ツェナーダイオードによって実現した高校の科学フェアでの栄誉 – そして、私もツェナーダイオードも健在

回路の設計者たちは、半世紀以上の間、ツェナーダイオードを電圧リファレンスおよび電圧レギュレータとして使用してきました。私が電源の設計にツェナーを初めて使ったのは、高校で最終学年を迎えていた1970年に科学フェアプロジェクトに参加したときでした。そのプロジェクトの分野は、赤外線LED、フォトトランジスタ、そしてプラスチック光ファイバケーブルを基盤とした光ファイバによる光通信システムでした。当時は光ファイバ通信とオプトエレクトロニクスの黎明期であり、この科学フェアプロジェクトでは賞を獲得することができました。

この光通信システムの設計ではRTLデジタル論理が採用されていましたが、これは現在の「Register Transfer Level(レジスタ転送レベル)」とは異なります。現在のRTLは、ASIC、SoC、FPGA、およびCPLDでの論理設計向けです。20世紀中盤では、「RTL」は最初の論理ICファミリである「Resistor Transistor Logic(レジスタトランジスタ論理)」の省略語でした。

RTL(この論理ファミリ)は本来米国のミサイルと航空宇宙用途用に開発されたものです。このRTLは、アポロ誘導コンピュータ(AGC)を構築するために選択された論理ファミリで、フライバイワイヤシステムを使用して、アポロのメインエンジンと姿勢スラスタを制御しました。アポロとAGCのフライバイワイヤシステムは、機械的または油圧によるバックアップを使用しない初めてのシステムでした。1968年から1972年にかけて、AGCはアポロ計画のミッションで8号、10号、11号、12号、13号、14号、15号、16号、17号を月へと導き、地球に無事に帰還させました。実際には月に着陸しなかったものの、アポロ8号と10号は、あのような距離を飛行して、無事帰還したのです。

AGCの設計では数千ものRTL ICが使用されました。そして、科学フェアプロジェクトで、AGCと同じように最先端の電子部品を使うことに、私はちょっとしたスリルを感じていました。何と言っても私がこのプロジェクトの設計をしていた当時、アポロ計画はまだ進行中だったのです。

これらの古いRTL ICでは、3.6ボルトの安定化電源が必要でした。現在なら、Texas InstrumentsLM317のような、調節可能な3端子レギュレータが単純なリニア電源に適した第一の選択肢になることでしょう。しかし、当時3端子レギュレータはわずか1年前に発明されたばかりで一般的ではなく、LM317が設計されるのは1976年になってからのことでした。したがって、その当時、リニア安定化電源回路としての第一の選択はツェナーダイオードを基盤にすることだったので、私はこのダイオードを自分の科学フェアプロジェクトに使用しました。私の設計では、RTL IC用の3.6ボルトの供給電源を含む、3つの安定化電源電圧を構築するために、Motorola Semiconductorの複数のツェナーダイオードと、いくつかの大型パストランジスタを組み合わせました。ON Semiconductorは、Motorola Semiconductorのツェナーダイオードをすべて継承し、面実装パッケージで供給される新しい多くのダイオードとともに現在も販売しています。ON Semiconductorは、Motorola Semiconductorの古いツェナーダイオードハンドブックも継承しています。これらのハンドブックはPDF形式で入手できます(参考資料1を参照)。

ツェナーダイオードの基本

順方向バイアスの場合、ツェナーダイオードはその他のダイオードと同様に動作します。動作が異なるのは、逆方向バイアスの場合です。逆方向バイアスがかけられた低電圧の場合、ツェナーダイオードは電流を伝導しません。これは通常の半導体ダイオードから予想されるのとまったく同じです。ただし、ツェナーダイオードにかかる逆方向バイアス電圧が、ツェナーまたは降伏電圧まで到達すると、このダイオードは「降伏され」、電流が流れるようになります。

