重要なアプリケーションにおける絶縁性能の向上にシングルおよびデュアルゲートドライバを使用

データや電力を高電圧回路から低電圧回路に伝送しなければならない重要なアプリケーションは数多くあります。良い例としては、モータドライブ、データセンター、産業用オートメーション、およびソーラーインバータなどのグリッドインフラ機器などがあります。設計者は、信頼性の高い安定した電圧と電流、高速で完全性の高いデータ伝送を求めますが、制御できない高電圧過渡現象が高価なシステムに悪影響を与えることを望んでいません。落雷によって引き起こされるような電圧は、敏感なシリコンを容易に破壊し、データストリームを破損させる可能性があります。さらに、このような過渡現象はメンテナンスの作業員に対しても危険を及ぼす可能性があります。

過渡現象からの保護は、絶縁によって行われます。絶縁は、システム全体の2つのサブ回路を電気的に分離し、その間にはオーミックまたはガルバニック経路が存在しない(抵抗が無限大)状態をつくります。

安全な絶縁を実現するにはいくつかの方法があります。その中には絶縁型トランスやオプトカプラを使用した従来の方法も含まれます。ただし、コモンモード過渡耐性(CMTI)、クリーンな波形、小型、機能統合、高速スイッチング、低コスト、シンプルさ、信頼性、長寿命などの特性が優先されるアプリケーションでは、ゲートドライバが確立されたソリューションとなっています。

高性能絶縁アプリケーション用ゲートドライバ

絶縁型ゲートドライバIC(図1)は、絶縁レベル、伝搬遅延、寄生漏れインダクタンス、寄生入出力容量、CMTI、部品のサイズと厚さ、プリント回路基板(プリント基板)レイアウト、低電圧ロックアウト(UVLO)などの保護機能の有無など、さなざまな要因を制御できます。これらの特性を最適化することで、技術者はアプリケーションに合わせてゲートドライバの性能を最適化することができます。

図1:CMOS絶縁とUVLO保護を備えた一般的なシングルチャンネルゲートドライバのレイアウトを示します。(画像提供:Skyworks Solutions)

Skyworks Solutionsは、3~20ボルトCMOS入力、最大30ボルトのゲート駆動能力を備えた絶縁型ゲートドライバICを幅広く提供しています。1、4、6アンペア(A)のさまざまな構成があり、Si82AxSi82BxSi82CxSi82DxSi82ExSi82Fxがあります。(図2)。主な特長には、最大6キロボルトRMS(kVrms)の絶縁、200kV/マイクロ秒(kV/µs)のCMTI、45ナノ秒未満の伝搬遅延、GaN、IGBT、SiC、MOSFET技術への対応が含まれます。

図2:Si82Ax-Fxのシングルおよびデュアルチャネルゲートドライバは、1、4、6A出力をサポートしています。(画像提供:Skyworks Solutions)

これらのデバイスの電圧モード出力により、スイッチング性能が最適化され、さまざまなUVLOオプションと入力オーバーラップ保護により、安全な動作が保証されます。デグリッチオプション、出力の結合または分岐によるシングルチャンネル構成、統合型ミラークランプ、駆動するパワースイッチの種類に対応した各種UVLOが搭載されています。

Si82AxおよびSi82Dxは電源およびモータ制御アプリケーションをターゲットとし、Si82BxおよびSi82Exはパワースイッチ駆動要件を満たします。パワースイッチ駆動用Si82CxおよびSi82Fxの高性能バージョンは、SkyworksのSelVCD(Selectable Variable Current Drive)電流モード アーキテクチャを採用し、車載規格に適合しています。SelVCDは電流源として動作し、あらゆる動作条件下で厳しい目標値の許容範囲内で出力を維持します。

絶縁ゲートドライバの開始方法

設計者は、各ファミリの幅広いオプションの中から、特定の要件に最適なものを選択できます。たとえば、Si82AxファミリのSI82A30BCC-ISは、3.75kV、1Aのシングルチャネルデバイスで、スイッチング電源やモータ制御などのアプリケーションにおけるパワーMOSFETやIGBTの駆動に最適です。シングルまたは分岐出力(図3)構成で利用できます。

図3:SI82A30BCC-ISは、パワーMOSFETやIGBTの駆動に最適なシングルチャンネルデバイスで、シングルまたは分岐出力(図)の構成で提供されています。(画像提供:Skyworks Solutions)

Si82FxシリーズのSI82F29AGC-IS1は、MOSFET、IGBT、SiC、GaNスイッチングアーキテクチャ向けに設計された3.75kVのデュアルチャネルデバイスで、デュアル(図4、左)またはシングル(図4、右)の制御入力を備えています。出力段に採用されたSelVCD技術により、出力電流を8段階の選択可能なレベルで調整し、ゲート抵抗なしに、ミラー効果電流をクランプします。

図4 : SI82F29AGC-IS1は、MOSFET、IGBT、SiC、GaNスイッチングアーキテクチャ用のデュアルチャネルゲートドライバで、デュアル(左)またはシングル(右)の制御入力を備えています。(画像提供:Skyworks)

Skyworksは、Si82Fxシリーズ用の便利なSI82F39ABC-KIT評価キット(図5)も提供しています。Si82Fxはキットの中心にあり、周辺部品と機能により、技術者はチップのスイッチング、保護、絶縁機能を試すことができます。

図5:SI82F39ABC-KIT評価キットにより、Si82Fxシリーズのスイッチング、保護、絶縁機能を試すことができます。(画像提供:Skyworks Solutions)

まとめ

高電圧電源と低電圧回路間の絶縁は、データセンター、産業用オートメーション、医療、自動車などの重要なアプリケーションにおいて、システムとユーザーを保護するために不可欠です。Si82Ax-Fxゲートドライバは、これらのシステムがあらゆる周波数で効率的に動作するために必要な、優れた絶縁性能、クリーンな正弦波出力、柔軟性、信頼性を設計者に提供します。

著者について

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スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

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