手作業のはんだ付けをより良く簡単にする、4つの重要で手頃な価格の工具

エレクトロニクスの世界で、はんだはほぼあらゆるものをくっつける伝導性の「糊」ですが、はんだ付けはエレクトロニクスに先立つこと数千年の歴史をもっていることをご存知でしょうか。5000年も前にメソポタミアで働いていた職人たちがはんだを使っていた形跡があります。

宝飾品、工具、武器を製造するためのはんだ付けとろう付けの形跡は、金属加工の歴史のごく初期の段階で出現しており、おそらく紀元前4000年に遡るものです。今日、宝飾品、工具、武器の製造やステンドグラス窓の組み立てだけでなく、私たちははんだを使用して銅の水道管をつないでいます。

エレクトロニクスの世界では、はんだ付けの最も重要な役割は、ワイヤ、コネクタ、基板、電子部品などの間に、伝導性のある物理的なつながりを形成することです。ウェーブはんだ付けやリフローはんだ付けが厳密な時間と温度のプロファイルに基づいた技法となってはいるものの、手作業でのはんだ付けは、スキル、理解、器用さ、適切な工具を必要とする技術であり続けています。

はんだ付けを行う誰にとっても必須の最初の工具は、優れたはんだごてです。はんだごてに関していえば、「優れた」の定義は時代とともに進化してきました。私の最初のはんだごては安物でした。今だったら「木焼き」とでも呼ばれるような、木を焼く工芸のセットに付いてくる加熱ツールのようなものでした。木焼きには温度のコントロールがないので電子機器の作業には適しているとはいえず、まして今日のはんだにも適していません。

図1:American Hakko FX888Dのような優れたはんだ付けステーションでは、作業に必要なはんだ付けの温度を手元で設定できます。(画像提供:American Hakko)

私の最初のちゃんとしたはんだごては、WellerのWTCPはんだ付けステーションで、学生時代に買ったものです。温度管理は磁気キュリー点の技術を使用したはんだごて先によって設定され、はんだ付けの温度を600°F、700°F、800°Fから選ぶことができました。動作温度を変更する必要がある場合は、こての電源を切り、冷ましてから、こて先を交換しました。これは決して便利とはいえず、そのため私ははんだ付けの温度を変更したことはありませんでした。

特にはんだ付けについては、品質のよい工具を買うことにしている証として、私はこのWellerのはんだ付けステーションを、半世紀たった今でもまだ使用しています。私にとってはずっと働き者でいてくれたわけで、まだ私の作業台にありますが、このモデルはもう何十年も販売されていません。ただし、このこてのこて先は今でも入手できます。これは、このはんだ付け工具がきわめて多くの人にとって働き者であったことを示唆しています。

ただ、この数十年間で、エレクトロニクスはたいへんな進化を遂げ、50年前には広く普及していた錫60/鉛40のはんだは、多くの新しいタイプのはんだ(特に、環境に配慮した鉛不使用のはんだ)にとって代わられました。これらは、最適な結果のためにはさまざまなはんだ温度を必要とするものです。さらに、電子部品、コネクタ、ワイヤ、PC基板のトレースがみな小さくなり、そのため、直面するさまざまなはんだ付けの要件に対応するにはたくさんの種類のはんだごて先が必要です。こうした理由で、やがて私はより現代的な、温度が電子的に変えられ、こて先の選択肢が豊富なはんだ付けステーションを購入しました。現在、私は旧型の、American Hakko FX888Dはんだ付けステーションの非デジタルバージョンを保有しています(図1)。

現代の電子システム設計の組み立てとプロトタイプ作成に必要なさまざまな種類のはんだ付けをすべて扱うには、優れたはんだ付けステーションが必要です。また、不良施工の例(図2)に示すような、品質の良くないさまざまなはんだ付け接着を避けるためにも、優れたはんだ付けステーションは必要です。

図2:品質の良くないはんだ付け接着の不良施工の例は、優れたはんだ付けの技術と優れたはんだ付け工具の必要性を示しています。(画像提供:Adafruit)

Adafruitの優れたはんだ付けガイド」から引用したこの図は、はんだ付けの技術を身につけていない場合、また、適切なはんだ付け工具を使用していない場合に起こる多くの問題を示しています。たとえば、はんだごてが十分高温になっていない場合、または、はんだ付けした接点を冷却の途中で動かしてしまった場合、コールドジョイントが発生します。

優れた、温度管理のできる、こて先の選択肢の揃ったはんだ付けステーションに加えて、ラジオペンチ、ワイヤカッタ、ワイヤストリッパが必要です。また、より良いはんだ付けへの道を開く、驚くほど手頃な価格の工具が数多くあることがわかりました。お勧めできるものを4つ挙げます。

