長期使用に適した産業用フラッシュカードは?

エンジニアなら誰でも、microSDカードを常備しています。私の場合は、手の届きやすい机に何となくばらばらと置いていました。スマホやタブレット、シングルボードコンピュータ(SBC)などでmicroSDカードが必要になると、まるでバットマンのように、不思議とカードが出てくるのです。私のシステムは、実験的なLinuxディストロを入れた16ギガバイト(Gバイト)のmicroSDが突然消えてしまうという「2019年の机上の大真空事件」が起こるまで、問題なく動作していました。掃除機のパックに入っていなかったので、替えが利かないネジや絶縁テープのロールが消えていく、異次元の時空間に行ってしまったのだと思います。

もちろん、このことがきっかけで、私はすべてのmicroSDカードを1つの場所に置くことにしました。そしてもちろん、エンジニアである私は、フラッシュメモリカードをカテゴリ別に分類する必要があると考えました。最初はメモリの大きさで整理しようと思っていましたが、自分の無造作なコレクションを見ているうちに、別の戦略をとることにしました。

サイズではなく、どのmicroSDカードが自分にとって役立ち、どのmicroSDカードがデータ破損で故障したのかを確認していきました。カードについて調べ始め、フラッシュメモリカードの評価を見てみると、ネット上には誤った情報があふれていました。私が持っていたmicroSDカードの中でデータ破損の被害があったものは、「公平な」レビュアーによるオンラインでの評価で最上位にランクされ、超高速と謳われていることが多かったので、疑念を抱いたのです。そこで、優秀なエンジニアの誰もがそうするように、自分なりに調べてみると、人生と同じように、microSDメモリカードについても、「言われていること」よりも「言われていないこと」の方がはるかに重要であることがわかりました。

フラッシュメモリの種類の基礎

フラッシュメモリを理解するためには、メモリセルの半導体構造を見る必要があります。シングルレベルセル(SLC)フラッシュは、1セルに1ビットです(図1)。マルチレベルセル(MLC)フラッシュは、表記上は1セルに複数のビットを搭載しているフラッシュを指しますが、実際には1セルに2ビットです。これは後述するマーケティング上の失敗だと考えています。トリプルレベルセル(TLC)はセルあたり3ビット、クワッドレベルセル(QLC)はセルあたり4ビットのフラッシュです。

図1:フラッシュメモリの種類は、セルあたりのビット数によって区別され、SLCからQLCまでビット数の増加に応じた名前となっています。(画像提供:Micron Technology)

フラッシュアレイでは、1セルに収まるビット数が多ければ多いほど、フラッシュアレイは小さくなり、メモリデバイスは安価になります。しかし、このサイズダウンはコストを伴います。メモリビットの記憶容量が小さくなると、フラッシュセルが耐えられるプログラム/消去サイクル数(P/E)が少なくなり、故障しやすくなるのです。1セルに複数のビットを配置し、キャッシュされたフラッシュメモリコントローラでアドレスを指定すると、非常に高速な処理が可能になりますが、メモリアレイの読み書きにかかる電流も大きくなります。これは、SLCおよび真のMLC microSDカードのすべてが問題を起こさなかったことに気付いたときに重要になりました。

「真の」MLCという言葉を使うのは、厳密に言うと、この2ビット/セルこそが複数ビットを指すからです。あまり評価の高くないフラッシュメモリメーカー(認定電気小売店で販売されていない製品のメーカー)の中には、TLCやQLCの製品を「複数ビットだからいいだろう」という論理でMLCと称しているところがあります。

microSDフラッシュメモリカードであまり話題にならないのが、その消費電力です。民生グレードのフラッシュメモリカードメーカーが自社のデバイスの消費電力を公表することはほとんどありません。重要な作業でフラッシュメモリカードを使用する際には、このパラメータを必ず確認してください。多少の調査は必要でしたが、私が持っていたデータ破損を起こしたmicroSDカードはすべて消費電力の高い範囲にあり、その中には最速のカードも含まれていました。

たとえば、Raspberry Pi 3 Model A+(図2)のようなシングルボードコンピュータ(SBC)にフラッシュカードを使用する場合、そのボードが遠隔地で無人で動作し、フラッシュメモリカードの動作を調べるための定期的な保守点検ができない場合は、望ましい属性リストの中で低消費電力を重要視するとよいでしょう。最速のカードや最高密度のカードは、長期的には最も信頼できるソリューションではない可能性があります。

図2:Raspberry Pi 3 Model A+のようなSBC用のmicroSDカードを選ぶ際には、低消費電力であることが信頼性の高さにつながるため、チェックする必要があります。(画像提供:Raspberry Pi)

産業用途に適した信頼性の高いフラッシュカードの例として、Delkin Devicesの4GBのmicroSDカード「S304TLNJM-U1000-3」があります(図3)。SLCフラッシュメモリカードでありながら、動作温度範囲が-40°C~+85°Cと広く、過酷な産業環境にも適しています。microSDカードのデータ保持期間は3年、長くても5年の仕様が一般的ですが、この4GBのSLCフラッシュカードは、microSDカードとしては非常に長い、10年間のデータ保持が可能です。

図3:S304TLNJM-U1000-3は、4GBのSLC産業用グレードのmicroSDフラッシュメモリカードで、消費電力が非常に低く、データ保持期間が10年と長いのが特徴です。(画像提供:Delkin Devices)

S304TLNJM-U1000-3カードの消費電力は驚くほど低いものです。読み取り電流消費の仕様は50ミリアンペア(mA)以下(代表値)となっており、これは一般的な民生用カードの読み取り電流よりもはるかに低い値です。書き込み電流の仕様は100mA以下(代表値)で、これも民生用カードに比べて大幅に低い値です。書き込み電流は、システム内でフラッシュメモリをアップグレードしなければならない可能性がある、電池駆動のモノのインターネット(IoT)ノードにとって重要です。アイドル電流は0.500mA未満(代表値)で、これも電池駆動のIoTノードでは非常に重要なことです。アプリケーションによっては、使用中よりもアイドルモードのときにmicroSDカードが長い時間を費やすことがあるからです。

こうした特性により、60,000のP/Eサイクルという非常に高い耐久性を実現しています。多くのメーカーがこれらの数値を明記せず、公開していないため、競合するフラッシュメモリカードと比較することは困難ですが、公開されている場合は条件をよく読まなければなりません。たとえば、データ保持期間が50年というカードはすばらしいものに思えるでしょう。しかし、保持期間中に二度とカードに書き込まれないことを前提にしていると知ってしまえばそれまでです。Delkin Devicesは、S304TLNJM-U1000-3の10年間のデータ保持について、60,000回のP/Eサイクル仕様のうち10%を使用した場合としており、非常に具体的な説明をしています。

まとめ

すべてのmicroSDカードが同じではないことは明らかなので、慎重に選択してください。特に、メモリ保持のための保守点検ができる可能性が低く、長年にわたって無人で稼働しなければならない可能性のある組み込みシステムには注意が必要です。SLCメモリは、このような特殊な用途には多くの利点があります。

仕様書を見ていると、「労働者のジレンマ」に出てくる「実際にやったこと、言ったことよりも、やらないこと、言わないことの方が常に重要である」という名言が思い出されます。

著者について

Image of Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

More posts by Bill Giovino
 TechForum

Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.

Visit TechForum