MicrochipのCuriosityボードでワイヤレス設計をクイックスタート

ワイヤレス接続はユビキタスで、消費者にとって使いやすくなっていますが、RFエンジニアリングの経験が浅い場合、ワイヤレスプロジェクトの設計はまだ困難です。

市販のモジュールは、通常、組み込みプロセッサ、トランシーバ、RFチューニング回路、電源管理、さらにはアンテナを1、2個を内蔵しており、RF設計とテストの多くが済んでいるため、作業が容易になっています。しかし、プロトタイプの中には、 Microchip TechnologyWBZ451PE-I (図1)のように、モジュールを使用しても成功するように、設計の細部にまで注意を払う必要があるものもあります。

図1:WBC451PE-1モジュールはワイヤレス製品の製造をより身近なものにしますが、油断すると落とし穴があります。(画像提供:Microchip Technology)

基板上のモジュールの向き、グランドプレーンの配置、電磁妨害(EMI)シールド、他のコンポーネントの位置、プリント回路(PC)基板の配線インピーダンス、その他多くの要因など、単純なことが関係してきます。そのため、RFモジュールを使用して上手に設計されたワイヤレス製品は、設計者が細部にそれほど注意を払わなかった製品に比べ、より広い範囲、より高いスループット、より低い消費電力を示すことができます。

コーディングに要する時間

ソフトウェアもまた、製品全体の性能において重要な役割を果たします。ワイヤレス製品は通常、RFプロトコルスタックおよびアプリケーションソフトウェアの両方が必要です。

Bluetooth Low Energy(LE)やZigbee、独自の2.4GHzプロトコルなどのRFプロトコルソフトウェアのコードを書くことは可能ですが、実績のある成熟したスタックは通常、トランシーバメーカーから提供されるか、オープンソースのライブラリから入手できます。これがおそらく最も費用対効果が高く、手っ取り早い方法でしょう。

無線リンクを介して無線パケットを送信することは1つのことであり、それらが有用なペイロードを確実に運ぶこととは全く別のことです。アプリケーションコードによって、データのタイプ、優先順位、フォーマット、送信頻度、その他のパラメータが決まります。たとえば、温度、湿度、心拍数などの情報を送信するような、比較的単純なことを行うかもしれません。より複雑なアプリケーションでは、音声ストリームの送信や、機械の振動センサからの複数のリアルタイム周波数の送信を要求するかもしれません。

RFプロトコルおよびアプリケーションソフトウェアは、ハードウェアと同様に製品の性能に影響を与える可能性があります。たとえば、アプリケーションコードの書き方が悪いと、RFプロトコルスタックが常に中断され、スループットが損なわれる可能性があります。あるいは、アプリケーションソフトウェアが無線機のデューティサイクルに悪影響を与えるかもしれません。たとえば、必要以上に頻繁にデータを送信するよう無線機に指示し、不必要に消費電力を増加させるかもしれません。

ワイヤレスプロジェクトの支援

良いニュースは、ワイヤレスプロジェクトに着手する際、助けを求める場所がたくさんあるということです。メーカー各社は、ハードウェアの設計、プロトコル、アプリケーションソフトウェアの例について積極的に支援しています。

ハードウェアの支援は、評価キットという形で提供されることが多く、対象となる無線トランシーバやモジュールを基にした完全に動作する設計が可能です。シリコンベンダーは、多くの場合、プリント基板のガーバーファイルおよび評価キットのコンポーネントを指定した部品表(BOM)を提供し、製品をハードウェアリファレンスデザインとして簡単に使用できるようにしています。評価ボードの設計で極めて重要なのは、アンテナの位置です。最適なアンテナ感度を確保するためには、グランドプレーンと他のコンポーネントとの十分なクリアランスが必要です。メーカーのレイアウトを使用することで、アンテナ性能の低下を防ぐことができます。

Microchip Technologyの EV96B94A WBZ451 Curiosityボード は、完全な評価キットの一例です(図2)。この評価ボードにより、エンジニアはスマートホームや産業用オートメーションアプリケーション向けのBluetooth LEやZigbeeプロジェクトの試作が容易になります。Curiosityボードの心臓部には、 IWBZ451PE-I Bluetoothトランシーバモジュールが搭載されています。このモジュールはPIC32CX-BZ2をベースにしており、Bluetooth LE(バージョン5.2まで)やZigbee(バージョン3.0まで)などのマルチプロトコル無線インターフェースをサポートし、RFトランシーバや電源管理ユニット(PMU)も管理できる汎用、低コスト、32ビットマイクロコントローラです。

