eFuseの機能と性能の実装は複雑性が増していますが、果たしてそれだけの価値があるのかを自動車設計者に聞いてみましょう
熱的に活性化されるヒュージブルリンク(「ヒューズ」と言った方が通りが良いでしょう)は、電気や電力の黎明期から使われているベーシックなものです。ヒューズは一つの役割しかありませんが、それを確実に行えるのが取り柄です。つまり、過大な電流と熱でヒューズの素子が溶けると、数ミリ秒から数秒(機種による)の間に、ほぼ完全な導通状態からほぼ理想的な開回路状態になることができます。
ヒューズは、選択後のインストールや使用は簡単です。接続オプションや初期化手順、構成設定などがないためです。ヒューズは、単なる2端子素子でありながら、非常に重要な回路保護を提供するとともに、規制や安全性に関する多くの規定をより簡単に満たす設計を可能にするものです。
ヒューズに用意されている物理的構成と電流定格は無数にありますが、より一般的に使用されるものとそうでないものがあります。より一般的なヒューズとしては、3AGガラスヒューズ(直径1/4インチ、長さ1¼インチ。小型の商用製品や産業用製品、一部のライン運転型民生用製品で多く使用)やブレードヒューズ(車載用途で広く使用)があります(両者を図1に示す)。
図1:3AGヒューズは最初の量産型ヒューズの一つで、現在も使用されています(左)。自動車産業は最終的に、より薄いブレードスタイルのボディを持つヒューズに移行しました(右)。(画像提供:Littelfuse、 Inc.)
3AGの呼称は「Size 3 Automotive Glass」の略で、元々は1930年代に自動車用に設計されたものです。しかし、皮肉にも、自動車に搭載されるヒューズの数が増えるにつれ、自動車業界は3AGから脱却し、ブレードヒューズを開発しました。
年間数百万個(または数十億個でしょうか)のヒューズが使用されていることからもわかるように、ヒューズは多くの優れた特性を持っていて比類ない成功を収めたにもかかわらず、時代や設計のニーズは変化しています。近年、温度ヒューズの代替または補足として、電子ヒューズ(通常はeFuseまたはe-Fuseと表記)が広く使われるようになりました。一部の設計では、局所的な回路保護用にはeFuseを使用し、システムレベルの保護用には温度ヒューズを使用するといった兼用になっています。
ベーシックなeFuseの重要な特長・特性の一つは、ミリ秒以下の迅速な応答時間ですが、それだけではありません。多くのeFuseは当初、ホットスワップアプリケーションなどのサブ回路の保護を対象としていましたが、一部のeFuseはすぐに該当のULおよびIEC 規格の認証を受けたため、安全性に関連する保護用として承認を受けることができました。
ベーシックな電流遮断の域を超えるeFuse
eFuseはシリコーンベースのソリッドステートデバイスであるため、すぐに他のベーシックなICも辿った、特長や機能の追加という道を辿っていったのでした。追加された特長や機能としては、ユーザーがプログラム可能な電流閾値、ラッチ出力、オプションのオートリトライ、パワーグッド信号、電流レベル監視、逆電流ブロック、およびサーマルシャットダウンがあります。
たとえば、Texas InstrumentsのTPS25210ARPWRは、2.7~5.7ボルト、4アンペア(A)、31ミリオーム(mΩ)のeFuseで、応答時間は500ナノ秒(ns)(標準)(図2)です。電流制限値は、外付けの電流センス抵抗を使って、0.5A~4.44Aに設定することができます。
TPS25210ARPWRは、中程度の電流レベル向けのベーシックなeFuseです。閾値を超えた場合に電流をカットする基本的な機能以外にも、いくつかの便利な機能を備えています。(画像提供:Texas Instruments)
このeFuseは、ベーシックなヒューズ機能だけでなく、過負荷、短絡、電圧サージ、逆極性、過度の突入電流からの保護機能も備えています。また、特定の突入電流要件があるアプリケーションでは、外付けコンデンサ1個で出力スルーレートを設定することができます。負荷を入力過電圧状態から保護するには、安全な固定されたピン選択可能な最大電圧に出力を固定します。
このようなeFuseは、多くの機能を備えることで、それらの機能がなければ役に立たなくなるヒューズ機能を、より賢く柔軟なものにするとともに、保護すべきシステムに役立つ有益な情報を提供するようなものにしました。これは、電流定格が固定されている従来の温度ヒューズとは際立って対照的です。
ベーシックなeFuseではなく
