1ドルを切るマイクロコントローラが組み込みシステムの世界を覆す

私は組み込みシステムの設計者として何十年もの経験を持っていますが、マイクロコントローラの価格の下落ぶりには驚くものがあります。最近の低価格マイクロコントローラに目をやると、1個1ドル未満(それを大幅に下回るものも!)で販売されているものが数多くあります。ついに私は、1ドル未満のマイクロコントローラのリストを作ってみました。

ですが、このブログの目的は、低価格のマイクロコントローラを比較することではありません。そうではなく、これらのマイクロコントローラを他の方法と比較することです。マイクロコントローラを使用する開発プロジェクトで、誰もが最初に手がけるのは点滅するLEDでしょう。それを考えると、これらのマイクロコントローラを伝説の555タイマチップと比較してみるのが妥当だと思います。555タイマは、何十年も前に導入されて以来ずっと、LEDを点滅させるための「頼りになる」部品でした。

このデバイスは1972年に登場し、今は存在しない半導体会社によって市場に導入されました。このデバイス自体は今でも市場に存在しており、Texas InstrumentsNE555Dタイマチップは1ドルを切る値段で入手できます。この製品単価(数量単価)は、以下に挙げる最も安価なマイクロコントローラと同等なことに留意してください。また、555タイマチップでLEDを点滅させたいのなら、このチップだけではできません。他にいくつかの抵抗とコンデンサが必要になります。これに対してマイクロコントローラは、追加部品を必要としません。

しかも、555タイマが市場に出回ってから46年余りにわたり、電子機器関連の各種出版物が555タイマの回路設計のアイデアを発表してきましたが、マイクロコントローラのほうがはるかに広い多様性を持っています。

とは言え、555タイマは常に私の心の中にあります。555タイマは、すべきことを確実に、そして効果的に成し遂げます。

ただし、555タイマチップを置き換えてLEDを点滅させることは、安価なマイクロコントローラが持つポテンシャルの手始めにすぎません。マイクロコントローラは、比較的複雑な組み込みシステムを容易に制御できます。いくつかのパワーMOSFETの助けを借りてモータ制御にも使用できますし、簡単なHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を実装することもできます。

以下の4つのマイクロコントローラはすべて、少なくとも8ビットの分解能でA/Dコンバータ(ADC)を駆動するマルチチャンネルアナログ入力マルチプレクサを内蔵しています。これらのA/Dコンバータは、多くの組み込みシステムのアナログ設計を大幅に簡素化します。

このような低価格マイクロコントローラの場合、アナログ信号からデジタル信号への移行は、システムの信号処理チェーンのできるだけ早い段階で行われるべきです。これを考えるために、いくつかのMCUオプションを紹介します。

Silicon LabsEFM8BB10F8G-A-QSOP24R

EFM8BB10F8G-A-QSOP24Rマイクロコントローラは、Silicon Labsの「Busy Bee」デバイスファミリの1つです。これは、由緒ある8ビット8051マイクロプロセッサのアーキテクチャを基にしています。このファミリは、8キロバイトのフラッシュプログラムメモリと512バイトのRAMを持っています。このマイクロコントローラは25MHz(メガヘルツ)で動作し、パイプライン化された8051プロセッサコアを採用しているため、その命令の70%が1または2クロックサイクル(クロック周期)で実行されます。ペリフェラル(周辺デバイス)に関しては、EFM8BB10F8G-A-QSOP24Rマイクロコントローラには以下のものが用意されています。

  • I2C
  • SPI
  • SMBusポート
  • UART
  • PWMジェネレータ付き3チャンネルプログラム可能カウンタ/タイマ
  • 4つの16ビットタイマ
  • アナログ入力16チャンネルを備えた12ビットADC
  • 2つのアナログコンパレータ

これらのI/Oデバイスはすべて、マイクロコントローラの24ピンQSOPパッケージに収まります。Silicon Labsでは、Simplicity Studio 4開発スイートを提供していますが、これには、Keilコンパイラとアセンブラ、デバッガ、IoTアプリビルダ、エネルギープロファイラ、ハードウェアコンフィギュレータ、そして事前作成されたデモが含まれています。

