HoneywellのセンサによるEVおよびバッテリ貯蔵のための安全性を最優先したアプローチ

電動化アプリケーションの開発には、信頼性と使いやすさを確保するために、安全基準を厳格に遵守する必要があります。電気自動車(EV)の運転中や、高度3万フィート(約9,000m)を飛行中のジェット機内でモバイルデバイスを操作中に、発煙や発火につながるような熱暴走を経験したいとは誰も思わないでしょう。そのため、EVバッテリやエネルギー貯蔵システムの製品設計者は、性能を損なうことなく安全な操作を確保できる、非常に正確で信頼性の高いセンサを必要としているのです。

リチウムイオン(Li-ion)バッテリは、エネルギー密度と効率の高さが際立っており、電気自動車やその他のさまざまな電子アプリケーションに不可欠です。しかし、全米防火協会(National Fire Protection Association)が指摘するように、「損傷や、不適切な使用、充電、保管により、過熱、発火、さらには爆発に至る可能性が高まる」のです。

世界中で何百万台ものEVが走行し、何十億台ものリチウムイオンバッテリを搭載したモバイルデバイスが使用されていることを考えると、熱暴走事故は比較的まれですが、無視できるものではありません。FAAのデータによると、米国のフライトでは1週間に約2件の事故が発生しています。電動化アプリケーションがさらに開発されるにつれ、このような事件の発生件数は確実に増加し、いずれもベンダーの売上に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、国際エネルギー機関(IEA)によると、2010年以降、エネルギー密度の向上、長寿命化、劇的なコスト削減により、リチウムイオンバッテリの需要の90%以上が現在エネルギー部門に起因するようになり、電力貯蔵アプリケーションの代替品を凌駕しています。各国や企業が排出量実質ゼロ目標の達成に努める中、実用規模のバッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)の導入が加速しています。

安全性を最優先した電動化アプリケーションの設計

リチウムイオンバッテリの需要はあらゆる業界で高まっており、製品設計者は、そのアプリケーションにリチウムイオンバッテリを採用するにあたり、安全性を最優先するアプローチを取ることが不可欠となっています。

温度が上昇したバッテリが発熱すると熱暴走が起こり、火災や爆発につながる可能性があります。このような事態は、過充電、内部構造を損なう物理的損傷、製造上の欠陥による短絡によって引き起こされる可能性があります。

リチウムイオンバッテリは、過放電、外部短絡、極端な環境熱、その他の要因によって劣化する場合があります。

Honeywell Sensing and Productivity Solutionsは、アプリケーション設計者が安全性、効率性、および性能を向上させるために活用できる電流およびバッテリ安全センサを提供しています。これらのセンサは、電流の流れとバッテリの状態を監視および管理します。EVおよびBESS用のバッテリ管理システムに活用でき、問題の早期発見、正確な測定、他のさまざまなアプリケーションに統合するためのカスタマイズ可能な機能を提供します。

同社のCSHVシリーズ開ループ電流センサ(図1)は、電流検出用途における性能と信頼性を実現するために、ホール効果とHoneywell独自の技術を採用し、±100ADC~±1500ADCの範囲で直流電流(DC)を測定します。電流の流れに比例したアナログ電圧を出力し、バッテリ管理システム(BMS)、バッテリ切断ユニット(BDU)、配電ユニット(PDU)、故障検出、絶縁など、複数の電気自動車アプリケーションへの統合を容易にします。

図1:HoneywellのCSHCシリーズセンサは、開ループホール効果技術を使用しています。(画像提供:Honeywell)

HoneywellのCSNVシリーズ電流センサは、閉ループホール効果技術を使用しており、広い温度範囲で高精度と安定性を実現します。これらの電流センサは、バッテリ管理システム、電気自動車、エネルギー貯蔵システム、および高精度と信頼性を必要とするその他のアプリケーションにおける電流の流れを測定するように設計されています。センサやホストシステムの故障、電源電圧の過大や不足を検出するために使用できます。次のような3つのモデルがあります。

  • CSNV500ユニットは、総合精度±0.5%未満、最大±500Aまで測定可能
  • CSNV700デバイス(図2)は、総合精度±0.5%未満、最大±700Aまで測定可能
  • CSNV1500は、総合精度±1%未満、最大±1500Aまで測定可能

図2:HoneywellのCSNV700シリーズ電流センサ。(画像提供:Honeywell)

CSSVシリーズの高度なフラックスゲート電流センサ(図3)は、フラックスゲート技術と開ループホール効果技術を組み合わせたものです。安全が重視されるアプリケーション向けに設計されたこれらのセンサは、センサ機能と診断機能のために2つの独立したセンサ回路とデータ処理回路を内蔵しており、正確な電流測定を実現します。EV駆動制御システム内の漏電、故障検出、および絶縁を検出するように設計されています。

図3:CSSVシリーズの高度なフラックスゲート電流センサ。(画像提供:Honeywell)

BASシリーズのバッテリ安全センサ(図4)は、煙、液体、破片などのエアロゾルの存在と濃度を測定することで、密閉型リチウムイオンバッテリパックにおける熱暴走を検知し、通知するように設計されています。BASシリーズは、コントローラエリアネットワーク(CAN)通信プロトコルを使用して、エアロゾル濃度を200μg/m³ から10,000μg/m³ の範囲で測定し、通知します。また、工場出荷時にプログラムされた熱暴走警告の閾値は5000μg/m³に設定されており、電気自動車やエネルギー貯蔵システムに組み込むことも可能です。

図4:HoneywellのBASシリーズセンサは、リチウムイオンバッテリパック内の煙、液体、その他のエアロゾル濃度を測定します。(画像提供:Honeywell)

BPSシリーズのバッテリ安全圧力センサ(図5)は、EVバッテリパックやエネルギー貯蔵システムの圧力変化を監視することで、リチウムイオンバッテリパックにおける熱暴走の初期兆候を検知し、通知するように設計されています。このセンサは、絶対圧50kPaから300kPaの範囲でバッテリの圧力変化を検知し、絶対圧と圧力変化率の両方について、設定可能な警告閾値を備えています。

図5:HoneywellのBPSシリーズバッテリ安全センサは、リチウムイオンバッテリの熱暴走を早期に検知します。(画像提供:Honeywell)

まとめ

電動化アプリケーションの需要拡大により、リチウムイオンバッテリの広範囲にわたる採用がすでに進んでいます。しかし、製品設計者は、EVバッテリパックやエネルギー貯蔵システムの安全性、信頼性、効率を向上させるセンサを統合し、指定されたパラメータの範囲内で確実に動作し、異常が発生した場合は迅速に対応する必要があります。Honeywellのセンサは、充放電プロセスを管理し、熱管理システムを制御し、必要に応じて安全プロトコルを実行するための情報を提供することで、最適な性能と安全性を確保します。

著者について

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Pete Bartolikはフリーライターで、20年以上にわたってITとOTの問題や製品について研究し、執筆してきました。それ以前は、IT管理専門誌『Computerworld』のニュース編集者、エンドユーザー向け月刊コンピュータ誌の編集長、日刊紙の記者を務めていました。

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