手頃な価格の4つのはんだ付け補助器具

これらのはんだ付け工具で最も重要なものの1つがフラックスペンです。もちろん、ほとんどのはんだにはフラックスが含まれており、部品のピンやワイヤがずっと大きかった頃に遡れば、はんだの直径はずっと大きく、ほとんどの場合、はんだに含まれるフラックスの量は適切でした。しかし、もはやそうではありません。図2をもう一度見てください。ウェッティングの問題は、こてとはんだが当てられたときに、はんだ付けの接点に十分なフラックスがなかったことを示唆しています。

図3:Kesterの無洗浄モデル951 Flux-Penには、必要な所にフラックスを付けるフェルトの先端が付いています。(画像提供:Kester)

かつては、追加のフラックスが必要な場合、フラックスの小さな缶からペーストのフラックスを、ごわごわした小さなフラックスブラシを使って加えていました。このブラシは、工具店では配管のセクションのほうがおなじみでした。あまり正確ではなく、周りを汚しがちでした。今日の小さくなった電子部品には、フラックスを付けるためのよりよい方法が必要であり、その方法の1つがこのフラックスペンです。私は Kesterの無洗浄モデル951 Flux-Pen®を使用しており、とてもお勧めできます(図3)。

次に、余分なはんだを取り除く方法が必要であり、お勧めできる2つの手頃な価格の工具があります。最初のものははんだ吸い取り線です。これは、液体状態の余分なはんだを吸い上げるために使用する、被覆されていない銅または錫メッキの平たい編み線です。これには文字どおり数百の選択肢があり、大きいものや小さいものなど、より正確なクリーンアップのためにはさまざまなサイズのはんだ吸い取り線が必要となります。そこで、ある特定の吸い取り線、またはある特定のはんだ吸い取り線のブランドをお勧めするのではなく、はんだ吸い取り線のDigi-Key概要ページをご覧いただくことをお勧めしたいと思います。吸い取り線は狭いものから順次幅広いものへと揃えていってください。

極端に大きなクリーンアップ用には、はんだ吸い取りポンプ(はんだ吸い取り器とも呼ばれます)が必要です。はんだ吸い取りポンプは、はんだ付けされたスルーホール部品を基板から取り外す必要がある場合に、特に有用です。こてが組み込まれた電動のはんだ吸い取りポンプもありますが、はんだ作業をそれほど頻繁に行わない場合には、手ごろな価格のAven Tools 17537のような手動のはんだ吸い取りポンプが、作業台に1つ持っておくにはとても便利です。私は、Aven 17537のような、片手で扱える小さいはんだ吸い取りポンプのほうが好みだということが、だんだんわかってきました(図4)。

図4:Aven Toolsの17537はんだ吸い取りポンプは、大きなはんだのクリーンアップに最適です。(画像提供:Aven Tools)

最後に、はんだ付けには器用さという要素があります。YouTubeのビデオで、2本の電線、または基板と電線と、はんだごてと、長いはんだを2本の手だけで保持する人を見たことがあります。しかも彼らは、2本の指だけでうまくはんだの接点にぴったり適量のはんだを供給しています。私はそこまで器用ではないので、3本目の手と呼ばれる手頃な価格の工具を使うことで保持をまかせています。私はAven Toolsのモデル26000 Helping Hands Magnifier with Clampsを、さまざまな細かいあれこれをはんだ付けするときの保持に使っています(図5)。

図5:Aven Toolsのモデル26000 Helping Hands Magnifier with Clampsは、はんだ付け中に本当に手を貸してくれます。(画像提供:Aven Tools)

AvenのHelping Hands工具は作業台の場所をほとんど取らず、自在に調整可能で、拡大鏡は私の歳をとった目には便利です。さらに、保持用のワニ型クリップはヒートシンクの役割も果たし、はんだの熱がワイヤを伝わっていくのを防ぎます。私は、はんだ付けの接合部を加熱するときに時間をかけすぎて、プラスチックの絶縁スリーブを溶かしてしまったことも、指に火傷を負ったこともあります。Helping Handsのクランプは、こうした問題を防ぎます。

優れたはんだ付けステーションと、これらの4つの手頃な価格の工具で、私の経験上、はんだ付けはずっと簡単な作業になります。以上が私のお勧めです。いかがでしょう。以下にコメントをご自由に残してください。

著者について

Image of Steve Leibson Steve Leibson氏は、HPとCadnetixでシステムエンジニアを務め、EDNとMicroprocessor Reportで編集長として活躍し、XilinxとCadenceなどの企業では技術ブロガーを担当しました。また、同氏は、「The Next Wave with Leonard Nimoy」の2つのエピソードで技術専門家を務めました。同氏は、33年間にわたって、高速でかつ信頼性の高い優れたシステムを設計技術者が開発することを支援しています。
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