Microchip TechnologyATTINY84A-SSUR

ATTINY84A-MMHは、Microchip(旧Atmel)の8ビットAVRマイクロコントローラファミリの1つです。この特殊なデバイスは、8Kバイトのフラッシュプログラムメモリ、512バイトのEEPROM、および512バイトのRAMを備えています。この8ビットAVRアーキテクチャは、120個の命令(ほとんどが1クロックサイクルで実行)と32バイトのレジスタファイルを特長としています。このマイクロコントローラは20MHzで動作します。ペリフェラルに関しては、ATTINY84A-MMHマイクロコントローラには以下のものがあります。

  • 8ビットおよび16ビットのハードウェアタイマ/カウンタが各1つ
  • 2つのPWMチャンネル
  • 8つのシングルエンドアナログ入力を備えた10ビットADC
  • プログラムを余計なものから守るためのプログラム可能なウォッチドッグタイマ

ソフトウェア開発サポートには、Cコンパイラ、マクロアセンブラ、プログラムデバッガとシミュレータ、および評価キットが含まれています。

Microchip TechnologyPIC10F220T-E/OT

MicrochipのPICシリーズは、低コストの組み込みシステムの開発者にとって、長い間人気のある選択肢でした。同社のPIC10F220マイクロコントローラは、命令用の256ワードのフラッシュメモリ(各命令ワードは12ビット幅)と16バイトのRAMを備えています。マイクロコントローラはシンプルな命令セット(命令の数は33個のみ)を持ち、分岐命令を除くすべての命令は1サイクルで実行されます。分岐命令には2サイクルが必要です。命令サイクルは、8MHzの内部クロックを使用して500ナノ秒です。これは6ピンデバイスなので、ペリフェラルはデバイスの4本のI/Oピンに多重化されています。ペリフェラルに関しては、PIC10F220T-E/OTには以下のものがあります。

  • 8ビットリアルタイムクロック/カウンタ
  • 2つの外部アナログ入力チャンネルを備えた8ビットADC
  • 最大4本の汎用I/Oピン

図1:MicrochipのPIC10F220T-E/OTマイクロコントローラは、4本のI/Oピンにいくつかのアナログ機能とデジタル機能を多重化しています。(画像提供:Microchip Technology)

MicrochipのMPLAB開発スイートには、Cコンパイラ、アセンブラ、リンカ、およびオブジェクトライブラリアンが含まれています。

Microchip TechnologyATTINY10-TSHR

本当に安価なマイクロコントローラを探しているのであれば、MicrochipのATTINY10-TSHRに勝てるものはないでしょう(図2)。MicrochipのAVRシリーズの中の、この6ピン、8ビットのマイクロコントローラには、愛すべき特長がたくさんあります。デバイスの54個の命令のほとんどは1クロックサイクルで実行され、デバイスは12MHzで動作します。この特殊なAVRバリアントは、1Kバイトのフラッシュ命令メモリと32バイトのRAMを持っています。6ピンデバイスに多数のI/Oサポートを実装させることは信じがたい話ですが、ATTINY10-TSHRマイクロコントローラは、4本のI/Oピンに次のようなペリフェラル補充を多重化して実現しています。

  • 1チャンネルの静電容量式タッチセンシング
  • 2つのPWMチャンネルを備えた16ビットタイマ/カウンタ
  • 独立したオンチップオシレータを内蔵したウォッチドッグタイマ
  • 4つのアナログ入力を備えた8ビットADC
  • 1つのアナログコンパレータ

図2:ATTINY10-THSRマイクロコントローラは、4本のI/Oピンに多数のペリフェラルを多重化します。(画像提供:Microchip Technology)

ソフトウェア開発サポートは、通常のコンパイラ、アセンブラ、リンカを含め、Atmel Studio 7.0ツールスイートを介して行われます。

まず、MCU抜きの場合を自問してみては

マイクロコントローラはかつては高価なデバイスでしたが、もはやそうではありません。上記4つのデバイスのような低価格マイクロコントローラのおかげで、今や組み込みシステムの設計手法が根底から覆りました。最近では、まず先にマイクロコントローラを使用することを考えるのが賢明です。低価格マイクロコントローラが、低コスト設計の最初の設計選択肢にならないことがあるなら、その理由を考えるのはそれからです。

著者について

Image of Steve Leibson Steve Leibson氏は、HPとCadnetixでシステムエンジニアを務め、EDNとMicroprocessor Reportで編集長として活躍し、XilinxとCadenceなどの企業では技術ブロガーを担当しました。また、同氏は、「The Next Wave with Leonard Nimoy」の2つのエピソードで技術専門家を務めました。同氏は、33年間にわたって、高速でかつ信頼性の高い優れたシステムを設計技術者が開発することを支援しています。
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