Murataコンポーネントが提供する糖尿病機器向け設計ツールキット

世界中で約6億人の成人が糖尿病を患っており、その数は2050年までに8億5300万人に達すると予測されています1。そのため、テレビ視聴者は、糖尿病管理を助ける薬剤の広告にさらされ、さらに最近では処方箋で入手可能な、あるいは一般健康管理用に市販薬(OTC)として入手できる持続血糖測定(CGM)機器の広告を目にする機会が増えています。製品設計者にとって、すでに数十億ドル規模の市場である糖尿病管理分野は、爆発的な成長が見込まれる分野であり、参入の機会が訪れています。

医療技術分野で最も成長著しい分野の1つであるCGMは、他の糖尿病管理アプリケーションと共に、生活の質を直接向上させる設計による革新の機会を示しています。これは、特に小型化技術、低消費電力ワイヤレス技術、長寿命バッテリ技術における専門知識を活用できる企業にとって、確かな商業的機会を示しています。

ユーザーと医療従事者の信頼を獲得することが極めて重要です。設計者は、デバイスが消費者の日常生活にどのように組み込まれ、携帯電話やその他のデバイスと接続し、ケアチームやリモート監視システムとデータを共有するかに細心の注意を払う必要があります。

システム統合は、業界が個々のデバイスから、ユーザー体験の向上、低遅延のデータ交換、ライフスタイルに溶け込むアプリケーションを重視するエコシステムへと進化するにつれ、システム統合の重要性はますます高まっています。シンプルなCGMパッチから閉ループ型人工膵臓システムに至まで、設計者は複数デバイスの相互運用性、継続的なデータフロー、患者の快適性を考慮しなければなりません。

糖尿病デバイス向けツールキットの探究

糖尿病管理アプリケーションは、信頼性の高い電源供給、精密なセンシング、そして完璧に機能するワイヤレス技術による中核的ニーズへの対応に基づいて構築される必要があります。

Murata Electronicsは、個人用糖尿病デバイスを設計するためのツールキットを提供しています。このツールキットは、開発の効率化と安全性の確保を図りながら、精度、信頼性、コネクティビティをバランスよく兼ね備えたコンポーネントで構成されています。同社の製品ラインアップには、設計の柔軟性と製品の小型化をサポートする小型の汎用コンポーネントが揃っています。

持続血糖測定やインスリンポンプは、精密に決められた間隔でセンサデータをサンプリングするマイクロコントローラに依存しています。これらのマイクロコントローラはまた、スマートフォンやクラウドサービスと完璧に同期する必要がある無線を介してデータを送信します。タイミングのわずかなずれが連鎖反応を引き起こし、血糖値測定の精度を損ねたり、重要な状況でワイヤレス接続が中断される可能性があります。

ウェアラブル機器における正確な測定、信頼性の高い通信、堅牢なワイヤレス接続を実現するため、Murataの水晶振動子、コンデンサ、RFフィルタの各種製品がご利用頂けます。

  • Murataの超小型XRCGBシリーズ水晶振動子(たとえばXRCGB24M000F2P00R0)は、マイクロコントローラとワイヤレスモジュールの双方に高安定クロック信号を供給します。0.079インチx 0.063インチ(2.00mm×1.60mm)という小型かつ薄型設計は、スペースに制約のあるウェアラブル機器に最適です。また、その高精度により、デバイス寿命にわたって一貫した測定サイクルと信頼性の高い通信が保証されます。
  • ウェアラブル医療機器は、小型バッテリで数日から数週間連続して動作できることが求められます。ノイズ、電圧低下、または不安定性は、測定精度に影響を与えたり、ワイヤレス性能の問題を引き起こす可能性があります。GRM033R60J225ME15D(図1)は、MurataのGRMコンデンサシリーズの一部であり、低等価直列抵抗(ESR)デカップリングを提供して変動を平滑化し、安定した電源を確保します。GRMおよびXRCBGコンポーネントは、信頼性の高いデバイスの基盤を形成します。

図1:MurataのGRMシリーズは、超小型積層セラミックコンデンサであり、小型化された医療機器やウェアラブルデバイスにおける高信頼性のデカップリングおよびフィルタリングに適しています。(画像提供:Murata Electronics)

  • コネクティビティは、次世代糖尿病アプリケーションにおける決定的な特長です。MurataのLBCA1HN2EG-917(図2)は、超小型で認証済みパッケージに収められたType 2EG Bluetooth Low Energy(BLE)5.2モジュールであり、ワイヤレス統合の簡素化と規制承認の迅速化を目指しています。これによりWi-Fiハードウェアの複雑さや開発負担を追加することなく、スマートフォンとの同期、リモート監視、ポンプ制御が可能となります。

図2:この図はMurataのType 2EG BLEモジュールが、個人用糖尿病デバイスに適した超小型パッケージであることを示しています。(画像提供:Murata Electronics)

  • BLF02RD331GNEDのようなフェライトビーズは、電源ラインや信号ライン上の高周波ノイズや過渡電流を抑制し、スイッチングノイズが無線周波数(RF)回路に漏れ込むのを防ぎます。
  • MurataのLQZ02HQ242A0RFフィルタは、Bluetoothの無線経路を整えながら、スイッチングレギュレータ、ディスプレイ、小型ポンプモータによって発生する可能性のある干渉を遮断します。このコンポーネントはBLFビーズを補完するもので、重層的なノイズ管理戦略を構築します。
  • MurataのNCU03XH103F60RLは、負温度係数(NTC)技術を採用したサーミスタの一種であり、熱ドリフトの補正、センサ精度の維持、さまざまな条件下でのバッテリやモータの安全な動作をサポートします。
  • 生産テストと現場診断は、糖尿病管理アプリケーションにとって重要な要素です。MurataのSWJシリーズRFスイッチコネクタは(たとえばMM8830-2600RK15(図3))は、非侵襲的テストと診断を可能にし、技術者がデバイスの筐体の完全性を損なうことなく、性能検証、診断実行、規格適合確認を迅速に行えるようにします。

図3:MurataのSWJシリーズRFスイッチコネクタは、アプリケーション筐体の完全性を維持しながら、非侵襲テストと診断を可能にします。(画像提供:Murata Electronics)

まとめ

個人用糖尿病デバイスの設計には、小型フォームファクタにおいて妥協のない精度、効率性、安全性が求められます。信頼性と安定性が求められる市場で成功する鍵は、適切なコンポーネントの選択にあるのかもしれません。Murataの水晶振動子、コンデンサ、サーミスタ、フィルタ、ビーズ、ワイヤレスモジュールの製品ラインアップは、設計者に信頼性の高いデバイスアーキテクチャを構築するための基盤を提供します。

リソース

The Diabetes Atlas

著者について

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Pete Bartolikはフリーライターで、20年以上にわたってITとOTの問題や製品について研究し、執筆してきました。それ以前は、IT管理専門誌『Computerworld』のニュース編集者、エンドユーザー向け月刊コンピュータ誌の編集長、日刊紙の記者を務めていました。

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