IRウィンドウを使用した安全なサーマル検査
危険な環境でのサーマル検査システムは困難を伴う場合がありますが、赤外線(IR)ウィンドウなどの特殊な機器はリスクを大幅に軽減します。ここでは、IRウィンドウがサーマルイメージングにおいてどのように機能するか、またウィンドウの選択と適用方法についてご紹介します。
まず、いくつかの定義から始めましょう。IRスペクトルは、電磁スペクトルのマイクロ波領域と可視領域の間に位置します。IR放射は、一般に熱として知られる、視覚的には検出できない熱エネルギーの1形態です。IRサーモグラフィはサーマルイメージングとも呼ばれ、IR放射レベルを分析し、その結果をグラフィカルに表示することで非接触で温度差を検出・測定する方法です。
しばしばサーモグラムと呼ばれるグラフィカル表示は、色を使って温度を表し、それぞれの色は特定の温度範囲を表しています。たとえば、作動中の電気モータのサーモグラム(図1)は、モータ上の各部位の温度を示しています。サーモグラムの横にある目盛りは、色と温度の対応関係を示しています。
図1:作動中の電気モータのサーモグラムを示しています。それぞれの色はモータの各部位の温度を表しています。(画像提供:Fluke Electronics)
IRサーマルイメージングカメラはサーマルイメージャとも呼ばれ、サーモグラムを生成します。従来のカメラとは異なり、サーマルイメージングカメラは長波長のIR放射に反応し、測定対象デバイスの熱シグネチャを生成します。結果として得られるIR画像は、多くの場合、可視スペクトル画像とは大きく異なります。多くのIRカメラには可視光カメラも搭載されており、IR画像と同時に標準的な可視スペクトル画像をピクセル単位で撮影することができます。これら2種類の表示画像を組み合わせることで、構造的な詳細が追加され、温度データに物理的な背景が与えられるため、解釈が容易になります。
サーマルイメージングの用途
サーマルイメージングの用途は多岐にわたります。たとえば、配電盤の過熱を検出し、高抵抗の接続や過負荷の導体を示すのに使用できます。機械システムでは、サーマルイメージングはモータの巻線やベアリングの不具合を検出できます。建築用途では、構造物の熱損失を特定します。また、動物や人間の侵入者を検知するセキュリティ用途にも使用されています。
サーマルイメージングは、他のモニタリング技術に比べて、測定対象デバイスに物理的に接触する必要がないという利点があります。これは、測定対象デバイスが高温で動作している場合、高電圧が印加されている場合、あるいは動作中に測定しなければならない場合など、特定の用途において特に重要です。
IRおよびマルチスペクトルウィンドウ
サーマルイメージングの用途によっては、技術者が測定中に危険にさらされる場合があります。たとえば、配電盤の電気的故障は、非常に高い温度と光レベルを発生させるアークフラッシュを引き起こす可能性があります。この故障はアークブラスト(超音速衝撃波)も発生させ、耳をつんざくような音と過熱した破片を生じ、重傷を負わせる恐れがあります。アーク現象は120ボルト程度の低電圧でも起こりえますが、電圧が高くなるにつれてその可能性は高くなります。
個人用保護具(PPE)を使用してアーク現象から身を守ることもできますが、より安全でコストのかからない代替手段は、点検ウィンドウを使用して作業員を隔離し保護することです。
IRまたはマルチスペクトルウィンドウを使えば、電気パネルやエンクロージャを開けることなく内部を見ることができるため、より効率的なサーマルイメージングが可能になります。これによりアークフラッシュや爆風への曝露を防止し、作業員の安全性を高めることができます(図2)。
図2:制御盤に取り付けたIRウィンドウの例を示しています。IRウィンドウにより、サーマルイメージングカメラへのアクセスが可能です。(画像提供:Fluke Electronics)
Fluke Electronicsでは、IRカメラやサーマルイメージングシステムに対応したIRウィンドウを提供しています。
ClirVu CLKTおよびClirVu CVウィンドウは、技術者やエンジニアにとって重要な保護機能を備えており、パネルやエンクロージャを開けることなく検査エリアにアクセスすることができます。IRウィンドウは、アークブラストに対する優れた保護のため、高圧ガスケットを備えた高強度合金ダイカストフレームに取り付けられた耐アーク性クリスタル光学部品でできた永久固定具です。光学ウィンドウは、Flukeの広帯域ClirVuコーティングが施されたフッ化カルシウム(CaF2)製で、赤外線透過率の向上と湿度劣化からの保護を実現しています。カバーは埃や偶発的な損傷から光学部品を保護します。連続動作温度範囲は-40~232°C(-40~450°F)です。
両シリーズとも、ウィンドウの直径は2、3、4インチ(50、75、100ミリメートル)で、ドアラッチは3種類から選べます(図3)。
図3:CLKTおよびCVウィンドウのこれらの例は、入手可能なドアラッチの選択肢を示しています。(画像提供:Fluke Electronics)
Fluke CV301(図3、中央)はセキュリティキーラッチ機構を使用した3インチ(75ミリメートル)のIRウィンドウです。4インチ(100ミリメートル)のウィンドウバージョンはFluke CV400(図3、右)です。このウィンドウは、セキュリティキーを必要としない手回し式ラッチ機構を採用しています。Fluke FLK-050-CLKT(図3、左)は、ツイストロックラッチを備えた2インチ(50ミリメートル)ウィンドウが特長です。CLKTシリーズは、FlukeのQUADRABAND光学技術を利用したマルチスペクトルウィンドウが特長です。光学レンズは、短・中・長波長のIRだけでなく、紫外線や可視光にも対応します。これは、互換性のあるIRイメージャのディスプレイフュージョンを可能にし、IRと可視光ビューを組み合わせて、より直感的な表現を実現します。
CVシリーズは30サイクルの試験を受け、最大63キロアンペア(kA)のアーク現象に耐える定格を備えています。CLKTシリーズは50kAのアーク現象を30サイクル耐える定格を備えています。
これらのウィンドウは、複数の安全規格、アーク試験に関する規格、環境適合性規格に準拠しています。
IRウィンドウの選択
IRウィンドウの選択は、どのような検査が必要か、また、使用予定のIRウィンドウとIRカメラの組み合わせで検査が可能かどうかを判断することから始まります。カメラの視野とウィンドウとの位置合わせも影響しますが、ウィンドウのサイズとウィンドウから対象物までの距離が、ウィンドウを通して得られる視野を決定します(図4)。
図4:ウィンドウを通して得られる視野は、ウィンドウのサイズとウィンドウから対象物までの距離に依存します。(画像提供:Fluke Electronics)
図4の表は、3つの異なるサイズのウィンドウ(50mm、75mm、100mm)の視野と、ウィンドウから対象物までの距離を示しています。強調表示されているのは、対象物までの距離が12インチ(30.48センチメートル)の場合における3つのウィンドウサイズの視野です。視野はウィンドウのサイズと対象物までの距離によって広がります。
まとめ
IRとマルチスペクトルウィンドウは、安全な診断用サーモグラフィの鍵となります。試験担当者を潜在的に有害なアーク現象、高温、稼働機械から隔離すると同時に、サーマルイメージングデバイスへのアクセスを可能にします。
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