックレンジの損失を排除します。
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