DigiKeyで行われるSiTime製MEMS発振器のカスタムプログラミングについて
シリコンMEMS発振器は、アプリケーションをより高い品質基準に適合させようとする設計者によって、タイミングソリューションの選択肢になる機会がますます増えています。これはタイミング精度の向上に留まらず、早期に故障しない、幅広い動作環境に対応できる、より長いバッテリ寿命を持つ、サイズの小型化などが求められる製品の開発にまでおよびます。これまでのところ、SiTimeは、シリコンベースのタイミングソリューションのシェア90%を押さえる市場リーダーであり、10億ユニットを優に超える出荷を行っています。
MEMS発振器は、その設計および構造により、本質的に従来の水晶共振子よりも優れています。標準化が進み、製造工程の複雑さが低減されたことにより、MEMS発振器は汚染の機会に曝されることが少なくなります。その結果、DPPM(Defective Parts Per Million、100万個あたりの欠陥数)およびMTBF(Mean Time Between Failures、平均故障間隔)、すなわち品質および信頼性が30倍優れています。また、ほとんどの環境条件に対しても、はるかに堅牢です。MEMS発振器は、共振子と発振器回路の間に露出したPCB接続部がなく、発振器回路が電気的ノイズの多い状況向けに最適化されているため、EMI(Electro-Magnetic Interference、電磁干渉)にそれほど敏感ではありません。また、質量が水晶共振子の数千分の一であるため、衝撃や振動の影響も大幅に小さくなります。同様な設計上の特長により、動作温度と基板ノイズに対してもそれほど敏感ではありません。
水晶共振子には1つ明白な利点がありますが、それはMEMS発振器よりもかなり安価であることです。これは多くの人にとって、上で述べた多くの利点を無視して水晶を使うもっともな理由となりうることであり、たしかにアプリケーションによっては最高の品質、信頼性、堅牢性を備えた部品は必要ありません。しかし、部品の初期コスト以外のコストについても必ず考慮する必要があります。第1に、水晶共振子では正しい共振子の選択だけでなく、コールドスタートの不具合、水晶振動子のミスマッチ、EMI基準への不適合などのよくある問題を防止および克服するために多くの工学上の取り組みが必要です。それに対してMEMS発振器では、「プラグアンドプレイ」式のためシステム設計が大幅にシンプルになり、前述の問題がなく、始動が保証されます。第2に、フットプリントが小さく、多数の負荷を駆動でき、負荷コンデンサが不要であるため、MEMS発振器は占有基板面積が大幅に小さく、全部品の総コストを低減できる場合があります。最後に、SiTime製MEMS発振器はプログラマブルであるため、利用範囲が広く、アプリケーションの設計を柔軟にでき、市場投入までの期間を短縮できます。
完全なタイミングリューションであるSiTimeの発振器は、MEMS共振子とプログラマブルCMOS IC(発信回路、PLL(Phase-Locked Loop、位相ロックループ)、温度補償、電圧レギュレータ、フィルタを内蔵)を同じパッケージ内に組み合わせたものです。各種共振周波数を得るために異なった部品を製造しなければならない水晶共振子とは対照的に、MEMS発振器は現場でプログラム可能な(「ブランク」な)発振器を一括製造し、各種出力周波数を発生させる異なった構成にプログラミングする方法で作られます。周波数に加えて、電源電圧、周波数安定度、出力駆動強度(立ち上がり時間、立ち下り時間)など他の多数のパラメータが設定可能です。SiTimeはあらゆる発振器タイプ(例: TCXO、VCXO、DCXO、OCXO、SSXO)を網羅する複数の発振器シリーズと、低消費電力、車載用、堅牢化などの専門化カテゴリの製品を生産しています。現在、数十の発振器シリーズと数百のブランク品番があります。この比較的小さなブランクのセットから、数十億の品番が生成できます。
