低消費電力アプリケーションのための環境エネルギーの利用
環境発電アプリケーションにとって、今は活況の時代です。米国政府によるクリーンエネルギーへの投資や、民間企業による4000億ドルの「クリーンエネルギー製造、電気自動車およびバッテリ、クリーン発電」への投資に注目が集まっていますi。しかし、IoT、ウェアラブル、インプラントなどのバイオメディカルデバイス向けの低電力環境発電アプリケーションの市場が急成長していることはあまり知られていませんii。
高効率で信頼性が高く、小型なエネルギー貯蔵アプリケーションに対する需要は、低電力デバイス用の充電式バッテリに取って代わる、あるいは補完する環境エネルギー利用の潜在的可能性を浮き彫りにしています。このような環境発電アプリケーションは、バッテリ交換の必要がなく、無期限に稼働できる可能性を秘めており、環境への負荷を劇的に減らすことができます。
集められた太陽エネルギーは、ウェアラブルデバイス、通信デバイス、遠隔地や手の届きにくい場所にあるセンサ、小売、産業、住宅環境におけるさまざまなスマートデバイスに電力を供給することができます。設計者は、その他に温度変化、モーション、振動、電波、音響などの他の環境エネルギー源も利用することができます。
設計上の課題の克服
モバイル、リモート、無人デバイスを設計する上で、サイズと電力管理は重要な課題です。多くの場合、ワイヤレスコネクティビティも同様に難しい課題です。しかし、必要な電子部品の集積化と小型化が進み続けているため、開発者はデバイスのフットプリントを縮小し、コストを最適化することができます。
適切なエネルギー源を特定し、消費電力を最適化することは、優れたアプリケーションを開発する上で重要な要素です。フォームファクタと外観は、使用環境や用途によって大きく異なります。
民生用機器は、市場で成功するためには、外観が魅力的で、とても使いやすいことが重要です。産業用およびリモート機器は、外観や消費者に優しい操作性の影響は少ないですが、より高い機能性と相互運用性を実現する必要があります。
低消費電力設計の実現は、主にエネルギー消費を最小限に抑える適切なコンポーネントとソフトウェアを見つけることにかかっています。また、エネルギー源から最大限に電力を取り出すことにも左右されるかもしれません。理想的には、アプリケーションが消費する以上のエネルギーを生成し、完全なエネルギー自律性を達成することができます。
高性能環境発電用PMIC
Nexperiaは、環境エネルギーを継続的に利用するように設計された電源管理集積回路(PMIC)を提供しています。NEH2000BY(図1)は、エネルギー効率を犠牲にすることなくデバイスの高性能化を実現することで、一般的な環境発電のトレードオフに対応しています。
図1:NexperiaのNEH2000BY PMICは、低電力デバイス用に環境エネルギーを収集するために最適化されています。(画像提供:Nexperia)
NexperiaのPMICは、最大電力点追従(MPPT)に適応型アルゴリズムを使用して、環境エネルギー源からのエネルギー伝送を最適化し、高い変換効率を確保します。事前プログラミングなしで自律的に動作するNEH2000BYのMPPTアルゴリズムは、最大80%の最適な平均変換効率を達成し、0.5秒以内に適応します。
MPPTは、ソーラーパネルや風力タービンの最適化に取り組んでいる、あるいはその最適化を模索している開発者にはおなじみですが、熱、振動、電波信号などの他の環境エネルギー源を収集するアプリケーションにも使用できます。MPPTは電圧と電流を継続的に監視し、最適な電力を特定し、負荷を調整して出力をアプリケーションの要件に一致させます。
NEH2000BYは、「山登り」アルゴリズムを利用することで、エネルギーの変動に関係なく、変環境変化に適応し、最大限の効率性を確保します。PMICは太陽光発電アプリケーション向けに最適化されていますが、2.5Vから4.5Vの範囲の蓄電素子電圧を利用するさまざまな環境発電デバイスで動作可能で、さまざまなタイプの充電式バッテリやバッテリレス設計と互換性があります。
Nexperia PMICにより、設計者は統合された高効率、低消費電力のDC/DCを利用したアプリケーションを作製することができ、コンバータやかさばる外部インダクタを追加する必要がなくなります。また、外付けコンデンサが1つで済むため、プリント回路基板(PCB)のレイアウトが簡素化され、アプリケーションの部品表が削減されます。
Nexperiaによれば、このPMICは3mm x 3mmのプラスチック製熱強化超薄型クワッドフラットパッケージ(HWQFN)で提供され、総組み立て面積はわずか12mmです。これにより、既存のソリューションよりも最大20倍小型の環境発電設計が可能になります。
リファレンス設計プラットフォーム
製品設計者は、NexperiaとAmbiqのコラボレーションを反映したリファレンス設計プラットフォームを使用して、環境発電アプリケーションの試作品を作製し、テストすることができます。
AmbiqのharvestKIT AMA3BHARV1(図2)は、NexperiaのNEH2000BY PMICをベースにしたClickモジュールと、AmbiqのApollo3 Blue SoC、およびTDK InvenSenseとBosch Sensortecの低消費電力1.8VカスタムClickセンサモジュールを組み合わせたものです。
図2:AmbiqのharvestKit AMA3BHARV1は、Nexperiaの環境発電PMICを搭載したClickモジュールと、モーションセンサおよび環境センサモジュールを備えています。(画像提供:Ambiq)
harvestKITはNexperiaの環境発電をMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)モーションセンサと環境センサで実現します。Apollo3 Blue SoCは、Bluetooth Low Energy (BLE) 5を統合しています。追加の拡張ソケットは、他のセンサや、Wi-Fiやディスプレイなどの接続モジュールをサポートすることができます。
このコンポーネントは、低消費電力環境発電と温度、湿度、モーション、圧力モニタリングなどの入力を組み合わせたアプリケーションを動作させることができます。
開発者はこのリファレンス設計を利用して、環境発電によってバッテリ寿命を延ばしたり、スーパーキャパシタやその他のエネルギー貯蔵コンポーネントを組み込むことによってバッテリの使用をなくしたりできる、さまざまな試作品を開発することができます。
Apollo3 Blue SoCは、Ambiqが特許を取得したサブスレッショルド電力最適化技術(SPOTÒ)を活用し、採取エネルギーを管理し、低消費電力アプリケーションを効率的に処理します。リファレンスプラットフォームのファームウェアは、携帯電話、タブレット、PCのChromiumウェブブラウザ上で動作するウェブアプリに生のセンサデータを送信します。
まとめ
NexperiaのPMICは、次世代のエネルギー効率に優れたアプリケーションに魅力的な設計オプションを提供します。太陽エネルギーを利用し、高度なセンサモジュールを統合することで、開発者はバッテリ寿命を大幅に延ばし、さらにバッテリが不要になる可能性のある革新的なソリューションを生み出すことができます。AmbiqのharvestKIT AMA3BHARV1リファレンス設計におけるNexperiaの協力により、最先端の低消費電力管理および処理アプリケーションの試作およびテストプラットフォームが提供され、持続可能で効率的な電子機器に対する需要の高まりに対応します。
[i] https://www.whitehouse.gov/briefing-room/blog/2024/07/01/building-a-thriving-clean-energy-economy-in-2023-and-beyond-a-six-month-update/
[ii]https://link.springer.com/article/10.1007/s13246-024-01382-4

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