ヒュージブルリンクの限られた機能とI/O接続の欠如は、今日のスマートでネットワーク化された自動車のニーズとは相容れないものです。これに対し、eFuseは多くの機能を備えているため、特に車載用アプリケーションにとって魅力的です。このため、自動車業界では、多くの必要な追加機能を組み込んで厳しい車載規格を満たしたeFuseを開発してきました。
その一例が、STMicroelectronicsから最近発売されたVNF1048Fです。これは車載用配電アプリケーション向けのAEC-Q100認定のハイサイドスイッチコントローラです。この製品は、強化されたシステム保護・診断機能とSTMicroelectronicsのシリコーンヒューズ技術「I2-t」を組み合わせたものです(図3)。
図 3:AEC-Q100認定を受けたVNF1048Fは、eFuseですが、ハイサイドスイッチのコントローラと、その他多くの機能および接続オプションも搭載しています。(画像提供:STMicroelectronics)
VNF1048Fは、12V、24V、48Vの車載用電源サブシステムに対応している柔軟性から、効率と信頼性を高める最新の車載用「ゾーン」電子/電気アーキテクチャに最適であり、スマートドライビングのための電動化と追加機能もサポートします。
I2-t機能は、速断による信頼性の高いリセット可能な過電流保護を提供します。また、シリコーンヒューズは、ユーザーがアクセスできるヒューズボックスおよびそれに関連したケーブルをなくすことで、自動車の配線ハーネスを簡素化し、重量を軽減するのにも役立ちます。
多機能で適応性の高いVNF1048Fは、3.3ボルトおよび5ボルトのCMOSロジックレベルに対応した32ビットシリアルペリフェラルインターフェース(SPI) を備えており、ホストマイクロコントローラによるシステム保護・診断機能の構成・監視を可能にします。これらの機能では、低電圧保護、過温度保護、外部MOSFETドライブ用の2段チャージポンプ、MOSFET熱保護、不飽和シャットダウン、およびI2-tヒューズ設定などを実行することができます。
外付けのハイサイドシャント抵抗器を使用して、高精度なデジタル電流センシング機能が組み込まれています。また、このデバイスにはA/Dコンバータ(ADC)も組み込まれており、温度感知サーミスタ電圧(VNTC)、出力電圧(VOUT)、およびMOSFETドレイン-ソース間電圧(VDS)を監視することが可能です。
VNF1048Fのような、高度な機能をフル装備したスマートコントローラは、多少関連し合っている機能を統合しただけ以上のものを実現できます。また、スマートコントローラには、その性能、アクション、リアクションが、監視対象のシステムのニーズと合致するよう管理・保証する高度なステートマシンも組み込まれています(図4)。
図4:VNF1048Fの動作とシーケンシングの状態図は、それが単なるベーシックなeFuseよりもはるかに優れている理由を明確に示しています。(画像提供:STMicroelectronics)
VNF1048Fは、そのハイレベルな機能と統合性に見合った52ページ分のデータシートで説明されています。このデバイスの使用を計画している人は誰でも、このデバイスがサポートする多くのモード、機能、初期化、および設定について真剣に勉強する覚悟が必要で、使用する前にやるべき宿題がたくさんあります。
この最後のポイントは、このような高度なコンポーネントを使用する際に直面する可能性のある懸念事項を示唆しています。昔ながらのシンプルな温度ヒューズの利点の一つは、一度適切なデバイスを選択すれば、その後の設計にほとんど手間がかからないことです。回路にヒューズを入れるだけで終わりです。機能の初期化、パラメータの設定、プロトコルの決定、リンク経由でのダウンロードなどは一切行わなくて済みます。これとは対照的に、高度なeFuseでは、より多くのデザインインの時間と労力が必要であるとともに、デバッグできるだけの時間的余裕を持たせたスケジュール作りが必要となります。
まとめ
設計において、シンプルにして限られた柔軟性を受け入れるか、それとも、実装に手間がかかることを承知でより高度なコンポーネントを採用するかは、エンジニアリング設計にとって永遠のジレンマの一つです。eFuseの場合は、主に車載用設計の複雑性と柔軟性の要件が高まっているおかげで、痛みを伴う分、得るものは大きいと言えそうです。
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