ロボットとは何か?ロボット工学の進化と未来をたどる
ロボットについて
私たちは皆、「ロボット」という言葉を知っており、日常会話でも何気なく使用しています。しかし、それの本当の意味を知っているのでしょうか。ロボットの定義について少し考えてみましょう。それは、見た目ほど単純なものなのでしょうか、それとも私たちの理解を覆すようなものなのでしょうか。
図1:AIで生成されたヒューマノイドロボットの画像。(画像提供:Aswin Babu氏)
本質的に、ロボットとは、情報を感知し、処理し、自律的に、またある程度の人的指導を受けてタスクを実行できるプログラム可能な機械です。従来のツールとは異なり、ロボットは周囲の状況に適応し、繰り返し作業や危険な作業を行うことが多く、私たちはより創造的な作業に集中することができます。ロボットは常に人間のような外観をしているという誤解が一般的ですが(図1)、必ずしもそそうとは限りません。この概念が当てはまるヒューマノイドロボットについては、後で詳しく説明します。
簡単な復習:ロボット工学の歴史
「ロボット」という言葉の語源は、1921年にチェコの作家カレル・チャペックが書いた戯曲『ロボット(R.U.R)』(チェコ語で「強制労働」を意味する「robota」に由来)に遡ります。しかし、派生語の「ロボット工学」を考案したのは、SF作家のアイザック・アシモフとされています。この言葉は、アイザック・アシモフのSF小説『堂々めぐり(Runaround)』(1942年)に登場しました。『堂々めぐり(Runaround)』には、アシモフの有名な「ロボット工学の三法則」(図2)も含まれています。他の画期的な技術と同様、ロボット工学もフィクションから着想を得て、想像上の概念を現実のものにしました。
図2:ロボット工学三原則の図(画像提供:Dreamstime.com)
ロボット工学の画期的な進歩
フィクションから現実へ、産業革命の時代には、反復作業を簡素化するために設計された機械装置であるオートマトンへの最初の具体的な一歩が踏み出されました。オートマトンの概念は、神話のタロス物語に登場する巨大な青銅のオートマトンなど、古代のギリシャ神話にまで遡ります。ヴォーカンソンのアヒル(図3)は、機械仕掛けの鳥が餌を探して歩き回り、種を拾い上げて飲み込むという、印象的なオートマトンでした。本物の鳥と見分けがつきませんでした。
図3:ヴォーカンソンのアヒル(オートマトン)の内部。(画像提供:Scientific American第80巻03号、1899年1月)
ロボット工学における真の飛躍は、1954年、ジョージ・デボル氏が最初のプログラム可能なロボット、ユニメート(図4)を開発したときに実現しました。これは、特に自動車産業において、製造業界に永久的な変化をもたらしました。
図4:人間にコーヒーを注ぐユニメート、1967年。(画像提供:Wikipedia)
2000年代初頭のASIMO(アシモ)を覚えていますか(図5)。ホンダのヒューマノイドロボットは、SFの夢に一歩近づきました。さらに、世界初のロボット市民、Sophia(ソフィア)も忘れてはなりません。彼女は2017年にサウジアラビアから市民権を与えられ、ロボット工学の分野で画期的な出来事となりました。高度な油圧システムと28の自由度を備えたBoston DynamicsのAtlas(アトラス)は、驚異的な移動能力を示し、危険な環境でのロボットの支援可能性を証明しています。
図5:バラク・オバマ大統領とサッカーをするASIMO(アシモ)。(画像提供:Jim Watson氏/getty images)
Boston Dynamicsのもう1つの注目すべき作品は、汎用性と適応性を重視して開発された四足歩行ロボットであるSpot(スポット)(図6)です。現在、AIと機械学習により、ロボットは複雑な環境をナビゲートし、意思決定を行い、経験から学ぶことさえ可能になっています。
図6:Boston Dynamics Spot(スポット)の動作。(画像提供:Boston Dynamics)
私たちが構築し使用するロボットのタイプ
