オフボードAC/DC電源は幅広いオプションとコスト効率を提供

製造工学科を卒業した私は、最初の仕事の1つとして、シニアエンジニアがハイエンドの産業用比例積分微分(PID)コントローラ向けAC/DCスイッチング電源を設計するのを手伝いました。私の「手伝い」は、コーヒーカップの補充やブレッドボード部品の調達が主でした。しかし、彼は辛抱強く、知識豊富な指導者であり、数週間でゼロから電源を設計する上で、大学での1学期間よりも多くのことを学びました。

その後、そのシニアエンジニアから許可を得て借用したアーキテクチャを基に、自分でも1つか2つは使えるスイッチング電源の設計を完成させることができました。

それから数年後、私が勤務していた会社では、自社で作成するよりも市販のモジュラーAC/DC電源を購入する方がコスト効率が良いと判断しました。その結果、設計者にとっては少し面白みのないものとなりましたが、それでも、製品の仕様を満たす最高の市販ソリューションを選択するために、私たちの経験は依然として不可欠でした。

アプリケーションへの電源の適合

効率、入力突入電流、リップルおよびノイズ、起動時のオーバーシュート電圧などのエンジニアリングパラメータに関する知識により、市販のソリューションをテストし、検証することができました。これらのテストにより、ソリューションが産業用PIDコントローラの電力需要に適合していること、そして適切なレギュレーションと故障間隔(MTBF)の延長を実現していることを確認できました。

しかし、市販のソリューションをアプリケーションの製品仕様に適合させることは、言うほど簡単ではありませんでした。なぜなら、当時、各サプライヤが提供するソリューションのラインアップは、わずか数種類に限られていた傾向があったからです。その上、予算上の制約を考慮すると、その選択肢はさらに少なくなりました。これはしばしば、十分に機能するものの、妥協を強いられる電源を選択せざるを得ないことを意味します。

たとえば、コントローラの電流および電圧要件を十分に満たすものの、特に低負荷時には、効率的な出力範囲外で動作することが多い市販の電源を使用せざるを得ない場合もありました。その結果、不要な電力損失と熱管理上の課題が生じました。

選択肢の拡大

モジュラー電源の世界は、私が初歩的な設計を行ってから数十年の間に、良い方向に変化しました。現在では、市販の既製ソリューションの選択肢は驚くほど豊富で、予算が限られていても、幅広い製品から選択することができます。

たとえば、TRACO Powerの産業用AC/DC電源のラインアップを見てみましょう。すでに幅広いラインナップを誇るTXNシリーズに、新たに4つの電力レベルが加わりました。現在、出力は35W、200W、350W、800Wがあり、各電力レベルで出力電圧を12V、15V、24V、48Vから指定できます。35Wバージョンでは、3.3Vおよび5Vのオプションもあります。製品ラインアップの例としては、TXN 35-124(35W、24V AC/DC電源)、TXN 200-124(200W、24V)、TXN 350-115(350W、15V)(図1)、およびTXN 800-148(800W、48V)です。

図1:TXN 350-115 350W電源は、90~260VのAC入力から15V DCを出力します。(画像提供:TRACO Power)

電源は金属フレームに収められ、ネジ端子ブロックコネクタを採用しています。これは、同社が提供する中で最もコスト効率の高い密閉型AC/DC製品シリーズです。特長としては、3000V ACの強化I/O絶縁、伝導および放射エミッションを低減する内部EN55032クラスBフィルタ、100W以上のアクティブ力率補正(PFC)、IEC/EN/UL 62368-1安全認証、電磁両立性(EMC)に関するEN 61000-3-2への準拠などがあります。さらに、強制冷却用の内蔵ファンも装備しています。

性能と価格の両立

とは言え、TRACO Power TXNシリーズのコスト効率の高さは、性能面での妥協を意味するものではありません。たとえば、TXN 350-115の入力範囲は90~260VAC、動作温度範囲は-30~70°Cです。13.5~15.5Vの間で調整可能な公称出力電圧(Vout(nom))を22Aの最大出力電流(Iout(max))で供給し、最大出力電力は330Wです。

230V入力の場合、アクティブPFCは0.95です。電圧設定精度は±1%、レギュレーションは10~90%の負荷変動で1%、出力電圧リップルは最大150mVp-pです(図2)。この電源は、110~160% Iout(max)の出力電流制限と、110~140% Vout(nom)の過電圧保護を特長としています。MTBFは230,600時間です。

図2:TXN 350-115は最大出力電圧リップル150mVp-pを実現し、EMCの課題を軽減します。(画像提供:TRACO Power)

TRACO Powerユニットの平坦な効率曲線は、私が若い頃、低電力の電源を使用していたときに直面した温度と電力損失の課題軽減に役立ちます。約20%の比較的低い負荷でも、TXN 350-115は75%以上の効率を示します(図3)。

図3:TXN 350-115は、20%を超える負荷で75%以上の効率を示します。これにより、電力損失の課題が緩和されます。(画像提供:TRACO Power)

まとめ

オフボードAC/DC産業用電源をゼロから設計するのは楽しかったですが、既製のソリューションを利用すれば、プロジェクトの時間を短縮でき、エンジニアリングチームは最終製品の他の側面に集中することができます。さらに、今日の電源オプションは多岐にわたっているため、ほぼすべてのアプリケーションにおいて最適な性能と効率を提供するソリューションに近いものを調達することが可能です。

著者について

Image of Steven Keeping

スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

More posts by Steven Keeping(スティーブン・キーピング)
 TechForum

Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.

Visit TechForum