高度に集積されたMCUが精密かつ効率的なモータ制御設計を簡素化

私の高校生の息子がロボットクラブに入部した時、私は誇らしい父親でした。しかし間もなく、彼は良く知られた設計上の問題を抱え始めました。彼にとって大きな課題は、精密で効率的かつ使いやすいモータ制御ハードウェアを見つけることでした。

私たちの専門分野においても、家電製品から産業用オートメーションに至るあらゆる設計において、同様な要求が常に生じています。だからこそ、Infineonの新しいPSOC Control C3マイクロコントローラユニット(MCU)に興味をひかれるのです。

高度なモータ制御のための効率的なアーキテクチャ

PSOC Control C3ファミリは、高度なモータ制御のための高性能かつ効率的なソリューションとして提供されています。これらのMCUは、デジタル信号処理(DSP)と浮動小数点演算ユニット(FPU)を備えたArmCortex-M33コアを中心に構成されています(図1)。このコアは、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ技術に基づくパワーデバイスを使用するシステム向けに最適化された高性能周辺モジュールによって強化されています。

図1:PSOC Control C3 MCUは、DSPとFPUを備えたArm Cortex-M33コアを中心に構成された強力な周辺モジュールを備えています。(画像提供:Infineon)

特に注目すべきなのは、次のような3つのControl C3 MCUの周辺モジュールです。

  • 高性能12ビット逐次比較型(SAR)A/Dコンバータ(ADC)は、最大16のアナログ信号に対する真の同期アイドルサンプリングを実現します。これは、フィールド指向制御(FOC)システムにおけるモータの相電流や、ソーラーインバータにおけるグリッド電圧など、高速に変化する波形を正確に捉えるために極めて重要です。
  • オプションのCORDIC(COordinate Rotation DIgital Computer)演算アクセラレータは、三角関数やその他の超越関数の処理をArmコアから開放します。これにより、FOCシステムにおけるパーク変換や、系統連系電力変換における位相同期ループ(PLL)のようなアルゴリズムにメリットがもたらされます。
  • タイマ/カウンタパルス幅変調(TCPWM)ブロックは、精密なスイッチング信号を生成し、モーションインターフェース(MOTIF)を統合することで、センサベースのモータ制御設計で使用されるホールエンコーダや直交エンコーダに対する直接的なハードウェアサポートを提供します。

これらの機能を組み合わせることで、高効率モータドライブ、デジタル電源、再生可能エネルギーシステムなど、要求の厳しいアプリケーション向けに緊密に統合されたソリューションを提供します。

その他の特長として、豊富なI/Oと低消費電力モードが挙げられます。これにより、消費電力を1マイクロアンペア(μA)以下に抑えることが可能です。PSA認定レベル2のセキュリティは改ざん防止を実現し、IEC 60730クラスBおよびIEC 61508 SIL 2準拠により機能安全を確保します。

2種類のMCUラインでコストと機能の最適化を実現

すべての設計において全機能が必ずしも必要とは限らず、予算が限られた場合もあるため、PSOC Control C3は、コストを抑えたエントリラインと、より高性能なメインラインの2種類があります。エントリラインの主な特長は、100メガヘルツ(MHz)のArmコア、6メガサンプル/秒(MSPS)のADC、48ピンまたは64ピンのパッケージです。

メインラインは、180MHzプロセッサ、12MSPS SAR ADCに強化され、80ピンパッケージオプションが追加されています。また、PWMタイミングを100ピコ秒(ps)未満に改善し、200キロヘルツ(kHz)を超えるスイッチング周波数の制御を可能にしています。

PSC3M5FDS2AFQ1XQSA1(図2)は、メインラインの性能を体現できる製品です。このMCUは、180MHzのArm Cortex-M33Fコアと256キロバイト(KB)のフラッシュメモリをPG-LQFP-80パッケージに搭載しています。特に、ロボティクスや電動自転車用モータコントローラなど、性能が最優先される厳しいアプリケーションに適しています。

図2:PSC3M5FDS2AFQ1XQSA1メインラインMCUは、180MHzのArm Cortex-M33Fコアと256KBのフラッシュメモリをPG-LQFP-80パッケージに搭載しています。(画像提供:Infineon)

評価キットでモータ制御設計を加速

Control 3ファミリを用いた設計に関心をお持ちの方には、KITPSC3M5EVK評価キット(図 3)をお勧めします。本キットは、PSC3M5FDS2AFQ1 MCUを搭載しており、設計者はPSOC Control C3の全機能を活用できます。

図3:KITPSC3M5EVK評価キットは、PSOC Control 3 MCUを使用した概念実証作業向けにさまざまなヘッダを提供します。(画像提供:Infineon)

このボードはシンプルな設計になっており、ブレッドボードでの実験に適しています。また、MIKROE mikroBUSシールドArduino Uno R3、およびInfineonのShield2Goインターフェース用のヘッダを備えており、容易に拡張が可能です。全体として、周辺モジュールのテスト、概念実証作業、初期段階のコード開発に適した選択肢です。

モータ制御設計に直接取り組みたい方には、KIT_PSC3M5_CC2(図4)など、より高度なキットもご用意しています。同じPSC3M5FDS2AFQ1 MCUを基盤としたこの包括的なプラットフォームには、パワー段制御用の統合ゲートドライバ、相電流測定用の電流検出回路、およびスタンドアロン動作用のオンボード電源が搭載されています。モータコントローラの開発、FOCアルゴリズムのテスト、システムレベルの検証に最適です。

図4:KIT_PSC3M5_CC2は、モータ制御の試作に柔軟に対応するプラットフォームです。(画像提供:Infineon)

両ボードおよびPSOC Control C3ファミリは、Infineonの開発エコシステムであるModusToolboxによってサポートされています。ModusToolbox Motor Suiteは、モータ制御アプリケーション向けに特別に設計された、すぐに使用可能なコード例とツールを提供し、評価から実装への迅速な移行を可能にします。また、多数のサードパーティ製IDEやビルドシステムとの直接統合もサポートしており、顧客が好むツールチェーンに合わせてワークフローを柔軟に適応させることが可能です。

まとめ

私の息子のようにモーション制御が初めての方でも、最新の技術を求めている経験豊富な設計者の方でも、PSOC Control C3 MCUは多くの利点を提供します。CORDICアクセラレータや同期ADCといった高度な機能により、優れたモータ制御能力を実現します。何より、これらの機能が非常に効率的なMCUに搭載されているため、コスト重視の設計に新たな可能性が広がります。

著者について

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Kenton Williston氏は2000年に電気工学の学士号を取得し、プロセッサベンチマークアナリストとしてキャリアをスタートさせました。その後、EE Timesグループの編集者として、エレクトロニクス業界を対象とした複数の出版物やカンファレンスの立ち上げや指導に携わりました。

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