ヒートシンクからグリースを取り除く

私は約50年間、アルミヒートシンクにヒートシンクコンパウンドを塗り続けてきました。ヒートシンクコンパウンドを初めて塗ったのは、1970年に母のためにHeathkit®電子レンジを作ったときでした。電子レンジの重い金属製シャーシにボルト締めする前に、電子レンジのマグネトロン電源の12,000ボルト、1アンペアの巨大なダイオードモジュールの底部にヒートシンクコンパウンドを塗る必要がありました。当時は、電子レンジを自分で修理できるだけでなく、低コストでキットから組み立てることもできました。Heathkit電子レンジの当時の販売価格は399.95ドルでした。組立済み電子レンジの価格はさらに高くなります。

電子レンジキットが梱包された箱は非常に大きくて重い(97ポンド)ため、ケンタッキー州ルイビルからミシガン州ベントンハーバーまで運転してHeathkitの工場で電子レンジを受け取り、母の1967年式ポンティアックカタリナステーションワゴンの後部に積み込んで、翌日は帰路につくというのがせめてもの最良の方法のようでした。私が運転免許証を取得したばかりだったことを考えると、その大変さがお分かりいただけると思います。

ドライブ旅行!

この最初の2段落は、時代遅れの過去のものであふれています。ベントンハーバーにあったHeathkitの工場とショールームはだいぶ前に閉鎖されました。2010年10月31日にポンティアックは操業を停止し、カタリナステーションワゴンなどの自動車は一切製造されなくなっています。さらに、キットで電子レンジを組み立てることもできなくなりました。工場で組み立てられる新しい製品が非常に安価になったため、そうする必要もなくなっています。

とはいえ、ヒートシンクコンパウンドは、半世紀前と変わらず不便であるにもかかわらず、今でも使用されています。それは、白くてねばねばしており、何にでもくっつくように見えます。それでも、効果があるがために使用され続けています。事実、PC用の強力なマイクロプロセッサが登場したことにより、ヒートシンクコンパウンドは図らずも電子工学におけるジグソーパズルの重要なピースになりました。名前に「カラット」、「ダイヤモンド」、「シルバー」などの華やかな言葉が使われている魅惑的な高性能熱コンパウンドは、可能な限り最高のクロック速度と可能な限り最低の動作温度でシリコンを操ろうとするPCゲーマーやプロセッサオーバークロッカーにより、絶え間なくレビューされたり、熱心に議論されたりしています。

なぜそんなに大騒ぎするのでしょうか?今でもヒートシンクが必要なのは一体なぜでしょうか?では、互いに押し付けられた2つの金属表面の話から始めましょう(図1)。一方の金属は半導体部品を表しており、他方はヒートシンクです。2つの表面がフラットで密着している場合は、熱は双方間の機械的インターフェース全体をスムーズに流れます。ただし、実際の表面は決して完全にフラットではありません。多くの真剣なオーバークロッカーのように2つの表面を加工したとしても、微小な隙間が残ります。地球上では、そのような隙間はほとんどの場合空気で満たされています。空気には断熱性能があるため、エアギャップが存在すると熱はスムーズに流れません。宇宙空間では、それらの隙間は真空で満たされ、非常に優れた断熱材になります。魔法瓶について考えてみてください。魔法瓶は真空を断熱材として利用しています。

図1: 金属表面が密着する部分では熱がスムーズに流れますが、エアギャップがある部分ではスムーズに流れません。(図提供: Parker Chomerics

私が実際に経験する前から数十年にわたって使用されていたヒートシンクコンパウンドは、空気よりもはるかに効果的に熱を発散させる物質を使用して隙間を埋めるように設計されています。長年にわたり私はヒートシンクコンパウンドの塗り方についての技術をいくつか習得してきました。

最初に、ゴム手袋またはニトリル手袋を使用して、コンパウンドが指につかないようにします。ヒートシンクコンパウンドの使用について議論するオンラインチャットの一部にも書かれているように、すぐに危険性が生じるというわけではありません。かつて一部の熱コンパウンドにベリリウム(優れた熱特性があるものの今では危険と考えられている)が含まれていたのは事実ですが、現在一般的に使用されている熱コンパウンドには含まれておらず、しかもそうなって以来長年が経過しています。とはいえ、現在の熱コンパウンドも指や衣服に付着すると取り除くのが困難なので、手袋をはめて注意深く使用してください。

次に、ヒートシンクコンパウンドを可能な限り薄く塗るようにします。隙間を埋めるために塗るのであり、部品とヒートシンク間に潤滑性を持たせることが目的なのではありません。ほとんどの場合、熱発生部品の金属面と金属ヒートシンクを可能な限り互いに密着させる必要があります。

