PXIオシロスコープバンドルを使用したコンパクトな自動テストシステムの迅速な立ち上げと実行
マルチチャンネル自動テストシステムの設計にスタンドアロン計測器を使用すると、ディスプレイ、フロントパネル、電源、電源コードなどの基本的な機能が重複するため、とても非効率的です。また、ラックアンドスタック型計測器での通信も非生産的です。ラックアンドスタック型計測器のほとんどは、EthernetベースのLXI(LAN eXtensions for Instrumentation)を使用している可能性が高いため、Thunderbolt 3のような高速シリアルインターフェースよりも遅く、プログラミングのオーバーヘッドが大きくなります。
より良いアプローチは、必要な機能をコンパクトなフォームファクタで提供するモジュール式計測器を使用することです。このモジュール一式は、オシロスコープ、マルチメータ、信号発生器などの複数の計測器が同じシャーシに並んで収まるよう構成されています。これらの計測器は、すべての計測器の同期動作を保証する共通のバス構造によって内部通信を行います。また、統合ソフトウェアを実行するPCによって制御されるため、すべての計測器を共通の画面から制御できます。
長年にわたって自動テストおよび測定システムを開発、商品化してきたNIの装置を用いて、モジュール式計測器がどのように機能するかを見てみましょう。NIは、PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)を使用した一連のオシロスコープバンドルを提供することで、テストシステムの設計を簡素化しています。PXIはパラレルインターフェースを備えたPCIベースのプラットフォームで、複数の計測器と多くのチャンネル数を持つテストシステムの構築に最適です。
PXIバンドル
PXIは、基盤となるPCIコンピュータバス上にクロック、同期、トリガバスを追加し、さらにソフトウェアによる構成を可能にすることで、柔軟性の高いテストシステムを構築します。PXIシャーシはすべてのモジュールに電力を供給し、内部モジュール間の通信とともに、モジュールとPC間の高速通信リンクを提供します。
NIのバンドルには、5つのモジュール式計測器スロットを備えたPXIシャーシ、一連のオシロスコープモジュール、必要なケーブルやプローブ、制御用のInstrumentStudioソフトウェアが含まれています(図1)。
図1:NI PXIオシロスコープバンドルには、PXIシャーシ、PXIオシロスコープモジュール、InstrumentStudioマルチ測定ソフトウェア、ケーブルが含まれます。(画像提供:NI)
NIのPXIオシロスコープバンドルは、6種類のオシロスコープモジュール(2、4、8チャンネルを利用可能)から選択でき、帯域幅は60メガヘルツ(MHz)~1.5ギガヘルツ(GHz)、サンプリングレートは60~5000メガサンプル/秒(MS/s)です(表1)。シャーシ欄のPXIeとは、より高速なPCIeシリアルインターフェースをサポートする規格です。
| バンドルモデル | シャーシ | モジュール | チャンネル | 帯域幅(MHz) | 分解能(ビット) | サンプリングレート(MS/s) | メモリ(MB) |
| 867010-01 | PXIe-1083 | PXIe-5105 | 8 | 60 | 12 | 60 | 128 |
| 867011-01 | PXIe-1083 | PXIe-5110 | 2 | 100 | 8 | 1000 | 512 |
| 867012-01 | PXIe-1083 | PXIe-5111 | 2 | 350 | 8 | 3000 | 512 |
| 867013-01 | PXIe-1083 | PXIe-5113 | 2 | 500 | 8 | 3000 | 512 |
| 867014-01 | PXIe-1083 | PXIe-5172 | 8 | 100 | 14 | 250 | 1500 |
| 867015-01 | PXIe-1083 | PXIe-5162 | 4 | 1500 | 10 | 5000 | 2000 |
表1:NI PXIオシロスコープバンドルのモジュール式オシロスコープの仕様の概要。すべてのバンドル製品は同じPXIeシャーシを使用します。(表提供:Art Pini氏、NIのデータに基づく)
たとえば、867011-01は、帯域幅100MHz、サンプリングレート1000MS/sのPXIe-5110デュアルチャンネルオシロスコープモジュールを使用しています(図2)。
図2:PXIe-5100は、867011-01 PXIオシロスコープバンドルに2本のオシロスコーププローブとともに含まれている、デュアルチャンネルオシロスコープPXIeモジュールです。(画像提供:NI)
PXIオシロスコープはシャーシのモジュールスロットを1つ占有し、シャーシには他の計測器用に4つのスロットが残ります。たとえば、16チャンネルを得るには、2つのPXIe-5105またはPXIe-5172モジュールを使用できます。また、マルチメータ、波形発生器、カウンタ、電源などの多数の機器オプションから、他のPXI計測器やサポートオプションを含めることもできます。
PXIバンドルの効果的な使用
デジタルオシロスコープに関しては、いくつかの経験則があります。たとえば、エイリアシングを防ぐには、サンプリングレートは帯域幅の2倍より大きい必要があります。表1を見ると、PXIe-5105のアナログ帯域幅は60MHz、最大サンプリングレートは60MS/sです。PXIe-5105は、シャープなロールオフ特性を持つ24MHzのアンチエイリアシングフィルタを内蔵しており、帯域幅を最大サンプリングレート60MS/sの半分未満に制限することで、エイリアシングの問題を回避しています。