ロボットは単なる産業用の巨大な機械や未来的な概念だけではありません。私たちの作業場で命を吹き込まれるツールなのです。ここでは、主なロボットのタイプについて簡単に紹介します。
1. 産業用ロボット:溶接、塗装、組み立てなどの作業を行う工場の主力ロボットです。「コボット」と呼ばれる協働ロボットは、人と一緒に安全に作業し、製造の柔軟性と安全性を高めます。これらにはさまざまなサイズや容量がありますが、主にロボットアームのカテゴリに属します(図7)。現在購入可能なロボットアーム機構のミニチュア版については、 KUKAのAGILUS KR 6 R900-2ロボットキットをご覧ください。
図7:シリンダブロックを組み立てる産業用ロボットアーム。(画像提供:Kuka Robotics)
2.サービスロボット:家庭の掃除機がけから外科医の補助まで、サービスロボットは生活をより簡単かつ効率的にします。医療分野では、医師が正確な手術を行う手助けさえしています。ロボット手術システムであるDa Vinci(ダヴィンチ)は、遠隔操作ロボット手術のパイオニアです(図8)。
図8:遠隔操作ロボット手術装置(画像提供:MADvertise/Shutterstock)
3. 移動ロボット:移動が可能なロボットです。倉庫から火星まで、あらゆる過酷な環境を探索する自律型ドローン、ローバー、車輪や脚のついたロボットを考えてみましょう。これらのロボットは陸、水、空で活躍しています。手動遠隔操作、ガード付き遠隔操作(障害物を避けることはできますが、人間の制御下に置かれます)、純粋な自律航行モードなど、さまざまなモードで動作することができます。
自律走行搬送ロボット(AMR)(図9)は、「自己位置推定と地図作成」(SLAM)や地図ベースのナビゲーション技術などの高度なアルゴリズムを使用して、自力で移動することができます。障害物を感知し、地図を使って最短経路を見つけ、障害物を回避してA地点からB地点に移動することができます。また、ロボットアームやその他のツールを搭載して、周囲の状況を操作することもできます。この自律走行搬送ロボットのブログやビデオでさらに理解を深めてください。
図9:SLAMTECの多床式移動ロボットHermes。(画像提供:Slamtec)
4. ヒューマノイドロボット:ヒューマノイドは人間にそっくりなロボットです。私たち人間は、人間のフォームファクタからあらゆるものにアクセスできるように設計されているため、それらには周囲の世界をよりうまく操作できるという利点があります。Boston DynamicsのAtlas、HondaのAsimo、Sophiaのようなヒューマノイドロボットは、見ていてかっこいいだけでなく、移動性と相互作用の限界に挑戦しています。ヒューマノイドはまだ進化を続けていますが、特に介護や教育、家事の自動化といった分野での応用の可能性は大きいのです。
5.ソーシャルロボット(図10): これらのロボットは、感情的なレベルで私たちと相互作用するように設計されています。高齢者の付き添い、子供の家庭教師、さらには接客ヘルパーなどです。AIと人間のような行動を融合しているのが驚きです。一部のソーシャルロボットもヒューマノイドのカテゴリに入るかもしれませんが、その必要はありません。
図10:子供と対話するソーシャルロボットJibo(ジーボ)。(画像提供:devicedaily.com)
このような幅広い分類とは別に、群ロボット、ソフトロボット、エクソスケルトン(外骨格)、ロボット義肢など、いくつかのロボットシステムがあります。群ロボットとは、アリやミツバチのような社会性昆虫の行動を模倣し、複雑な作業を行うために大規模な群れで連携して動作する小型ロボットのことです。ソフトロボットは柔らかな素材で作られており、狭い空間でも移動でき、人間と安全に相互作用することができます。エクソスケルトンは、人間の筋力や運動能力を高める着用可能なロボットスーツで、リハビリテーションや産業分野でよく使用されています。ロボット義肢は、切断患者の機能を回復させ、生活の質を向上させる高度な義肢です。
ロボット工学が生活に与える影響