ツェナーダイオードの電流/電圧カーブ(図1を参照)を見ると、逆方向バイアスのツェナー領域でのデバイス全体の電圧が、最小限必要なツェナー電流(IZT)に一致した後は、逆方向バイアス電流にかかわらず、ほぼ一定になっています。つまり、広範な逆方向バイアスの条件に応じて、ツェナーダイオードは安定した既知の基準電圧を提供するということです。

図1: ツェナーダイオードの電流/電圧カーブは、順方向バイアスの電圧の場合は通常のダイオードの動作を示し(カーブの右半分)、ツェナーの電圧以上の逆方向バイアス電圧の場合は降伏動作を示す(カーブの左半分)。(画像提供: ON Semiconductor)

私が科学フェアプロジェクトでツェナーダイオードを使用してからほぼ50年が経った現在でも、ツェナーダイオードは当時と同様に、電圧リファレンス、低電流電源用の小型で安価なレギュレータ、さらにはバックツーバックでワイヤ接続された場合の信号電圧クランプとして十分に機能しています。

ツェナーダイオードは、電圧の降伏の効果を最初に予測したClarence Melvin Zenerの名前を取ったものです。Zenerは1934年にこの効果に関する論文を発表し、その後、この効果にはツェナーの名前がつけられました。その後長年を経て、William Shockleyが1950年頃にベル研究所で製造された初期の半導体ダイオードで、この予測された効果を確認しました。Shockleyは、この降伏効果を予測したツェナーに敬意を示して、これらのデバイスを「ツェナーダイオード」と命名したのです。

図2をご覧ください。シンボルのカソードバーに2つのウィングがあることから、回路図に記載されているのがツェナーダイオードであることがわかります。このツェナーダイオードの回路図のシンボルに含まれている変更されたカソードバーは、ダイオードの降伏の特性を表すカーブの抽象的な表現と考えることも、「Zener」の「Z」を表していると考えることもできるでしょう。(これはあくまでも私の考え方ですが。)

図2: 見方によって、このツェナーダイオードの回路図のシンボル上のカソードバーは、デバイスの降伏特性を表しているか、「Zener」の「Z」を表しているように見えます。(画像提供: ON Semiconductor)

ツェナーダイオードの重要な特性は、逆方向バイアスがかかっており、ツェナー効果を生じさせて維持するのに十分な電流(通常は数ミリアンペア)が供給されていれば、全体においてほぼ一定の電圧が維持されることです。このほぼ一定の電圧が、安定した基準電圧としての役割を果たします。

ツェナーダイオードは、非常に多くの固定電圧で利用することができます。Digi-Keyのツェナーダイオードのページを見ると、利用可能な2,988以上のツェナーダイオード(すべてON Semiconductor製)と、150以上の各種ツェナー降伏電圧(1.2~200ボルトの範囲)が掲載されていることがすぐにわかります。

技術的には、逆降伏電圧が約5.5ボルトを超えるすべてのツェナーダイオードはアバランシェダイオードですが、ツェナーダイオードとアバランシェダイオードのどちらも同様の降伏効果を示します。この効果により、これらのデバイスは電圧リファレンスとして機能できるため、通常は、「ツェナー」という名称でまとめて扱われます。

ツェナーダイオードの降伏電圧の範囲は非常に広範です。これらは、基本的には0.1ボルトで、段階的に1.2~7ボルトの範囲で利用できます。そのため、ツェナーダイオードを使用して特定の基準電圧を生成する場合は、トリミングの必要性が低くなります。

ツェナーダイオードの使用

ツェナーダイオードを電圧リファレンスまたは電圧レギュレータとして使用する場合に重要なのは、逆方向バイアスがかけられた場合にツェナー効果を維持するのに十分な電流(通常は2、3~5、6ミリアンペアの範囲)が、ツェナーダイオードに対して供給されるようにすることです。そのためには、適切なサイズの直列抵抗器が必要です(図3)。抵抗器の値とワット数は、VinとVrefの値に応じて異なります。

