ブームに沸く米国半導体シーン
半導体製造は難しいビジネスです。少なくともその一因は、購買サイクルと製造サイクルを一致させることがほとんど不可能だからです。工場は計画から建設まで数年を要し、数十億ドルを費やすこともしばしばあり、特定の部門からのチップの需要は、四半期ごとに、あるいはそれ以上に急速に変化します。現在、特に米国では、チップ需要が緩やかになっているにもかかわらず、工場生産能力は増加傾向にあります。
Gartnerは4月、2023年の世界半導体売上高が11.2%減少し、総売上高は5,322億ドルになると予測しました。1 昨年、同市場の総売上高は5,996億ドルで、前年比成長率はわずか0.2%でした。アナリストは、DRAMの需要が大幅に減少しており、NANDも同様のパターンになると指摘しています。さまざまな市場の成長率も異なっており、PC、タブレット、スマートフォンなどの大量生産分野は減速していますが、自動車、産業、モノのインターネット(IoT)、航空宇宙市場は上昇傾向にあります。
しかし、こうした減速は短期間で終わる可能性が高く、チップメーカーが力強い成長市場で必要とされる最先端製品を供給する方向に向かう中で、製品構成の問題が重要になります(図1)。
図1:歴史的に、半導体の売上成長率は高く、2021年には20%にも達します。今後も売上は伸びますが、2030年までの平均成長率は年率約6~8%と鈍化します。(画像提供:McKinsey & Company)
一方、半導体製造装置も同様の浮き沈みがあるでしょう。SEMIの『World Fab Forecast』によると、世界の前工程設備への設備投資は、過去最高の980億ドルから、2023年には前年比(YoY)22%減の760億ドルになると予想されています。3 しかし、2024年には前年比21%増の920億ドルになると予想されています。
図2:2023年に半導体製造装置への支出は鈍化しましたが、半導体製造工場の力強い成長を支えるために、この数字は上昇し続けます。(画像提供:SEMI)
2023年の落ち込みは、チップ需要の減退と消費者向けおよびモバイル機器の在庫増が原因です。その一方で、高性能コンピューティング(HPC)および自動車分野での半導体需要の強化が今後の成長を牽引します。
自国における将来への備え
このような市場力学が展開されると同時に、テクノナショナリズムが強まり、自国で製造された機器を購入することを好む組織が増加しています。「今日の半導体は、国家安全保障の問題として捉えられています」と、Gartnerのプラクティスバイスプレジデント、リチャード・ゴードン氏は述べています。「世界中の政府が、半導体とエレクトロニクスのサプライチェーンにおける自給自足の確立に躍起になっており、これが、世界中でオンショアリングのインセンティブを高めています」とも語っています。
今後2、3年のうちに、半導体メーカーは米国に数十億ドルを投資し、数万人の雇用を創出するでしょう。昨年だけでも、これらの企業の多くが米国でのチップ製造計画を発表しました。それは、以下のとおりです。
- GlobalFoundries(GF) は、2020年6月にニューヨーク州マルタの工場8施設に隣接する66エーカーの土地を取得し4 、さらに2023年4月に800エーカーの土地を購入し5 、保有地は合計1,110エーカーとなりました。GFは現在までに150億ドル以上を投資した施設で、約2,500人を雇用しています。
- Intel は、2022年初頭、オハイオ州リッキング郡に200億ドルを投じて2つの最先端チップ工場を新設し、3,000人を雇用すると発表しました。6 工場では、2025年にチップの供給を開始する予定です。
- Samsung Semiconductor は、2024年の工場稼働を目指し、2022年にテキサス州テイラーの敷地に着工しました。7 Samsungは、建物に60億ドル、機械設備に110億ドルを含む170億ドルを建設に投資する予定です。ここでは、20,000人の雇用を支えることになります。
- Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. (TSMC) は2022年末、400億ドルを投じてアリゾナ工場を拡張すると発表しました。8 2026年までに、その工場では、3nmプロセスノードを使用した先端のチップを製造する予定です。
- Texas Instruments(TI) は、テキサス州シャーマンに300億ドルを投資し、4つの工場でアナログおよび組み込み処理チップを製造するために建設した300mm半導体ウェハー工場で、最終的に3,000人の雇用を創出すると見込んでいます。9 その工場では、2025年に生産を開始予定です。TIはまた、ユタ州リーハイにも300mm工場を建設し、2026年までにチップを生産すると発表しました。10 その工場には、110億ドルを投入し、800人の雇用を創出する予定です。
もちろん、すべての半導体メーカーが工場建設に乗り出しているわけではありません。場合によっては、購入を決断することもあります。例えば、Boschは先月、カリフォルニア州ローズビルに拠点を置くTSI Semiconductorsの資産を買収する意向を発表しました。今後5年間で、同社は約15億ドルを投資して最先端の工場にする予定です。2026年までには、200mmのSiC(シリコンカーバイド)ウェハーを生産する予定です。
半導体メーカーが将来への投資を計画しているのは明らかであり、その計画の一部には、米国内での半導体製造の強化も含まれています。シリコンバレーについては以前からよく耳にしていましたが、それと同じ風景が広がりつつあります。テキサスのSilicon Gulch、アリゾナのSilicon Desert、ニューヨークのSilicon Alley、ニューメキシコのSilicon Mesaが、半導体マップを塗り替えつつあります。今後10年間は、部品に重点を置くことで、米国はエレクトロニクス製造において主導的な地位を占めるはずです。
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