宇宙で新鮮な食品はいかが?NASAがLEDに注目
宇宙での植物栽培というと少々とっぴに思われるかもしれませんが、NASAはこれを宇宙飛行士のことと同様に真剣なテーマと考えています。よく知られている、宇宙飛行士用乾燥「チューブ入り食品」はまだしばらく使われるでしょうが、これは1960年代に宇宙飛行士が月へ行ったときに食べたものと同じではなく、栄養を重視した大幅改良版です(図1)。筆者は、味も良いものであってほしいと思っています。それは宇宙での、そして、もしかすると2030年代に行われると期待されている火星への旅においても、主要な栄養源となり得るからです。しかしその時までにはさらに多くの改良が行われ、別物になっているかもしれません。
図1:従来の宇宙飛行士用乾燥「チューブ入り食品」は1960年代から進歩していますが、宇宙で生鮮野菜を栽培するためにLEDを使う研究が期待されています。(画像提供:NASA)
宇宙食の将来を垣間見るため、筆者はフロリダ州にあるNASAのケネディ宇宙センターの「VEGGIE」ラボを訪ね、宇宙食の最新の開発状況を見学しました。そこでは、国際宇宙ステーション(ISS)で野菜を栽培するプロジェクトであるNASAのVEGGIE計画を担当するライフサイエンスプロジェクトの科学者、ジョイア・マッサ博士が迎えてくれました(図2)。
図2: NASAは、ケネディ宇宙センター(KSC)でジョイア・マッサ博士(写真右)が主導する「VEGGIE」計画を行っています。これはISSで進行中の野菜栽培計画です。(画像提供:Loretta Taranovich)
宇宙で野菜を栽培する理由と方法
既に述べたように、宇宙飛行士はまだしばらくチューブから食事を摂るでしょう。しかしまもなく、新たに栽培されたレタスなどの新鮮で食べ慣れたものも食するようになるかもしれません。これは重要なことです。「新鮮な食品という、このささやかな贅沢は、普段の食事と同じ見た目や食感、香りをもたらしてくれるので、食事が断然すばらしいものになるのです」と、宇宙飛行士たちが話してくれました。
宇宙で生鮮野菜を栽培するために、NASAは手頃なLEDに注目しました(図3)。LEDは、植物の成長を促進するスペクトルの各種波長で効率のよいエネルギー供給ができるため、こうした状況で役立ちます。また、LEDはほとんど熱を発しないため、小さな空間で栽培植物の近くに配置できます。
図3:NASAの研究により、LED照明が宇宙における植物の力強い成長に最適な光源であることが確認されました。(画像提供:Loretta Taranovich)
人口照明は地球上での植物の栽培にある程度の期間使われてきていますが、宇宙で植物を栽培することははるかに困難です。宇宙では、人口照明とファンを「ちょうど良い」位置に設置して、太陽と風を再現するようにしなければなりません。また、宇宙飛行には信頼性と耐久性が不可欠であるため、LEDは火星へ行くような長期の宇宙ミッションに最適です。
LEDの各種波長の役割
LEDの特定の波長には、以下のような固有の利点があります。
赤(630~660ナノメートル(nm)):茎と葉の成長に不可欠です。この波長は、開花、休眠期間、種子の発芽の調整にも関わります。
青(400~520nm):この波長の光に過度に曝すと、植物種によっては成長が妨げられるため、注意深く他のスペクトルと組み合わせる必要があります。青の範囲の光は、植物に含まれる葉緑素の含有量および葉の厚さにも影響します。
緑(500~600nm):この波長は、かつては植物に必要ないと考えられていましたが、最近の研究では最上部の葉を貫通して下方の葉に働きかけることが示されています。
近赤外(720~740nm):この波長も植物上部の密集した葉を貫通し、その下の部分の成長を支えます。また、赤外光を受けると植物の開花に要する時間が短縮されます。近赤外光のもう一つの利点は、この領域の波長の光を受けると、受けない場合よりも葉が大きくなることです。
NASAの科学者たちは、LEDアレイに白色LED光を含めると、屋内栽培の植物が宇宙での健康、成長、繁殖の最適化に必要な、光合成に関与するあらゆる放射を受けられるようになることも見いだしました。
OSRAMは既にNASAと緊密に連携し、宇宙での植物栽培という構想に取り組んでいます。同社のPhytofyは、独自の調整可能なLED園芸照明システムであり、紫外線から近赤外線までを対象として各チャンネルごとのリアルタイム制御およびスケジューリングの機能を備えています(図4)。この較正済みシステムは、園芸研究用にさまざまなスペクトル、波長、強度の光線処置ができるように設計されています。Phytofyは、植物に特化した光線処方の研究開発に打ってつけの選択肢です。光の制御はグラフィカルユーザーインターフェースで行なうことができます。このシステムは、植物の最大限の成長と健康に最適なLED照明の色、時間、強度になるように、NASAが宇宙用のLED特性を微調整するのに役立ちます。
図4:OSRAMは、植物の成長に最適なLEDの色、時間、強度を求めるために、NASAと連携してPhytofyシステムの開発に取り組んでいます。(画像提供:NASA)
NASAの研究の大部分は地球上で行われていますが、最終試験のためにLEDがISSに送られました。商用グレードのLEDは、最終的にさまざまな企業による宇宙での使用が認可される可能性があります。
宇宙での水やり
もちろん、植物には水が必要です。そのため、植物の種子はそれぞれ個別の「根幹用マット」または土台枕のような「ピロー」に配置され、個別に水が供給されます(図5)。各ピロー内には、宇宙での植物栽培に最適であることが示された、固形の栽培基である粘土質岩が入っています。粘土質岩の発根培地の固定用にフォームパッドが使われており、これは根が成長して気付かないうちにLED光に暴露するのを防ぐ役割も果たします。
図5:植物用水やりシステムを設置するマッサ博士(画像提供:Loretta Taranovich)
水と成長の度合いは全栽培周期を通じて監視され、その後、野菜が収穫され、次の栽培周期が開始されます。
結論
宇宙空間は常に過酷な環境であるため、快適性を高めるためにNASAができることはすべて、地球からこれまでになく遠方へ冒険する次世代の宇宙飛行士から評価されるでしょう。OSRAMのような企業との共同作業によって、NASAの植物学者が宇宙で植物を栽培できるようになりそうです。計画全体から見れば小さなことのように思えますが、これにより、最後のフロンティアへの勇敢な探検者たちに必要とされる栄養や香り、家庭のような感覚を提供できます。
筆者は個人的に、次の段階の宇宙食を見るのが待ちきれませんが、...それはピザかもしれません。
Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.
Visit TechForum