メモリ長は、最大サンプリングレートで達成可能な最長アクイジションを制御します。アクイジションが長くなると、サンプリングレートを下げる必要があります。メモリ長が最も重要になるのは、ミリ秒単位の持続時間を必要とするような車両の超音波測距アプリケーションなど、長い波形のイベントを扱う場合です。こうしたアプリケーションの場合、最大サンプリングレート60MS/sで動作する867010-01 PXIオシロスコープは、128MBのメモリに2.1秒のデータを取り込むことができます。
オシロスコープの分解能により、計測器の理論上のダイナミックレンジが決定します。8ビットオシロスコープは、理想的にはフルスケール振幅(FSA)とFSA/256(つまり2の累乗ビット)間の信号をデジタル化できます。したがって、ビット数が大きくなるほど電圧分解能は細かくなります。これは、大きな振幅の信号が存在する中で、オシロスコープによって非常に小さな信号振幅を測定するようなアプリケーションで重要になります。その一例が超音波測距アプリケーションです。送信パルスはFSAに近いですが、反射エコーは1000分の1より小さくなる可能性があり、60デシベル(dB)のダイナミックレンジが必要です。大まかな経験則からすると、分解能の各ビットは6dBのダイナミックレンジを提供するので、1000:1のダイナミックレンジには10ビットを超える分解能が必要になります。
実際のあらゆる計測器がそうであるように、達成可能な電圧分解能は一般的に、ノイズや歪みによって理想よりも低くなります。オシロスコープの真の分解能を測定するために、有効ビット数(ENOB)とスプリアスフリーダイナミックレンジ(SFDR)という性能指数を使用します(図3)。
図3:ENOBとSFDRは、オシロスコープの分解能を示す指標で、高調波などのノイズや歪み成分を考慮しています。(画像提供:NI)
SFDRはdB単位で示され、取得した波形の周波数スペクトルにおけるフルスケール値と、最も高いスペクトルのピーク値との差を分解能として測定します。ENOBは、フルスケールと二乗平均平方根(RMS)ノイズ量子化レベル間のダイナミックレンジを持つ理想的なデジタイザの分解能をビット単位で決定します。ENOBは常にオシロスコープの理論上の分解能よりも小さくなります。また、周波数と振幅に依存するため、入力信号の周波数によって変化します。
ソフトウェア
複数の計測器を同時にインタラクティブに制御するには、PXIオシロスコープバンドルとともにNIのInstrumentStudioを使用します(図4)。各計測器には、ユーザーが割り当てる制御ウィンドウがあり、テストシステム動作の監視とデバッグが行えます。
図4:InstrumentStudioのユーザーインターフェースは、複数のPXI計測器のインタラクティブな制御をサポートします。各計測器にはユーザーが割り当てる制御ウィンドウがあり、テストシステム動作の監視とデバッグが可能です。(画像提供:Art Pini氏)
InstrumentStudioは、電源、信号源、マルチメータ、その他PXI計測器など、自動テストコンポーネントのリアルタイム監視とデバッグを可能にします。また、LabViewのような、より高度なNIテストソフトウェアに計測器の構成を直接エクスポートするためにも使用できます。
InstrumentStudioは、PXIオシロスコープ用の測定および解析機能を備えています。ピークツーピーク振幅、周波数、デューティサイクル、時間と振幅のカーソルなど、一般的に使用される35の測定パラメータが用意されています。高速フーリエ変換(FFT)機能と平均化による周波数領域解析を利用でき、スペクトラムアナライザのように表示されます。FFT表示には、ユーザーが配置したマーカを最大12個含めることができ、表示された周波数スペクトルにおける特定のピークの振幅と周波数を読み取ることが可能です。
データリンク
PXIシャーシは、Thunderbolt 3リンクを介してPCから制御されます。Thunderbolt 3は最大40ギガビット/秒(Gbits/s)の速度で各方向への同時伝送を実現します。PXIシャーシのコントローラスロットのフロントパネルには、2つのThunderbolt 3コネクタが備わっています。この2つのThunderbolt 3コネクタにより、外部モニタなど、複数のThunderbolt 3対応デバイスとのデイジーチェーン接続が可能です。
テストシステム
前述した個々の部品をすべて組み合わせると、非常にコンパクトなテストシステムになります。PXIシャーシと3つのモジュール(オシロスコープ、デジタルマルチメータ(DMM)、電源)を合わせても、ラックアンドスタック型のオシロスコープ1台よりも小さく収まります(図5)。
図5:シャーシ、オシロスコープ、電源、DMM、InstrumentStudioソフトウェアを使用した典型的なPXIオシロスコープバンドルベースのシステムと、同タイプのラックアンドスタック型計測器を並べた様子。(画像提供:NI)
図5のテスト対象デバイス(DUT)は、パルス幅変調(PWM)信号を生成するように設定されたArduinoボードです。電源は5ボルトを生成して電力を供給し、DMMはデバイス上の制御された3.3ボルトを読み取り、オシロスコープはPWM波形を表示します。DUTとの相互接続は、従来のオシロスコーププローブ(BNC入力コネクタ付きのPXIオシロスコープに付属)と従来のテストリード線を使用して行われます。図の右にある同タイプのラックアンドスタック型計測器は、かなり大型になります。
まとめ
NI PXIオシロスコープバンドルは、コンパクトな自動テストシステムの強固な基盤を提供します。また、最大5つのモジュール式計測器によるマルチチャンネル構成をサポートしています。InstrumentStudioソフトウェアは、パラメータ、カーソル、マーカを含む測定ツール一式を使用して、時間領域と周波数領域の両方でDUTのインタラクティブな測定を可能にします。
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