抵抗はんだ付けをもう試しましたか?ぜひ試してみてください。

電気技術者やハッカーが身をかがめ、回路基板上ではんだごてを使用している画像は、テレビや映画で昔から使用されてきました(図1)。

図1:はんだごてを使用して回路基板上の作業をしている電気技術者はよく使用される画像ですが、かなり真実に即しています。(画像提供:Radio Shack of Bozeman)

それには十分な理由があります。はんだ付けは電気接続部を作成する主要な技術であり、大部分の電気部品を電気的および機械的に基板に接続するための唯一の実用的な方法です。圧着やワイヤラッピングなどの技術もありますが、それらはワイヤ用です。

適切なはんだ付けを学ぶのは難しくありませんが、不完全なはんだ接合部ではなく、堅牢な電気的および機械的性能を備えた良好な接合部の作成を習得するには、練習や忍耐が必要です。不完全なはんだ接合部は、事実と異なり正常に接続されているという誤解を生じさせます。

はんだ付け画像の大部分において、技術者は基本的な鉛筆型はんだごてを使用しています。それは理にかなっています。鉛筆型はんだごては、ほとんどのユーザーが電子工学を学び始めるときに使用するはんだごてだからです。ただし、多くの自作(DIY) 愛好家および大部分のプロフェッショナルは最終的に、望ましいチップ温度を設定可能な温度制御ユニットへと移行します。これは、異なるサーマルマスや感度で部品やリードをはんだ付けする場合に便利な機能です。

適切に実行すれば、上手に作られたはんだ接合部は間違いなく信頼できます。多くの技術者にとって、溶けたフラックス(酸化防止のために必要)の煙と匂いを伴いつつ優れたはんだ接合部を作成する作業は、確かにささやかな芸術性と個人的満足が入り混じったものです。

では、なぜ「はんだごて」(soldering “iron”)と呼ばれるのでしょうか?その答えには、歴史的背景があります。金属接合技術としてのはんだ付けは、電子工学より前から存在しているからです。電気的に加熱される便利なユニットが入手可能になる前、はんだごては単に鉄棒を火にかけて熱したものであり、火から取り出して冷めるまでの約1分間で作業を行っていました(図2)。

図2:「はんだごて(soldering iron)」という用語は、火で加熱され、2個の金属を接合するのに使用された歴史的な工具から引き継がれたものです。(画像提供:Pinterest)

これらの鉄棒は、実験者や研究者(当時の「メイカー」)および、配管工やブリキ職人などの職人によって使用されました。本格的に使用した者は、これらの鉄棒を数本同時に火の中に入れて加熱しておき、高温の鉄棒をいつでも使用できるようにしていました。これら複数の鉄棒を管理するには、注意と時間が必要です。こうした課題から、「多くのことに手を広げる(Having too many irons in the fire)」という表現が生まれました。

ガスを燃料とする携帯用トーチが開発されると、「火の中」で加熱するはんだごてが、炎で直接加熱できるものにアップグレードされました(図3)。もし、はんだ付けを難しく感じているなら、1850年代に初めて大西洋横断電信ケーブルを敷設した作業員が、大海原の船上でこれらの工具を使用して、太い海底ケーブルのスプライスとはんだ付けに成功したことを思い出してください。

図3:ガスヒータの開発は、「自己発熱型」のはんだごてにつながりました。(画像提供:Steve's Antique Technology/StevenJohnson.com)

電気を利用できるようになると、加熱エレメントを内蔵した鉛筆型のはんだごてがすぐに導入され、外部で加熱された鉄棒は使用されなくなりました。生産現場では、回路基板は一般的にウェーブまたはリフローはんだ付け技術を用いてはんだ付けされるようになりました。ただし、リワーク、特殊部品、またはコネクタへのワイヤ取り付けにおいては、手はんだ付けのニーズが引き続き存在しています。

今日の電気技術者はキーボード上でより多くの時間を費やしており、はんだ付けの方法を知る必要はないと主張する人々もいます。そうした推論にもかかわらず、実務に携わる電気技術者にとって、手はんだ付けは依然として重要で役立つスキルであるというのが現実です。基本的な非制御ユニットか、より高度な温度制御ユニットかを問わず、従来の鉛筆型はんだごてでも作業はできますが、配置の正確性に関して限界や短所があり、プラスチックハウジングなどの隣接する部品や素材に熱損傷を引き起こすリスクもあります。

