データ保持に不可欠なダブルセルEEPROM

読者の皆様は、エンジニアのキャリアの大部分を通して、個人用ノートパソコンをおそらく複数台所有してきたでしょう。私がIBMのThinkPadラインから始めたのは、非常にしっかりとした構造で信頼性が高かったからです。20年前のThinkPad 560Xを持っていたことがありますが、CDやフロッピーディスクドライブが付いておらず、携帯性に優れていました(覚えていらっしゃいますか?)最終的に別のノートパソコンと交換し、それをまた別のノートパソコンと交換するといったことが続きました。

10年ほど前に、棚のスペースをさほど取らないコンパクトなノートパソコンで制御できるデジタルホームステレオシステムを作ろうと決めました。その作業に古いハードウェアを再利用するのは理にかなっていました。ThinkPad 560XのPentiumでは、内蔵3.5mmドライブからのオーディオ出力は問題なかったので、ノートパソコンをストレージから取り出して、それをベースにしてホームオーディオシステムを構築しました。

ある明るい日曜日の朝、コーヒーを飲みながら好きな音楽を聴くためにノートパソコンを起動しました。普通の日曜日の朝だったのですが、数秒後にThinkPadのスピーカからハイピッチのアラーム音が聞こえてきました。

ピーッピーッピーッ!ピーッピーッピーッ!

古いBIOSシステムに精通している方は、ノートパソコンのパワーオンセルフテスト(POST)のビープ音が鳴るとゾッとするでしょう。画面を見たら3桁のPOSTエラーコードが出ていました。

仕事用の別のノートパソコンを立ち上げて、おそらくノートパソコンが私の音楽の好みを気に入らなかったのではないかと期待しながら、エラーコードを調べました。残念ながら、BIOS設定が保存されているEEPROMは、そのデータを保持できなくなっていることが分かりました。何度か再起動しましたが不成功に終わり、EEPROMのデータは消えていました。

さらに調査を進めると、ThinkPadはBIOS設定データをメインボードにはんだ付けされたシリアルEEPROMに保存していたことが判明しました。当時のEEPROM技術はまだ進化しており、半導体メーカーは、デバイスの高速化と信頼性の向上、データ保持の向上、コストの削減に熱心に取り組んでいました。

ストレージにノートパソコンをしまい、時々電源を入れて起動して私を驚かせてくれることを期待していたのですが、悪化してしまった関係のように、元通りになることはありませんでした。

今日、EEPROMのデータ保持はこれまで以上に重要になっています。モノのインターネット(IoT)、産業用IoT(IIoT)、ノードではより長いデータ保持と信頼性向上が求められるため、EEPROMメーカーは大幅な改善を行い、データを何十年も安全に保つことができるようにしてきました。

たとえば、Rohm Semiconductorは、非常に長いデータ保持と高い信頼性を実現するように設計された車載グレードのEEPROMの選択肢を提供しています。BR24G64NUX-3ATTRは、Rohmが40年以上のデータ保持と100万回以上の書き込みサイクルに対応するように規定した、I2Cインターフェースを備えた64キロビット(Kビット)の車載用EEPROMです。8ピンUFDFN露出パッドパッケージで提供されます(図1)。I2Cシリアルインターフェースは、1.7~5.5ボルトのVCC範囲で、1メガヘルツ(MHz)でホストマイクロコントローラにインターフェースできます。

図1:BR24G64NUX-3ATTRは、40年以上データを保持できるダブルセルメモリ構造の64KビットEEPROMです。(画像提供:Rohm Semiconductor)

BR24G64 EEPROMファミリには、いくつかのデータ保護機能があります。書き込み保護(WP)ピンにより、外部回路がEEPROMデータのハードウェア書き込み保護を行うことができます。WP = GNDの場合、データ書き込みが許可されます。WP = VCCの場合、EEPROMメモリアレイへのデータ書き込みはすべてブロックされます。読み取りは許可されており、内部レジスタへの読み書きも許可されています。これは、書き込み操作と競合する可能性のある外部イベントが発生している間に、マイクロコントローラホストファームウェアがEEPROMに書き込みを行わないようにするために使用できます。

EEPROMのシングルビット障害の多くは、通常の動作中には発生しませんが、短時間のパワーオンおよびパワーオフイベントの間に発生します。これらのイベントはスプリアス低電圧の過渡現象を発生させ、偶発的に急上昇した書き込み信号がEEPROMセルに印加され、シングルビット障害につながる可能性があります。これを防ぐために、Rohmの車載用EPROMには2つの内部保護回路があります。パワーオンリセット保護回路は、VCCが最小内部電圧に達するまで待機し、その後、チップの残りの部分にVCCを印加します。これにより、内部の低電圧過渡現象を防止し、パワーオンイベントの間にEEPROMメモリアレイが破損しないようにします。2つ目は、VCCが低下しすぎた場合にメモリへの不要な書き込みを防ぐための不足電圧保護回路です。VCCが最小動作電圧を大幅に下回ると、EEPROMはリセットされ、EEPROMのスプリアス書き込みを防止します。

EEPROMデータメモリは、高速な読み取り操作と比較的高速な書き込みが可能なように設計されています。EEPROMは、トンネル酸化膜に電子を通すことでメモリセルにデータを書き込みます。この膜は時間と温度の経過とともに劣化する可能性があり、セルの書き込みごとに弱くなっていきます。保管時でも、高温はこの膜を劣化させる可能性があります。最終的には、セルが劣化してメモリビット障害が発生し、セルがロジック1にとどまったままになります。これが、EEPROMには長年にわたってシングルビットメモリ障害の問題があった理由です。この問題が、好きな音楽を聴くために私のThinkPad 560Xを起動したときに起こったのです。EEPROMが故障したとき、560Xはシングルビット障害による悲しい結末を示すエラーコードを表示しました。

Rohmの車載用EEPROMは、各メモリビットにダブルセル構造を採用しています。センシング回路が第1セルの状態を監視します。第1セルが故障寸前になると、第2セルが動作し、第1セルが非アクティブになります。これによりダイサイズが大きくなりますが、40年間のデータ保持と100万回以上の書き込みサイクルを実現しています。まあ、小型化、長期間のデータ保持、優れた耐久性といった3つの利点のうち、2つの利点が得られるのは悪くないでしょう。

結論

20年前にRohm Semiconductorの高信頼性車載用EPROMが発売されていたら、私のThinkPad 560Xは今でもビープ音ではなく音楽を再生していたでしょう。あの明るい日曜日の朝にふさわしくない悲しい結末は起こらなかったでしょう。

著者について

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Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

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