タイミングジッタおよび位相ノイズの違いとは?

シリアルデータ送信レートは、より多くのデータをより迅速に得たいという需要の高まりに応えて、高速化し続けています。データレートの上昇とともにタイミングマージンが減少するので、設計者はデータタイミングの不確かさを最小限に抑えることを余儀なくされます。データタイミングの不確かさを特定する要素は、技術者が携わってきた分野に応じて2つあります。それはジッタおよび位相ノイズの2つのパラメータです。

位相ノイズとジッタは両方とも信号のタイミングの安定性を示し、これらは相互に関連しています。本質的に、これらはクロックまたはデータストリームにおけるタイミングの不確かさの特性を評価する2つの方法です。位相ノイズは信号周波数の不安定性であり周波数領域で表され、一方ジッタは時間領域での信号波形の変動です。

通常、どちらの領域を考慮するかの選択は、アプリケーションに応じて異なります。RFエンジニアであれば一般的に位相ノイズに着目し、デジタル設計者であればジッタを利用することが多いようです。

ジッタと位相ノイズの定義と測定

ジッタは、信号タイミングの理想的な状態からの変動で、通常はオシロスコープを使用して測定します。ジッタには、エッジまたは位相ジッタ(タイムインターバルエラーと呼ばれる)、周期ジッタ、またはサイクルツーサイクルジッタ(隣接サイクルの周期間の差)などいくつかの種類があります。あらゆるジッタは、ランダムジッタまたは確定的(デターミニスティック)ジッタの2つの主なジッタ成分に分けられます。ランダムジッタ成分には基本的に境界がありません。つまり、ピークジッタの値は時間の増加とともに大きくなります。確定的ジッタ要素には境界があり、時間とともに増えません。これら2種類の主なジッタ成分の下には、さらに複数の成分が含まれていますが、本記事の範疇を超えるのでここでは取り上げません。

位相ノイズでは、周波数領域で基本となるクロックに隣接する信号電力に着目します。信号の位相または周波数の変動は、スペクトル線の幅にはっきりと現れます。タイミングが不安定なほど、スペクトル線が広くなります。図1に例を示します。

図1:クロック信号のジッタ(上側のトレース)と位相ノイズ(下側のトレース)の比較。(画像提供:DigiKey)

上側のトレースは、100MHzのクロック信号のエッジを示しています。このグラフでは、エッジの場所の履歴がわかるように、表示持続性をオンにしています。クロックエッジは時間の経過とともに横方向に移動しています。この変動がクロックエッジのジッタです。この場合、およそ100ピコ秒(ps)のピーク-ピークジッタがあります。

下側のトレースは、100MHzクロック信号の周波数スペクトルに対して水平に拡大された図を電力密度表示によって示しています。4つのオーバーレイされたスペクトルがあり、10、50、100、500psのエッジジッタ値のスペクトル幅の違いを示しています。ここでは、ジッタの量が増えるにつれて、スペクトル線が広がっています。位相ノイズは一般的にスペクトラムアナライザ(スペアナ)または専用の位相ノイズ試験設備を使用して測定し、通常、クロックの基本周波数からの固定周波数オフセットで表されます。たとえば位相ノイズは、キャリアから10kHzオフセットにおいてキャリア(dBc)と相対的に-96デシベルのように規定されます。

ジッタと位相ノイズの制御

設計者は、Analog DevicesADF4001BCPZに代表される低位相ノイズ型のクロック発生器を使用することで、クロック分配チェーンにおけるジッタおよび位相ノイズを制御できます。ADF4001BCPZは200MHzの帯域幅を備え、標準位相ノイズ仕様はクロック周波数から1kHzオフセットで-99dB/Hzです(図2)。

図2:Analog DevicesのADF4001BCPZは200MHzの低位相ノイズクロック発生器で、標準位相ノイズ仕様はクロック周波数から1kHzオフセットで-99dB/Hzです。(画像提供:Analog Devices)

クロックを複数のデバイスに分配するには、ゼロ遅延クロックバッファが必要です。クロックバッファは、超低タイミングスキューを保証することに加えて、内部的な位相ロックループ(PLL)によるジッタも低減します。たとえば、Cypress SemiconductorのCY2308SXC-3Tゼロ遅延バッファには、4出力のバンク2つが含まれています。また10~133MHzの周波数範囲で動作し、出力で60psの標準サイクルツーサイクルジッタを実現します(図3)。

図3:Cypress SemiconductorのCY2308SXC-3Tゼロ遅延バッファは16-SOICパッケージで提供され、出力で60psの標準サイクルツーサイクルジッタを実現します。(画像提供:Cypress Semiconductor)

結論

これまで述べたように、表題の質問「タイミングジッタと位相ノイズの違いは何か」の答えは、「位相ノイズとジッタは、クロックまたはデータタイミングの安定性について同じ情報を2通りの見方で表すもので、位相ノイズは周波数領域から見る方法、ジッタは時間領域から解釈する方法」と言えます。最適な部品を選ぶことによって、これらの両方を減らすことができます。

著者について

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Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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