ロボットはすでに私たちの生活に大きな影響を与えています。製造分野では、プロセスを効率化し、職場の安全性を向上させています。医療分野では、手術からリハビリまで、あらゆる分野で支援を行っています。農業もロボット工学が活躍している分野の1つで、作物の植え付け、収穫、監視などの作業を自動化し、世界の食糧生産に貢献しています。
危険な環境で命を救う役割を担っていることも忘れてはなりません。ロボットは爆弾処理、深海における海溝の探査、さらには核物質の管理まで行っています。
ロボット工学が直面する課題
もちろん、すべてが順調に進んでいるわけではありません。私たちははまだ次のような大きな課題に直面しています。
- 機動性と器用さ:ロボットを人間のような動かしたり、複雑な地形をナビゲートさせたりすることは容易ではありません。エンジニアは、バランス、柔軟性、制御の向上に絶えず取り組んでいます。雪、水たまり、山、階段など、人間が移動できるあらゆる地形をロボットが移動できるようにするには、まだ課題があります。しかし、歴史を振り返れば、二足歩行さえもロボットにとっては大きな課題でした。それでも、現在では「Atlas」のようなロボットがパルクール(図11)やバク転を行うことが可能です。私たちは着実に進歩しており、あらゆる地形を自律的に移動できるロボットの実現は時間の問題です。
図11:Boston DynamicsのAtlasロボットがパルクールを行う様子。(画像提供:Boston Dynamics)
知覚と迅速な意思決定:ロボットは感覚データを処理し、瞬時の判断を下す必要があります。自律走行車両はその代表例です。障害物を検知し、その動きを正確に予測する必要があります。これは難しい問題ですが、着実に進歩しています。5Gと低レイテンシのネットワークの進歩は、確かに遠隔処理の新たな可能性を広げ、ロボットが自信で持ち運べない高性能なハードウェアに複雑な計算を処理させることを可能にしました。
倫理的考察事項:ロボットがより普及するにつれ、私たちはより大きな視点で考える必要があります。雇用喪失、プライバシーへの懸念、AIの倫理的利用をどのように扱うべきでしょうか。機械が人間の知能を超える技術的特異点(図12)以降、何が起こるかについてはまだ不明確な点があります。一方では、制御不能な超知能機械が人類に存亡の危機をもたらすというAIハルマゲドンを恐れる声もあります。他方では、AIが気候危機のような重大な問題の解決に役立つ、良きパートナーになることも期待されています。将来はまだ不透明であり、これらの先端技術をどのように開発し、規制するかによって大きく左右されます。
図12:技術的特異点後の可能性のある2つのシナリオの描写。(画像提供:AI生成)
ロボット工学の今後の展望
未来は興奮に満ちています。私たちは、ロボットがあらゆる場面でパートナーとなる世界へと向かっています。職場でのサポートや未知の分野の探検から、エンターテイメントや仲間としての付き合いに至るまで、その可能性は無限大です。
- よりスマートなAI:機械学習が新たな可能性を開きます。未来のロボットは、より複雑な作業に対応し、創造的に問題を解決するようになるでしょう。あなたと働く度に学び、成長するロボットを想像してみてください。
- 人間とロボットのコラボレーション:未来の工場では、ロボットと人間がそれぞれの強みを活かして、共に働く光景が見られることでしょう。コボット(協働ロボット)は反復的な作業や危険な作業を担当し、私たちは創造的かつ戦略的なことに集中できます。
- 宇宙探査:ロボットはすでに火星を探査しており、これはまだ始まりにすぎません。ロボットは、将来、他の惑星での建造物の建設を支援するかもしれません。素晴らしいことです。
最終的な考察:ロボットを作る理由
ロボットは単なる機械ではなく、人間の知恵と創造力の証です。ロボット工学は、初心者でも、可能性の限界に挑戦している人でも、学び、革新し、変化をもたらす無限の機会を提供します。では、これらの開発が未来に与える影響に責任を持ちながら、構築、実験、夢を見続けましょう。可能性は無限です。最高の未来が待っていることを願っています。
参考記事:

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