私からの別の重要なアドバイスは、用途により適したヒートシンクコンパウンドの代替品がないかを確認することです。Parker ChomericsのCHO-THERM絶縁パッドなどの薄型シリコン熱パッドは数十年にわたって販売されています。ただし、現在使用されている高性能半導体の数が急増していることにより、熱管理製品のベンダーはあらゆる種類の興味をひく代替品の開発に注力しています。

部品によって放散される熱の量が25ワット未満である場合は、Parker ChomericsのTHERMATTACH T411およびT418テープなどの放熱テープを使用できます。これらのテープは両端に接着剤がコーティングされているため、部品とそのヒートシンク間の熱経路を提供するだけでなく、ファスナーハードウェアの必要性を低減または排除します。しかも、これらのテープは簡単に扱えます。

ヒートシンクと電子部品がフラットで、すでに良好な熱コンタクトが保たれている場合、放熱テープは使いやすいシンプルな選択肢になります。ただし、多くの場合、熱発生部品とヒートシンク間には大きな隙間が生じます。こうした状況に適した熱コンパウンドの代替品もあります。隙間が大きい場合は、サーマルパッドを使用できます。サーマルパッドはサーマルシートや放熱テープと同様に機能しますが、サーマルパッドはより厚く適合性が高いため、数ミリメートル単位の隙間も埋めることができます。サーマルパッドの例として、Parker ChomericsのTHERM-A-GAP 974および976熱伝導性充填パッドがあります。

さらに、高度なマルチコアPCやサーバCPU/GPUを含む高性能半導体向けにWakefield-VetteulTIMiFluxサーマルシートのような相変化材料を利用できます。Parker ChomericsTHERMFLOWというブランドで、サイズに合わせてカット可能なシート形状の相変化材料を製造しています。また、多くの標準的な半導体パッケージに合わせて事前にカットされた相変化材料も入手可能です。半導体部品とヒートシンクの間に適切にカットされた相変化材料シートをはさみ、ファスナーでしっかり固定するだけです。

相変化材料は室温ではやや硬いため適用するのは難しくありませんが、溶融温度に達すると熱伝導グリースのように柔らかくなり、小さな隙間も埋めることができます。相変化材料は、グリースの高い熱性能と「剥離紙を剥がすとすぐ貼れる」サーマルパッドの扱いやすさを組み合わせています。

隙間がかなり大きい場合は、Parker ChomericsのTHERM-A-FORMなどの「フォームインプレイス」熱コンパウンドを利用できます。これは、2つの部材からなるシリコーンポリマーで、2つの部材を混合する双筒式分注カートリッジで提供されます。熱コンパウンドは塗布後に硬化します。1つのヒートシンクで高さの異なる複数の熱発生部品に対処する必要がある場合、熱コンパウンドは特に効果的です。部品の高さが非常に均一で、ヒートシンクがさまざまな部品に正確に合致する場合でも、埋める必要のある隙間は存在します。図2は、「フォームインプレイス」熱コンパウンドを使用して、1つのヒートシンクと複数の電子デバイスを熱的に結合させる方法を示しています。

図2: 熱コンパウンドは、1つのヒートシンクを高さが異なる複数の電子デバイスに取り付ける場合に生じるような大きい隙間も埋めることができます。(画像提供: Parker Chomerics)

最後に、最新のサーマルインターフェース製品として、Panasonic Electronic ComponentsのEYG-S182303DPなどのグラファイトシートがあります。これらの超薄型グラファイトポリエステルシートには、銅よりもはるかに優れた熱伝導性があり、カットしてどのような用途にも適合させることができます。グラファイトシートは、PCプロセッサのオーバークロッカーたちが注目する最新のサーマル製品です。なぜなら、グラファイトシートは放熱性能に非常に優れており、なおかつ再利用可能だからです。これは、次世代プロセッサの登場後すぐに新しいプロセッサと交換する場合に重要になります。

結論

ヒートシンクコンパウンドは何十年もの年月を経た今でも使用され続けています。ヒートシンクコンパウンドは変わらず効果を発揮していますが、調査に値するサーマル制御の優れた代替品も多く登場しています。ただし、ヒートシンクコンパウンドを使用し続けるなら、手袋をはめることを忘れないでください。

著者について

Image of Steve Leibson Steve Leibson氏は、HPとCadnetixでシステムエンジニアを務め、EDNとMicroprocessor Reportで編集長として活躍し、XilinxとCadenceなどの企業では技術ブロガーを担当しました。また、同氏は、「The Next Wave with Leonard Nimoy」の2つのエピソードで技術専門家を務めました。同氏は、33年間にわたって、高速でかつ信頼性の高い優れたシステムを設計技術者が開発することを支援しています。
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