放熱の有効活用

幸いなことに、抵抗はんだ付けと呼ばれる便利で使いやすい代替はんだ付け技術があります。これは実用化されて数十年が経過しており、多くの利点を提供します。この技術では、よく知られた電気的自己発熱の原理を活用して、非常に局所的な「ホットスポット」を作成します。これは、はんだを溶かすのに十分な熱さになるため、信頼できる高品質な接続を作成できます。はんだのタイプは、鉛筆型はんだごてで使用されるものと同じです。代表的な抵抗はんだ付けシステムは、図4に示すAmerican Beauty Toolsモデル#10502低容量ピンセット型ユニットです。

図4:モデル#10502は、電力制御の機能と正確に配置するためのピンポイントピンセットを備えたハンドセットを提供する、低電力抵抗はんだ付けユニットです。(画像提供:American Beauty Tools)

このユニットは、はんだ付けする接合部に対し、2.8V ACで最大250Wを供給できます。操作は簡単です。システムからの電流は、ハンドピースにある1組のピンセットを介して接合部に印加されます。ピンセットの先端は、作成する接続部をまたいで配置します。作業者がフットペダルを踏むと、電流が先端の間を流れて接合部が加熱されます。作業者ははんだを当てて溶かし、フットペダルを離します。

この一連の作業全体にはわずか数秒しかかかりません。隣接した部品や素材を損傷したり溶かしたりしてしまうほどの加熱は、ほとんど発生しません。先端の間に印加される電圧が低い(数ボルト単位の)場合、ユーザーへの衝撃や近接部品への損傷といった危険はありません。

ハンドピースとそのピンセットは、このシステムの柔軟性、性能、利便性の鍵を握る部分です。なぜなら、鉛筆型はんだごての先端をはんだ付けする接合部に接触させる際に、十分な熱接触面積を確保し、はんだを溶かすのに必要な熱伝達を接合部に提供する必要があるからです。スペースが狭い場合や小型部品を接合する場合は、これが困難になります。対照的に、抵抗はんだ付けシステムのピンセットは、電流の流れを方向付けます。そのため、より正確に位置決めでき、狭い状況で効率的です。

各ベンダーは、さまざまなはんだ付け状況やスペースに対応するため、これらのピンセットを複数サイズで提供しています。ピンセットの先端は、非常に狭いスポットや角へのアクセスを容易にするために調整可能です。たとえば、American Beauty Toolsのモデル105133ハンドピースは、長さ6インチ/15.24cmで、直径0.04インチ/0.10cmのニッケルクロム(「ニクロム」)テーパーピン電極を備えています。電極間には0.375インチ/0.95cmの開きがあり、簡単に曲げたり狭くしたりできます。これにより、ユーザーは特定の用途に合わせてハンドピースをカスタマイズすることができるのです(図5)。

図5:モデル#105133ハンドピースは、0.375インチ/0.95cmの間隔でニクロム電極を備えており、狭いスポットにアクセスしやすいように調整できます。(画像提供:American Beauty Tools)

まとめ

抵抗はんだ付けは、従来の鉛筆型はんだ付けアプローチの単なる代替手段以上のものであり、明確な利点を提供します。それは、非常に局所的なスポットに熱を集中させ、狭いスポットへのアクセスを容易にし、はんだ付けの時間を短縮することです。また、熱による損傷の可能性を最小化し、軽量なハンドピースで作業者の疲労を軽減し、実際にはんだ付けをしない限り「オン」にならないことでエネルギー消費を削減します。その電極は消耗せず、継続的な再湿潤やクリーニングも必要としません。

抵抗はんだ付けをまだ使用したことがない方は、ぜひ試してみてください。きっと気に入ると思います。

関連コンテンツ

推奨されるはんだ付け技術

https://www.digikey.jp/ja/articles/recommended-soldering-techniques

American Beauty Toolsの動画参照先

  1. 抵抗はんだ付け装置を使用してスルーホール部品をPCBにはんだ付け。
  2. マルチタップスイッチアセンブリのはんだ端子に複数のワイヤを抵抗はんだ付け。
  3. マルチピンオーディオジャックとケーブルアセンブリの抵抗はんだ付け。
  4. 抵抗はんだ付けを用いて端子をマイクロスイッチへ配線。
  5. 電極の交換:105133マイクロピンセットハンドピース

著者について

Image of Bill Schweber

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

More posts by Bill Schweber氏
 TechForum

Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.

Visit TechForum