例として、ブランク品番SIT2001BI-S1-XXX-000.FP000を考えてみましょう。これは産業用温度範囲に対応するSiT2001標準シリーズのSOT23発振器です。このシリーズの品番の各部説明を、下の図1に示します。周波数が6桁の精度で、1MHz~110MHzの範囲から選択できることに注意してください。これは、この単一の物理的部品で総数109,000,001の周波数を発生させられるということです。また、「機能ピン」の3つの選択肢、「電源電圧」の6つの選択肢、「周波数安定度」の3つの選択肢、「出力駆動強度」の9つの選択肢も考慮すると、この1つのブランク部品から529.74億個の品番を派生させられることがわかります。
図1:品番の説明は、SiTime製発振器SiT2001Bシリーズのデータシートより抜粋。(画像提供:SiTime)
これらのブランク部品は、SiTimeの工場で量産数量の場合、3~5週間のリードタイムでプログラム可能です。現時点までに、DigiKeyはこれらのSiTime製プログラム済み部品を注文し、各シリーズで特に需要の多い発振器構成の在庫を維持しています。これは、当社が水晶共振子のようなプログラム不能部品を取り扱う方法と違いはなく、お客様は標準構成の発振器を注文することもできます。しかしながら、お客様がどのようなカスタム構成をお求めの場合でも、最小数量の大きな注文に関して3~5週間のリードタイムをお待ちいただく必要があることになります。こうしたカスタム要求を行うと、その品番が当社のカタログに追加されますが、それらの注文頻度はあまり高くないため一般に在庫は保持していません。DigiKeyでは、総計176,509種類のSiTime製発振器の品番をウェブサイトに記載していましたが、そのうち5,913種類(わずか3.35%)のみに在庫がありました。
こうした問題を克服し、SiTime製発振器のプログラマビリティを最大限に活かすため、当社は最近、SiTime製品のプログラミング専用の自動プログラミング装置を倉庫に導入しました。この装置(図2)は現在、8個のプログラミングソケットを使用し、1時間あたり約1,500ユニットのプログラミングを行えます。現在では、当社カタログにある品番の大多数について、わずか24~48時間のリードタイムで最小数量制限なしに注文可能です。DigiKeyは、SiTimeの工場でプログラム済みの製品よりもブランク製品の在庫を保持して、注文に応じてプログラムしていきます。これはまた、当社が現在、当社カタログに掲載されたSiTime製発振器のほぼすべてを事実上在庫にもっているということであり、例外は工場でのプログラミングが必要な特殊シリーズだけです。つまり、当社はカスタムプログラミングへの切り換え以降、当社システムに登録されているSiTime製発振器の(わずか3.35%ではなく)99%について在庫を維持しているのです。
SiTime製発振器の注文手順に変更はなく、カスタム注文は現在、DigiKeyのTechForumにあるSiTime Programmable Oscillatorのカテゴリから行う必要があることに注意してください。注文依頼を送信すると、即座に電子メールがアプリケーションエンジニアリング技術者に送信されます。技術者は新しい品番を確認して、DigiKeyのウェブサイトにそれを追加します。
図2:ブランク発振器をプログラミングソケットの1つに配置している、DigiKeyの自動プログラミング装置の写真。(画像提供:DigiKey)
SiTimeのMEMS発振器は、従来のタイミングソリューションに取って代わる有力な製品です。品質、信頼性、堅牢性に勝るだけでなく、統合化されたプログラマブルな設計でエンジニアリングコストが高くなく、占有基板面積の小ささ、設計柔軟性においても凌駕しています。発振器ファミリの包括的なコレクションに広がる数百種の基本品番から、数十億種の一意構成の品番を派生させることができます。しかし、この可能性を十分に活かすディストリビュータがなければ、すぐに入手できるのは標準構成の発振器だけです。実際、SiTime製発振器専用に自動プログラミング装置を導入する以前は、一般的でないカスタム構成の製品は量産数量かつ相当なリードタイムを要して初めて入手できました。しかし今では、DigiKeyの迅速な出荷とカスタムプログラミング能力によって、お客様は事実上、いかなる構成のSiTime製発振器でも、任意の数量で数日中に入手できます。
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