図2:WBZ451PE-Iモジュールを搭載したEV96B94A Curiosityボードの上面図。最適な性能を確保するため、モジュールに内蔵されたプリント基板アンテナのクリアランスに注意してください。(画像提供:Microchip Technology)

WBZ451PE-Iモジュールはマイクロコントローラを内蔵し、プリント基板アンテナまたは外部アンテナ用u.FLコネクタのいずれかをサポートします。このモジュールには、A/Dコンバータ(ADC)などの標準的なマイクロコントローラ周辺モジュールや、シリアルペリフェラルインターフェース(SPI)、集積回路間インターフェース(I2C)、クアッドSPI(QSPI)、ユニバーサル非同期レシーバトランスミッタ(UART)などのインターフェースが搭載されています。

Curiosityボードには、Microchip製の外付けQSPIフラッシュメモリチップ、アナログ電圧温度センサ、外部プログラマ/デバッガ用の10ピン Arm シリアルワイヤデバッグ(SWD)ヘッダも搭載されています。

プロトタイプ開発の準備

Curiosityボードの使い方は比較的簡単です。このボードが主なハードウェアとなりますが、PCやAndroidまたはiOSのBluetooth対応スマートフォンに接続するには、Type-AオスをMicro-Bに変換するUSBケーブルも必要です。開発に必要なソフトウェアには、MPLAB統合開発環境(IDE)、MPLAB XC32コンパイラ、PKOB4ツールパック、およびすぐに使えるデモが含まれます。外部5ボルト電源または4.2ボルトのLi-Poバッテリからボードに電源を供給できます。Curiosityボードのハードウェアブロック図を(図3)に示します。

図3:Curiosityボードのハードウェアブロック図は、外部5ボルト電源またはLi-Poバッテリから電源を供給する方法を示しています。このボードには温度センサとRGB LEDも内蔵されており、サンプルプログラムで使用することができます。(画像提供:Microchip Technology)

ボードには、統合プログラマとデバッガ(PKOB4ツールキットの一部)が含まれています。このデバイスは、micro-B USBコネクタを介してホストPCからWBZ451PE-Iモジュールのプログラミングおよびデバッグをサポートします。デフォルトでは、オンボードデバッガはWBZ451PE-1モジュールのプログラミングピン(SWDIOおよびSWDCLK)に接続されています。

このボードには、Bluetooth LEとZigbeeの一般的な2つのユースケースを1つのアプリケーションで実証するソフトウェアが搭載されており、両方のインターフェーススタックを同時に実行することができます。具体的には、Bluetooth LEセンサ監視、Bluetooth LE照明制御、Zigbee照明制御および監視をサポートします。センササンプルは、Curiosity Boardのオンボード温度センサからデータを取得し、完全に機能するBluetooth LE温度センサを実装しています。このボードにはRGB LEDも搭載されています。

Zigbee照明制御ソフトウェアの例には、ボード上のRGB LEDの完全なBluetooth LE制御が含まれています。Bluetooth LE経由のZigbeeコミッショニングは、Bluetooth LEリンクを使用してZigbeeコミッショニングデータを交換します。FreeRTOSではZigbeeとBluetooth LEタスクが同時に実行されます。図4の「照明」(ボード上のRGB LEDで表される)は、Bluetooth LEまたはZigbeeネットワークから制御できます。一度接続すれば、Bluetooth LE接続を介して、LEDの明るさ、色、オン/オフ状態をコントロールできます。

図4:Curiosityボードによる照明制御の例は、ZigbeeとBluetooth LEスタックの同時動作を示しています。(画像提供:Microchip Technology)

例で遊んだ後、自分のコードで実験することができます。経験の浅いプログラマ向けに、Microchipはアプリケーションビルディングブロックを提供しています。これらのコンパクトなトレーニングモジュールは、WBZ451PE-IモジュールのBluetooth LE機能に焦点を当てています。ビルディングブロックを進めることで、ソフトウェア、MPLAB Code Configurator、および関心のある機能を実装するために必要なアプリケーションプログラミングインターフェース(API)に慣れることができます。

まとめ

ワイヤレス設計は、経験の浅い人にとっては困難なものですが、チップベンダーの評価ボードやRFモジュールを使えば、はるかに容易になります。さらに、メーカーは実績と信頼性のあるRFプロトコルスタックを供給し、より複雑なアプリケーションのベースとなるサンプルやビルディングブロックを提供することで、アプリケーションソフトウェアを簡単に始められるようにしています。

著者について

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スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

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