超堅牢コネクタが示す技術の進歩

先ごろの引っ越しで、引っ越し業者がセットトップボックス(STB)の背面からHDMIコネクタを取り外しました。コネクタがネジで固定されていることに気づかず、引っ越しの「専門家」たちはケーブルとコネクタが緩むまで引っ張り続けました。私の抗議にもかかわらず、彼らは明らかに動くはずのないものを引っ張り続けたという事実と、最終的に諦めるまでコネクタがどれだけの衝撃に耐えることができたかという事実の、どちらが最も注目に値するかはわかりません。

ワイヤレス技術が現代社会で重要な役割を果たしているとはいえ、まだまだ有線の世界であることに変わりはありません。ワイヤレスの帯域幅は増加し続けていますが、ほとんどの場合、金属導体の帯域幅に近づくことはできません。また、ワイヤレス接続はここ数年で劇的に進歩しているものの、セットアップが難しく、動作が不安定になったりすることもあります。対照的に、ワイヤは頑丈で、設置が簡単で、信頼性が高いです。

ワイヤレスチップ、マイクロコントローラ、高速メモリデバイスのような華やかさはありませんが、高度な製造技術と材料を用いて製造され、同様に重要な役割を果たし、競争力のある価格を必要とする部品です。コネクタは、現代の電子デバイスを動かす縁の下の力持ちなのです。

コネクタの重要性

手際の悪い取り外しを行う専門家たちに対するイライラが収まったところで、コネクタが長年にわたって静かに、そして不可避的に進化してきたことを考えました。コネクタは、私が設計技術者としての基礎を築いた時代には、比較的地味なデバイスでした。RS232は最先端と見なされ、USBはまさにエキゾチックで、HDMIはコネクタ設計者でさえ想像もできないものでした。SamtecUSBR-A-S-F-O-VUのようなUSB-Aコネクタは、時の試練に耐えてきました(図1)。

図1:USBR-A-S-F-O-VUのような歴史あるUSB-Aコネクタは、比較的シンプルなデバイスでありながら30年近くも役立ってきました。(画像提供:Samtec)

コネクタは通常、設計のために選択される最後の部品のひとつであり、ほとんど後付けで、選択肢をじっくり検討して選択されることはほとんどありませんでした。それにもかかわらず、機器に不具合が生じると、まずコネクタのせいにされました。ケーブルから外して再度接続すると、オシロスコープでの不具合が直ることもありましたが、圧着不良やピンの破損は日常茶飯事であったため、通常はコネクタが完全に故障していました。しかし、少なくともコネクタを開けてはんだ付けすれば、満足のいく修理ができました。

今はそうではありません。現代のHDMIやその他の高速コネクタは、急速に進化する通信規格に対応するため、より多くのピン、より微細なピッチ、より高い信号の完全性、より広い帯域幅を提供しなければなりません。消費者による修理という選択肢はほとんどありませんが、ありがたいことに、品質基準により、最も単純なコネクタであっても、最も厳しい使用条件や、何年にもわたる嵌合および嵌合解除の繰り返しに、何ら欠けることなく耐えることが保証されているため、修理は必要ありません。

先進技術を示すコネクタ

Samtecから最近発売されたいくつかの製品は、コネクタ技術がいかに進歩しているかを示す好例です。その名が示すように、URSA I/O超堅牢ケーブルシステムは、高信頼性と高嵌合サイクルの超堅牢アプリケーションをターゲットとしています。たとえば、B1SDT-10-28-H-10.0-1は、ケーブルマウント、20極の長方形ソケット対ソケットコネクタです。このコネクタは、金メッキが施されたベリリウム銅コンタクトが特徴で、253ボルトAC(VAC)で1ピンあたり3.8アンペア(A)の定格があります(図2)。

図2:SamtecのB1SDT-10-28-H-10.0-1は、超堅牢アプリケーションをターゲットとした長方形のソケット対ソケットコネクタです。(画像提供:Samtec)

このコネクタシステムの心臓部は、CC508-01-H-M URSA I/O圧着コンタクトです(図3)。ハイパーボロイドコンタクトは、4点接続により、電気抵抗の低さと安定性、挿抜力の低減、振動や衝撃に対する安定した性能、高い嵌合サイクル数を実現しています。

図3:Samtecのハイパーボロイドコンタクトは、4つの接続ポイントを提供し、低抵抗で安定した電気抵抗を保証します。(画像提供:Samtec)

URSAファミリのケーブル対ケーブルおよびケーブル対ボードソリューションは、高密度接続を可能にする小型フォームファクタで信頼性の高い接続を提供します。電磁妨害(EMI)シールドにより、信号の劣化を抑え、安定した性能を実現します。5Gネットワーク、産業用、医療用、放送用など幅広い用途向けに設計されたこのコネクタは、1.00ミリメートル(mm)ピッチで、2列の省スペース設計が特徴です。宇宙飛行にも耐えられる堅牢さです。

P1PDT-10-28-H-10.0-B1はパネルマウントタイプのコネクタです。このタイプは、1RUパネル(29ケーブル×50 I/O)に最大合計1,450 I/Oの高密度接続が可能です(図4)。

図4:URSAパネルマウントソケットは、1RUパネルに最大合計1,450のI/Oを搭載し、高密度接続を可能にします。(画像提供:Samtec)

まとめ

コネクタが信号経路のアキレス腱であった時代はすでに終わりました。Samtecのようなメーカーの今日のコネクタは、最先端の材料と電気機械技術を採用し、宇宙という過酷な環境でも、最も厳しい条件下でも、堅牢な性能、信頼性、信号の完全性を保証します。これはもちろん、ユーザーが機械的な共感力を少しは持っていることが前提です。何事にも限界はあります。

著者について

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スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

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