クーロンカウンティングでリチウム電池のフィットネス!詳細は記事で!
かつてはエンジニアは「ノートPCは何台必要だろうか」とよく自問したものです。この問いは現在では「タブレットは何台必要だろうか」となります。筆者の最新機種は、RCAのAndroid Marshmallow搭載コンバーチブル型12インチタブレット(取り外し可能キーボード装備)という優れものです。打ち合わせの最中に重要なメモをタイプしているときは(「マーケティングをもっとソリューション中心に再構築」とか「もっとチキンを食べる」とか)、普通の薄型ノートPCのように見えます。ときおり、チームメンバーにプレゼンテーションをしなければならないことがありますが、その場合はディスプレイをキーボードから取り外し、作成したグラフィックを説明します。もちろん誰も筆者の話を(両親のようには)聞いていません。その代わりに「それは何ですか」と聞いてくるのです。悲しいことに、これは筆者のすばらしく説得力のあるPowerPoint資料のことを指しているのではなく、タブレットのことを知りたがっているのです。
そこで話は筆者のタブレットのことになり、彼らに『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』の一部を昼休みが始まるまで見せることになります。 その後、タブレットの画面が暗くなっていると、スリープから復帰させるため電源ボタンに短くタッチし、フリーズしていませんようにと固唾をのんで見守ります。これはAndroidの「Sleep of Death(スリープ死)」またはSOD(頭字語があれば、こうに違いありません)と呼ばれています。大丈夫です。修復方法はわかっています。翌日、このタブレットを100%まで充電してから画面をオンにして映画(『バカルー……』)を再生しながら2%まで放電し、次に一気に100%まで充電するのです。年に2回、これをするとタブレットは異常停止しなくなり安定度が増します。そこで疑問に思うのが、「どうしてこれが効果があるのか」ということです。
筆者は最近、Digi-Key向けにウェアラブル機器の設計に関して3部シリーズの受賞記事(筆者の心の中ではそうなのです)を執筆しました。そのパート2「Protect and Recharge Batteries for Long Life(電池を長寿命化する保護と再充電)」の中で、リチウムイオン電池と電池ゲージについて分析しました。実は、インターネットの多くの人が信じていることとは異なり、タブレットやウェアラブル機器のメインプロセッサは電池の充電レベルおよび状態を監視しておらず、別のチップがこれを行っています。電池駆動のポータブルデバイスのほとんどはリチウムイオン電池を使用しており、そうしたデバイスの多くはMaxim Integratedの電池管理チップを内蔵しています。ポータブルデバイスの電源がオフになっていると思っているときでも電池管理チップは動作中で、常にリチウムイオン電池の状態を監視しています。
リチウムイオン2次電池の充電レベルの測定は、最大電圧の割合といった単純な問題ではありません。3.7Vリチウム電池が3.1Vの場合、この電池の充電レベルは84%ではありません。これは、リチウムイオンセルは多くの場合、3.0Vで使用不能と見なされるためです。しかし、14%としても正しくはありません。では、実際にはどのようにしてリチウムイオン電池の残り容量を知るのでしょうか。
それは、クーロンカウンティングと呼ばれています。電池管理チップは基本的に電池に入って出ていく電荷を測定します。というより、クーロンカウンティングでは、時間経過に伴ってリチウムイオン電池に入り、出ていく総電流フローおよび電圧を追跡して電池の残り容量を求めるというべきでしょう。
単純化した例で言うと、完全充電された電池が200mAを48時間供給して完全消耗したら、電池容量は、200mA x 48時間 = 9.6アンぺア時(Ah)ということになります。実際のクーロンカウンティングはもっと複雑であり、そのために数学的演算ができる専用チップが必要です。Maxim IntegratedのMAX17303X+は、そのようなチップです。図1に示す応用回路では、リチウムイオン電池に流れ込んで出ていく電流が下部のセンス抵抗で測定されます。
図1:Maxim IntegratedのMAX17303X+リチウムイオン電池管理チップは容易にマイクロコントローラにインターフェース接続でき、電池に入って出ていく電流を追跡します(画像提供:Maxim Integrated)。
MAX17303X+はプログラム可能であり、I2Cシリアルインターフェースでマイクロコントローラと接続します。電池計算用の内部プロセッサとともにRAMおよび不揮発性メモリを備えています。このチップは、放電時に電池から出ていき、充電時に電池に入る全電流および電圧を追跡します。Maxim Integratedは、同社独自の電池ゲージアルゴリズムであるModelGauge m5により、クーロンカウンティングを強化しています。
不揮発性メモリは、電池の電圧、電流、温度の最大値および最小値とともに、電池の電力がなくなった場合に維持する必要のある、収集した電池の状態情報を保管します。多くのリチウムイオン電池は、電圧がきわめて低いと、充電されるまで電池を無効にしてディープ放電を防ぐ保護回路を内蔵しているため、これは重要です。
消費者にとって最も重要なことは、MAX17303X+が電池ゲージ用に電池の状態を正確に追跡することです。充電状態(SOC; State Of Charge)は、測定した電池の最大容量に対する電池のその時点の残り容量(単位はAh)の割合として求められます。健全性状態(SOH; State Of Health)は、電池の最大利用可能Ah対電池の新品時の最大容量です。
とはいえ、いかに電池管理チップが賢くても誤差は避けられないため、電池ゲージを正確に保つには較正しなければなりません。較正とは、電池を100%の状態からほぼ空になるまで放電させることです。これにより、MAX17303X+は放電動作を正確に把握できます。次に電池を100%まで充電すると、本チップは充電容量を知ることができます。この時点で電池ゲージは較正されています。
このため、筆者は自分のRCAタブレットを、画面表示オンの状態に維持できるようにまたバカルー・バンザイを再生して2%まで放電させて電池を較正し、SODを防ぎました。次に100%まで充電してから、タブレットの電源を5分間切った状態にしました。こうすることで、電池管理チップは完全充電された電池の電圧を最小限の負荷状態で読み取ることができます。この後、タブレットは異常停止しなくなりました。それだけでなく、応答性がよくなりタッチにきびきび反応するようになりました。
これはどうしてでしょうか。
なぜ、電池ゲージを較正するとタブレットが異常停止しなくなるのでしょうか。筆者の考えはこうです。スリープから復帰させるためにボタンを押すと、ホストマイクロコントローラはまず、内蔵している電池管理チップから電池の状態を読み取ります。ホストマイクロコントローラのファームウェアが予期しないデータを読み取ろうとして(それにコードが対応していない)、残念なことにファームウェアがその問題に対する例外ハンドラを備えていないため、タブレットがフリーズするのだと考えています。同様のことは、タブレットの動作中にも起こっています。定期的に電池管理チップのデータをモニタリングしているのです。
でもここで疑問がわきます。「なぜ電池を常に較正していないのか」と。理由は、リチウムイオン電池はディープ放電すると劣化してしまうからです。そのため、年に2~3回で十分なのです。これは、ウェアラブル機器やモノのインターネット(IoT)のエンドポイントなど充電式リチウムイオン電池を使用しているものすべてに当てはまります。
つまり、電池の較正を行うとリチウムイオンシステムの安定性が増す場合があります。正確な電池ゲージのために較正が必要なことは確かです。私たちが「8次元」を越えて通じあうことを期待するのなら、なおさらです。

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