ワイヤレス環境発電センサを使用したHVACの設置と改修の簡素化

以前、納屋や倉庫を改装してオフィスにしたようなおもしろい建物を拠点とする顧客をよく訪問していました。人数が少なければ問題ありませんが、近代的な暖房、換気および空調(HVAC)システムが導入される前の施設に何百人もの人が入るようになると、空気の循環が困難になります。健全な換気は誰にとっても重要です。よって、単なる快適さの問題ではすみません。古い建物には趣がありますが、HVAC導入に向けた改修は驚くほど難しいものでした。

たとえば、ある顧客は、とても大きな古いオフィスビルを拠点としていました。この会社は、この古い建物の近代化を試み、いろいろとやってのけました。その中で最大の問題の1つとなったのが換気です。同社は最新のHVACコントローラを備えたダクトと換気口を設置しましたが、

夏や冬に窓が開いていると実に大変な事態となりました。サーモスタットの設定にあわせてHVACシステムが作動するため、膨大な量の無駄なエネルギーが発生したのです。私は窓にリードセンサを設置して、窓が開いているかどうかを検知し、HVACシステムがスマートに機能できるようにしたいと思いました。しかし、当時の窓センサは、センサとHVACコントローラの間に信号と電源の両方を配線しなければなりません。その配線の見苦しさはどうにもできず、プロの仕事とは思えない有様でした。

その後、窓用のリードセンサは電池駆動式へと進化し、適切な受信機を備えたHVACコントローラに無線信号を送信できるようになりました。私は以前、友人の盗難警報装置の一部として、ワイヤレスリードセンサを設置したことがあります。電池駆動ワイヤレスセンサは、余分な配線が必要ないという利点がありますが、電池寿命が2年のため、電池交換のためのメンテナンスが必要です。

これらはもちろん小型電池で、小型であるがゆえの問題を抱えていました。つまり、メンテナンス用キャビネットの中でどこかに紛れ込んだり、行方不明になったりすることが多いのです。また、電池は保管している間に劣化していきます。私が取り付けたリードスイッチの1つが電池切れであることを発見したときもそうでした。さらに悪いことに、それは通常ではないサイズの電池だったため、交換用電池を買うためにお店まで探しに行かなければなりませんでした。そこで疑問が生じました。「必要とされるまで2年間も棚に放置されるかもしれない予備の電池を買っておくべきなのか?」

設置とメンテナンスのジレンマを解決する環境発電

図1:Illumra E9T-MDCCPワイヤレス磁気リードスイッチは、ドアや窓の開閉を検知するのに適しています。電池は不要で、上のスイッチに見える長方形の太陽電池で充電され続けます。(画像提供:Illumra)

最新の工学ソリューションでは、環境発電機能を備えたワイヤレス窓センサを設置することで、電池交換を完全になくすことができます。その好例が、IllumraE9T-MDCCPです(図1)。自己給電型ワイヤレス制御のメーカーであるIllumraは、902MHzワイヤレス窓/ドアセンサの包括的なファミリ(E9T-MDCCP/E9T-MCS)を提供しています。これらのセンサは、EnOceanプロトコルを使用して、環境に応じて最大60フィートの距離で互換性のある受信機に信号を伝送できます。

E9T-MDCCPは、スイッチ本体に搭載された長方形の太陽電池を使用して、小型の充電式電池を充電します。センサには磁気リードスイッチが搭載されており、付属の磁石に近づけると作動します。両センサは接着剤または不正使用できない安全ネジで取り付けられます。

動作中、リードスイッチの磁石がセンサから4.5mm以内にあれば、閉状態になります。閉状態になる際、リードセンサはかすかにカチっと鳴ります。開閉位置の切り替え時には、センサのLEDが点滅します。これにより、設置者がセンサを適切に配置することができ、システムの診断にも役立ちます。

E9T-MDCCPはフル充電すると、暗闇の中で最大5日間動作し続けることができます。充電式電池が完全に消耗した場合、スイッチが再び動作可能になるまでに必要な充電時間は、400ルクスの自然光または人工照明、周囲温度25°Cの環境下で2.5分未満です。太陽電池が安定して動作するために必要な時間は、200ルクスの照度で1日あたり約2時間のみです。定期的な電池交換は必要なく、唯一のメンテナンスは、スイッチと磁石が壁に固定されているか、安全ネジが壊されていないかを確認することです。

E9T-MDCCPは、-20°C~+60°Cでの動作が可能で、ほとんどのビルや企業のアプリケーションに適しており、部品倉庫のような温度管理されていない環境に放置されても、スイッチが損傷しないようになっています。

このセンサは窓やドアに使用でき、HVACに適していますが、それ以外にも、自動ドアの感知、冷蔵庫やセキュリティドア、スーパーマーケットの冷却器、警報システムなど、さまざまなアプリケーションで活用できます。

環境発電全般に興味のある方は、EnOceanの各種ワイヤレスモジュールおよび開発キットをご覧ください。ここでは、EDK350U Dolphinシリーズ 環境発電トランシーバ評価キットをはじめ、さまざまな製品が紹介されています(図2)。

図2:EDK350U環境発電キットには、ソーラーセンサ、機械式エネルギー発生器、センサアダプタなど、ワイヤレス環境発電設計のアイデアを検討し始めるのに必要なものがすべて含まれています。(画像提供:EnOcean)

EDK350U Dolphinキットには、デモボード、USBゲートウェイ、RFトランシーバモジュール、センサモジュールアダプタ、太陽電池式温度センサ、機械式エネルギー発生器、トランスミッタモジュールなど、必要なケーブルとソフトウェア開発インターフェースすべてが含まれています。

まとめ

従来のビルシステムは、外観、スタイル、従業員の快適性を犠牲にしない限り、近代化が困難に見えることがあります。最初にワイヤレスセンサが登場しましたが、今ではワイヤレスで「電池不要」のセンサがあります。適切に実行すれば、現在の近代化プロジェクトや将来の設計を改善し、効率的で信頼性の高い性能を、プロフェッショナルな外観と最小限のメンテナンスで提供することができます。

Illumraのワイヤレス環境発電用窓/ドアセンサがあれば、あの古いビルも簡単に近代化でき、皆が快適に過ごせただろうと思います。

著者について

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Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

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