図3: シンプルなツェナー電圧リファレンスまたはレギュレータでは、ツェナー効果を維持するために十分な電流をツェナーダイオードに供給するために、適切な抵抗器が使用されます。(画像提供: ON Semiconductor)

この回路図は、低電流電源用のツェナー電圧リファレンスまたはツェナー電圧レギュレータとして機能します。ツェナーダイオードは、特に一定の低電流負荷の場合に低価格のレギュレータとして使用できます。負荷が変動すると、ツェナーダイオードを経由する電流も変動します。ツェナーダイオードは、負荷では使用されない電流をすべて吸収しなければなりません。これは、負荷電流がゼロまで低下した場合、ツェナーダイオードは、直列抵抗器を通る全電流を処理できる必要があるという点で重要です。

ツェナーダイオードが消散させる必要がある最大の電力は、ツェナーダイオードを経由する電流にツェナーの電圧を掛けたものです。定電流負荷の場合、直列抵抗器のサイズを調整して、ツェナー降伏効果が開始され、維持されるのに十分な電流のみがダイオードを流れるようにしなければなりません。残りの電流は、負荷を通じて流される必要があります。負荷電流がゼロまで低下する可能性がある場合、ゼロ負荷時にツェナーダイオードを流れる電流にツェナー電圧を掛けると、ツェナーが消散しなければならない絶対最小電力が算出されます。ツェナーダイオードの電力定格には通常どおりに妥当なゆとりを持たせて、負荷電流が変動する可能性がある用途における過熱を回避するようにします。

用途に関する詳細情報と、ツェナーダイオードの特定の用途での適切な抵抗値の計算に必要な式については、前述したON Semiconductorのツェナーダイオードハンドブックを参照してください。

ツェナーの降伏効果を維持するのに必要な電流がミリアンペア単位であることから、低電流回路では問題が発生する可能性があります。現在、このような用途向けには、動作電流が非常に小さい2端子電圧リファレンス(バンドキャップリファレンスとも呼ばれます)が用意されています。

たとえば、Texas InstrumentsのLM4040精密マイクロパワーシャント電圧リファレンスでは、80マイクロアンペア(µA)未満の最小カソード電流が設定されていて、2.048、2.5、3、4.096、5、8.192、および10ボルトの固定基準電圧、さらには出荷時にトリムされた0.1~1パーセントの電圧許容範囲とともに使用することができます。

使用する場合、これらの電圧リファレンス向けの回路の設計はツェナーダイオードの場合と同じです(図3の回路図を参照)。LM4040電圧リファレンス上の2つのアクティブな端子は、このデバイスがダイオードであるかのように、アノードおよびカソードと呼ばれます。ただし、回路図を見ればわかるとおり、LM4040は明らかにダイオードではありません(図4)。

図4: LM4040が単純なダイオードではないことを示す、LM4040電圧リファレンスの内部回路図。(画像提供: Texas Instruments)

まとめ

あるデバイスが長い間存在しているからといって、そのデバイスがもはや役立たないと決め付けることはできません。デバイスのベンダーは60年以上にわたってツェナーダイオードを製造し続けており、ツェナーダイオードは今でも以前と変わらず強力な性能を発揮しています。私も少し変わり、したがって職務もそうですが、ありがたいことに現在も健在です。

動作に必要な電流要件が小さい電圧リファレンスが必要な場合は、2端子の電圧リファレンスも必ず検討してみてください。

 

参照資料:

1 – ON Semiconductor - ツェナーの理論および設計に関する考慮事項

著者について

Image of Steve Leibson Steve Leibson氏は、HPとCadnetixでシステムエンジニアを務め、EDNとMicroprocessor Reportで編集長として活躍し、XilinxとCadenceなどの企業では技術ブロガーを担当しました。また、同氏は、「The Next Wave with Leonard Nimoy」の2つのエピソードで技術専門家を務めました。同氏は、33年間にわたって、高速でかつ信頼性の高い優れたシステムを設計技術者が開発することを支援しています。
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