プロとメイカーの区別なくSTEAM教育と試作を簡素化するフル装備の開発キット

シングルボードコンピュータ(SBC)用の開発キットは、教育者、メイカー、プロの設計者向けに、SBCの機能を高めるためのハードウェアとソフトウェアの追加オプション(アドオン)を提供します。開発キットはプロジェクト固有であることが多く、ロボティクス、ホームオートメーション、センサモニタリングといった特定のアプリケーションを開発することを目的としたアドオンを備えています。このような開発キットは、使いやすさ、可用性、コストの低さから人気が高まっています。

開発キットにより、ユーザーはアフターマーケットのアドオンを購入する必要性が最小限またはゼロになるので、ハードウェアとソフトウェアを既存または新規のプロジェクトに素早く組み込むことができます。アドオンは、マイクロコントローラ、センサ、リレー、モータ、LED、スピーカ、ボタン/スイッチ、ブレッドボード、配線などの機能を向上させるものです。キットのプロバイダは、特定のプロジェクトに合わせて、ロボティクス向けのサーボモータ、カメラ、ナビゲーション装置、またはリモート環境モニタリングのための温度、湿度、降雨センサなどのアドオンをキットにバンドルすることがよくあります。ハードウェアの構成はキットの数だけあり、プロジェクトを迅速かつ効率的に立ち上げるために必要な部品がそれぞれに含まれます。

また、これらのキットに、SBCやそのオンボードシステムオンチップ(SoC)またはマイクロコントローラで使用するために設計されたソフトウェアを含めることで、プログラミング経験がほとんどなくても簡単に設計をプログラミング可能にすることもできます。これらのソフトウェアは多くの場合、統合開発環境(IDE)やソフトウェア開発キット(SDK)および、ブロックやアイコンの形でアクションや機能をドロップすることでプログラミングするドラッグアンドドロップ(またはビジュアルベース)のプログラミングインターフェースの形態で提供されます。一部のベンダーは、プログラミングをさらに容易にするためのガイド、ビデオ、ステップバイステップの説明書といった形で、学習教材も同梱しています。

その点を考慮に入れて、ArduinoSeeed StudioTaoglasが提供する人気の開発キットを1つずつ見ていき、それらが教育、モノのインターネット(IoT)アプリケーションの設計、リモートワイヤレスセンシングアプリケーションにどのように役立つかを考察します。

包括的なSTEAM教育キット

ArduinoのAKX00002 CTC 101プログラムキットには、科学・技術・工学・芸術・数学(STEAM)教育用に設計され、25以上のプロジェクトや実験を含むツールボックスと、教材へのオンラインアクセスが含まれます(図1)。このキットには、Bluetooth、慣性計測ユニット(IMU)、14本のデジタル入出力(I/O)ピンおよび、シリアル通信とスケッチアップロード用のUSBコネクタなどを備えた6個のArduino 101開発ボードなど、最大700点の部品が搭載されています。

図1:AKX00002 Arduino CTC 101プログラムキットは、STEAM教育向けに設計されており、25以上のプロジェクトに対応できるハードウェアを搭載しています。(画像提供:Arduino)

さらに、Arduino Shieldも6個搭載しています。これらは、センサやモータなどのプロジェクト強化技術を含む拡張機能を提供するアドオンボードです。また、10個以上のブレッドボード、電子部品(センサ、LED、コンデンサ、ダイオード、ボタン)、プラグアンドプレイモジュール、バッテリ、ケーブル、ウェブカメラ、SDカード、スピーカなども搭載しています。

Raspberry PiモジュールとGroveモジュールを使用したIoT

Seeed StudioとMicrosoftは、Raspberry Piモジュール(別売)とSeeedのGroveアドオンモジュールを使用したIoTプロジェクトを迅速に開発するために、Microsoft IoT Groveキットを共同開発しました。このモジュールはArduinoのShieldボードに似ていますが、斬新なプラグアンドプレイ接続システムにより、特にPiで簡単に使用することができます。このキットは、Raspberry Pi B/B+/A+/2ボードと完全に互換性があるGrovePi+ケープを搭載し、Windows 10 IoT Coreオペレーティングシステムを実行してアプリケーション開発を容易にします。また、5インチのタッチスクリーンディスプレイ、リレーモジュール、温度/湿度センサ、超音波距離センサも搭載しています。

図2:Microsoft IoT Groveキットは、Raspberry Piモジュール(別売)とGroveアドオンモジュールを使用したIoTプロジェクト向けに設計されており、迅速な接続と試作を可能にします。(画像提供:Seeed Studio)

追加のハードウェアには、LEDバー、回転角度センサ、ブザー、音センサ、光センサ、ボタン、LCD RGBバックライト、Micro USBケーブル、Groveケーブル(10本)が含まれます。Microsoftでは、Groveのプラットフォームやモジュール機能に慣れ、プロジェクトの開発が容易にするための詳細なチュートリアルも提供しています。

ワイヤレスセンシングとクラウド管理

ワイヤレスセンシング、データ収集、クラウドベースの管理を必要とするIoTプロジェクトの場合は、TaoglasのELC.10B EDGE IoTスターターキットに適切な機能が搭載されています。このキットは、使いやすいパッケージに、セルラー、Bluetooth、オンボードセンサおよび、2つの衛星測位オプション(マルチバンドの全地球航法衛星システム(GNSS)とリアルタイムキネマティック(RTK))を網羅したクラウドベースの管理プラットフォームを収納した、ワイヤレス通信パッケージです。また、ユーザーの要件に基づくアクティブセルラープランがあらかじめ設定されているため、容易に展開することができます。プロジェクトはクラウドベースの管理プラットフォームでアクセスするため、どこからでもアクセス可能です。

図3:ELC.10B EDGE IoTスターターキットは、クラウドベースの管理により、IoTプロジェクトへのワイヤレス接続を可能にします。(画像提供:Taoglas)

ELC-10Bは、ネットワーク、センサ、セキュリティ、データ管理機能を備えたTaoglasのクラウドベースリアルタイム分析ソフトウェアプラットフォームEdge Insightsを搭載しています。

RTK機能付きのGNSSは、数分で高精度な位置決めデータを収集し、完全なIoTセキュリティスタック、電力およびデバイス管理、サービスとしてのデータ(DaaS)を特長としています。このプラットフォームは、温度/湿度センサ、加速度計、ジャイロスコープ、地磁気センサ、光センサ、空気センサなど、豊富なセンサを搭載しています。また、LTE、3G、2G、Cat-M、NB-IoTのセルラーに対応するので、グローバルな運用も可能です。

まとめ

以上に挙げた開発キットは、教育者、メイカー、設計者がSBCを素早く習得して応用できるようにするために現在提供されている開発キットの、ほんの数例に過ぎません。プロジェクトによってキットは大きく異なる可能性がありますので、注意する必要があります。とはいえ、どれが最善かという選択は、学生の学習や設計者のニーズに最も役立つ要件と機能セットがどれなのかということによって決まります。

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