IoTデバイスでバッテリのエミュレーションを行うコツ

IoTデバイスのバッテリのエミュレーションに苦労したことがある方、おそらくいらっしゃるでしょう。確かに、バッテリを電子回路の間近に配置した完成品のようにリアルなテスト構成を作るのはかなり難しいと言えます。そこで今回は、エミュレーションを成功させるために役立つヒントをいくつかご紹介したいと思います。

記事を全部読む暇がない方のために、要点をまとめました。

  • 間隔が長いほど抵抗が大きい。製品中のバッテリは電子回路の間近に配置されます。一方テスト構成で長めのケーブルを使うと、バッテリと回路を間近に接続できません。
  • 致命的な失敗の原因にもなる高い抵抗値に注意。電流突入により配線に電圧降下が生じ、システムがリセットされた場合など。
  • 抵抗値の工作その1:短くて太いケーブルを選んで抵抗値を最小にします。
  • 抵抗値の工作その2:1つまたは複数のコンデンサをデバイスの電圧入力に直接接続して、リザーバエネルギー源にします。
  • 正しいコンデンサを慎重に選ぶ。(最適なESRとコンデンサのサイズ)
  • データを確認する。 – 抵抗値の工作その2は測定値に影響します。

記事の続きが気になりますか?それでは、先に進みましょう。

間隔が長いほど抵抗が大きい

実際の製品では、バッテリがほぼ常に電子回路の間近に接続されますが、これには理由があります。配線が短ければバッテリと負荷間の電流経路の抵抗が小さくなります。もうご存知でしたか?

バッテリのシミュレーションでは、結局配線が長めになりがちで、無駄な抵抗が生じます。それはまずい、と思われて当然です。電流の突入があるとケーブルの抵抗により電圧降下が起こります。この降下が非常に大きければ、電子回路の正常な動作の妨げにもなります。

電流突入の原因とは?

デバイスが少しの間でも電源電圧から遮断されると、最悪の状態につながります。致命的な状態に陥るのは、基板上のコンデンサが空になりエネルギーの再充填が必要になるからです。

突発的な電流突入の最初の数ナノ秒で、すべてのデカップリングコンデンサは充填される前に短絡回路として作用します。これは、プリント基板上にあるすべてのコンデンサ、100nFからさらに大きなものまで該当します。コンデンサは巨大な突入電流を発生させ、ケーブル、コネクタ、プリント基板トレースなど抵抗をともなうすべての部品に瞬間的な電圧降下を引き起こします。

電流経路の抵抗器を必ず確認する

では、抵抗器はどのように確認できるでしょう?デバイスによっては燃料ゲージを使用しており、その場合バッテリと直列の抵抗器で電流を測定します。LiポリマーおよびLiイオンバッテリには、必ずバッテリ保護回路が付きます。テスト構成にこの回路が含まれる場合、電流経路にも抵抗があります。 また、電流の戻り経路も忘れないでください。グランドプレーンを含む経路内のすべての抵抗が重要になります。

2通りの簡単な抵抗値の工作

上記の問題を回避するため、IoTデバイスのバッテリエミュレーションでは、次の安全対策を講じることをお勧めします。

  1. 短くて太いケーブルを選択して、バッテリエミュレータからデバイスに接続するワイヤの抵抗を最小にします(図1)。便利なワイヤゲージのサイズチャートをご覧ください。
  2. 1つまたは複数のコンデンサをデバイスの電源入力に直接接続して、リザーバエネルギー源にします。

図1:抵抗値の工作その1:短くて太いケーブルを選んで抵抗値を最小にします。(画像提供:Qoitech)

コンデンサを接続すると充電用のリザーバとなり、回路で部分的に瞬間の充電が必要なとき電力を供給します。つまり、電源配線の抵抗を通過することなく充電できます。

例として、携帯電話は電源投入時に短いパルスで4Aを簡単に消費します。この場合、バッテリコネクタの間近に抵抗値の低い大きなエネルギーリザーバを設けることが重要です(図2)。

図2:バッテリコネクタの間近に、抵抗値の低い大きなエネルギーリザーバ必ず設けます。(画像提供:Qoitech)

正しいコンデンサの選び方

エミュレーションの準備を始める前に、目的のデバイスに適した正しいコンデンサ選びについて少し触れます。次の問いに答えてみてください。

  1. 最適なESR(等価シリアル抵抗)とは?
    コンデンサの適切なESRは、そのマイクロファラッド値とともに非常に重要です。短い高電流バーストをともなうアプリケーションでは、低いESRが望まれます。ESRを下げる必要がある場合は、並列接続のコンデンサをいくつか使用できます。こちらのESRコンデンサの一般的な値の表をご覧ください。
  2. 最適なコンデンサのサイズはどのくらい?
    正直、これは多くの場合に試行錯誤の作業になります。十分な大きさのコンデンサを選んで、目的のデバイスが正しくパワーアップできるようにします。ただし大きすぎは禁物です。コンデンサがローパスフィルタとして作用し、電流パルスの立ち上がり時間が変わり、測定値に影響するからです(詳しくはこの先をお読みください)。また、可能な限りリークの少ないコンデンサを選んでください。リザーバのサイズは、必要なエネルギー供給量(ピーク電流/時間)と、システムがリセットされない許容される電圧降下に応じて決まります。

測定についての参考情報

デバイスの電圧入力に隣接してコンデンサを配置すると測定に影響します。なぜなら、コンデンサはエネルギーで満たされる必要があり、それには時間がかかるからです。抵抗値の工作その2を使用する場合、電流パルスの立ち上がり時間と立ち下がり時間が遅くなります。その結果、ローパスフィルタをバッテリ測定機器とデバイスの間に直列接続するような作用が生じます。しかしご心配なく。正しいコンデンサを使用すれば、コンデンサの僅かなリーク電流は測定誤差の範囲内にしかなりません。

IoTデバイスの電源について深掘りしたい方のために

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著者について

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Björn Rosqvist is the Head of Product Development at Qoitech, a Sweden based startup behind the new disruptive power analyzer Otii. Björn has a Master of Science degree in Applied Physics and Electrical Engineering from Linköping University in Sweden. He has been working within Power Electronics, Automotive and Telecommunication fields, both in large companies as well as start-ups. The last 13 years he has been working with consumer electronics within design and verification.

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